#20 森咲杜鷹と雪護喜冬 前篇
第5章 森咲杜鷹と雪護喜冬と第2の妄想犯行
【202X 12月27日 PM15:00】
【まほらぎ市民病院】
【残帰還期限??時間】
う……うん……ここは……
僕は今、どこにいるんだ……?
僕――森咲杜鷹は、ほこ……やぎ町で……金餅邸の事件を解決したあと……萬屋記録局?で赤葉さんから『昨日から寝てないでしょ……』と言われて……僕の部屋で、寝落ちする感じで……現実世界にログアウトした?
次回の帰還……期限の【202X 12月27日 PM20:00】の表示を見て、ゴーグルを外した……PM20:00!?
ゴーグルを外した瞬間、喜冬さんに声をかけられて…………今、何時だ?
僕は今、一体どこにいるんだ?……家か?
こんな所で寝ている場合じゃない!
家に帰らなれければ!
喜冬さん!
――起きなければ!森咲杜鷹!
「はっ!――ここは何処なんだ?」
「……病院?」
液体が入った透明な袋と僕の腕を管で繋がれている状況から――
今、僕がいる場所は――病院であることはすぐに判断できた。
「あ――!森咲君、目が覚めたんだ!」
「え……と――誰?」
「覚えてないかな?……灯凛――」
「同級生だった天城灯凛」
「天城……灯凛……あー!灯凛ちゃん?」
「そうそう!思い出した?探偵君!」
「いやいや、久しぶりに会っていきなり、探偵君は……やめてくれよ」
「えー?昔から『僕は将来、探偵になる!』て、皆んなに言ってた人が、何を今さら――」
天城灯凛ちゃんは、僕の学生時代のクラスメイト。
何か書いてる系の女子クラスメイトの印象だったのだが、天城さんがなぜ病院にいるんだろう?
「灯凛ちゃんは今、何してるの?」
「見て分からない?――看護師」
「もちろん知ってたさ!――嘘だけどね……」
「ふふふ――とりあえず先生を呼んでくるから」
「……分かった、ありがとう、あ!その前に――」
「今、何時か教えてくれない?」
「――今?、えーと今は15時かな」
「――!?……ありがとう」
カラカラ――バタン!
久しぶりのクラスメイトにこんな形で会うなんて……こんな偶然――本当にあるんだな……ん?
……そんな呑気な事を考えている場合じゃない!
妄想犯行計画の再ログイン期限を見てから、半日以上時間が経っているじゃないか!
しかもあと5時間ぐらいで【ほこやぎ町】の時間が動き出してしまう……
『森咲君……部屋の奥にある【ソレ】、何?』
『それと【あの世界】って、どう意味?』
あの時の喜冬さんの言葉は、僕の部屋に喜冬さんが居て、僕がゴーグルをかけたその瞬間、背後にいたからこそ出た言葉だ――
鳴った気がしていたインターホンも――
喜冬さんがインターホンを押したから鳴っていた……僕はそれを気のせいだと判断してしまった……
ちょっとした油断で、KokuSouSPCとメガネ型ゴーグルを喜冬さんに見られてしまった可能性は高い……
僕と同じ推理モノ好きの喜冬さんの事だ――
自分から進んで事件に巻き込まれに行くなんて事は、恐らくしないだろう。
でも気になってしまう……喜冬さんが今、何をしているのか?
僕があの時――ちゃんとインターホンに気づいて、喜冬さんと会話していれば、【ほこやぎ町】で【臭い干物】を使った事件を解決した後に、喜冬さんとラーメンを食べに行くこともできたのに……
――喜冬さんを巻き込んでいないと良いのだが……
喜冬さんを妄想犯行計画に巻き込んだと思ってしまうと――こんなところで寝てはいられない!
だから僕は、一刻でも早く――帰らないと行けない!
「たんて……森咲さん、先生を連れてきました」
「担当医の夢森です、よろしくお願いします」
「……どうも」
「早速ですが――」
「森咲さん――あなたは昨日、重度の疲労で自宅で倒れて、病院に運ばれました――」
「同僚の雪護さんが昨日、あなたの家にいなければ、あなたは助からなかった」
「――あなたが倒れた原因によっては、私は医者として、然るべき手段を取らないといけません」
「覚えている限りで結構です――」
「あなたが倒れた原因を……教えてくれますか?」
『五感再現VR型の推理ゲームで、30時間以上ログインした結果――事件を1つ解決してました!』……なんて言えるわけないだろ!
――こんな非科学的非現実なゲーム……夢森先生にどう説明すればいいんだよ……
「あー夢森先生――森咲さんは私の同級生で、雪護さんは私の友人なんですが……」
「森咲さんは――萬屋赤葉の事件帳の大ファンらしくて……」
「倒れた日も――前日から倒れる直前まで、萬屋赤葉の事件帳を仕事をサボって見てたそうですよ!」
「しかも仕事の納めの日にですよ!――社会人としてあり得ないですよね?――夢森先生!」
「え?――森咲さん……それは感心できませんね!」
「ははは――すみません……」
「笑い事ではありませんよ!……雪護さんはあなたの事をかなり心配されていました……」
――喜冬さん、本当にごめん……
僕は、ハッピーエンドの未来を掴むため、想いを叶える存在【刻想器】だった小蒼ちゃんと想いの契約をした――
僕の絶望の未来の原因の1つが――
喜冬さんだったとしても――
同僚以上恋人未満の関係であっても――
喜冬さんを護りたい想いだけは……だから僕は、覚悟を決めたのに……
今すぐに喜冬さんに会って話がしたい。
「夢森先生!雪護さんと会って――話がしたいのですが!――ダメですか?」
「今日の面会時間もそろそろ終わりなので、難しいですね――電話なら許可できますが……」
「ありがとうございます!僕のスマホは……」
「森咲さんのスマホならそこにありますよ」
「ですが、先に森咲さんの容態を確認したいので――」
「3時間ほどお時間いただきます」
「その後なら病室内での電話は許可しますが、院内マナーだけは守ってくださいね」
「はい!分かりました」
「じゃあ、天城さん……お願いします」
「承知致しました――夢森先生」
「じゃあ、行くよ――探偵君!」
――ログイン期限が来てしまうじゃないか……どうしよう……あ、そういえば――
「灯凛ちゃん、雪護さんと友達だったの?」
「そうだけど――知らなかった?」
「えっ?知らないよ――灯凛ちゃんは――」
「僕と雪護さんの関係は知ってたの?」
「――知らないけど、キフちゃんは最近、好きな人ができた――」
「なんて言ってたような気もするけどね……」
「誰かは教えてくれなかったけどね」
「そうなのか……」
「でも昨日、探偵君が運ばれて来た時の情報に――キフちゃんの名前があったからさ――」
「世の中、狭いなーと思ったよ――はい」
「――着きました!」
天城さんに車椅子を押されて僕が着いた場所は、検査室だった……
「あとは中の担当医さん達に任せて、検査が終わるぐらいに迎えに来るから――」
「ありがとう、灯凛ちゃん」
こうして僕は、各種検査などを行い――異常無しと診断されたが、大事をとって明日の朝まで入院する事になってしまった――
【3時間後】
【まほらぎ市民病院 個室病室】
【残帰還期限??】
「はい、お疲れ様でした!探偵君」
「もう検査はコリゴリだ……」
「はいはい、じゃあまた何かあったら呼んでね」
「分かったよ――ありがとう灯凛ちゃん」
カラカラ――バタン!
今――僕は、迷っている……
僕の手にしているスマホの画面には、雪護さんの文字が表示されている……
「さてと……勇気がいるな……何から話せば良いのか」
――仕事納めの日に会社を休んでおいて、『ラーメンを食べに行こうとしてました!』とか――喜冬さんに口が裂けても言えないしな……
でも喜冬さんに電話しなければいけないのは、理解している……
彼女が【気づいていない】と良いのだが……
「よし!僕は覚悟を決めた――!」
覚悟を決めた僕はスマホの通話マークを押した!
トゥ――トゥ――トゥルル――トゥルル――
『……はい……雪護ですが……』
「………………………………」
『……森咲君?』
「……そうです、森咲杜鷹です」
『……バカ』
「うん――ごめん……喜冬さん」
『どれだけ私が心配したか……分かる?』
「うん……喜冬さんがいなければ僕は今頃……」
『そういうことじゃない!――』
「ごめん……ほんとにごめん!」
『明日……あの場所で待ってる……』
「あの場所?」
『そう……杜鷹君が一番よく知ってる……あの場所で待ってる』
「……分かったよ、喜冬さん」
『それじゃ、明日ね――杜鷹君』
「うん――喜冬さん」
ツー――ツー――ツー
「明日……あの場所……僕が一番よく知っている場所?」
「まさか!」
僕の予想は最悪な形で、的中しているのだろうか……
でも僕は今、病院から出ることができない……次回ログイン期限まであと2時間――
ログイン期限が過ぎたらほこやぎ町の時間が動き出し出し、動かない僕を見た赤葉さんたちが混乱してしまう……
僕は一体、どうすればいいんだ……
ピロリン!
うわ!
こんな時に誰からだ――ん?……小蒼ちゃん?
妄想犯行計画 再ログイン期限のお知らせのメッセージを開いた僕は、悪い予想が的中してしまったことを改めて実感させられた――
帰還期限――202X 12月28日 PM12:00……
護りたい人を――絶対に巻き込んではいけない人を……雪護喜冬さんを巻き込んでしまった――
僕自身が選択したことに対しての――最悪な結果だ!
#20 森咲杜鷹と雪護喜冬 前篇 完
#21 森咲杜鷹と雪護喜冬 後篇につづく




