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20話 妄想犯行計画からの招待状 後篇

 妄想犯行計画からの招待状  後篇


【202X X月X日 APMXX:XX】

【ほこやぎ町 境界線外 まほやぎプラネタリウム】



「ワタシの目的は、杜鷹が選択をやめる事をやめさせないこと。

簡単に言えば、ワタシは裏側からの支援、契約者とワタシは対等であり、杜鷹がハッピーエンドの未来を掴む、その時まで契約関係は続く。

それがワタシたち刻想器とヒトの契約で、ワタシには、森咲杜鷹の未来を回避する選択を決める権利はない――これが刻想器の理」


 本来、森咲杜鷹である彼が辿り着く未来は、私がさっき観たあの隔離された異様な病室で、最後を迎える未来。

絶望の未来の要因が、私とあの子であるがために、杜鷹君は心の光を閉ざし、生涯を終えてしまっていた。

 

 だから杜鷹君は、小蒼さんとハッピーエンドを掴む契約をした……でも私は今、覚悟を決めてここにいる!

 現実世界と妄想犯行計画で、杜鷹君を支える覚悟を決めてここにいる!


「私は、雪護喜冬は、森咲杜鷹君とハッピーエンドを掴んでみせる!」


私の覚悟に、小蒼さんが静かに応えた。

 

『ふっ、その言葉が聞きたかったの、ようこそ、ほこやぎ町へ』


 『ようこそ、ほこやぎ町へ』? それって、どうい……………


 【202X 1月X日 PM19:30】

 【ほこやぎ町 萬屋記録局前】



う……寒い……


 『もしもーし、お姉さん? 大丈夫ですか? こんな寒くて、雪も降ってる夜に、ぼぉーとしてたら、風邪をひきますよー!』



この声……どこかで、聞いた事がある……

え? ここは何処? 町? 目の前には、萬屋赤葉?


「ごめんなさい……大丈夫です……え?」

「どうしたの? ワタシの顔に何かついてる?」

「えーと、もしかして……萬屋赤葉(よろずやあかは)……さん?」

「そうですけど? なんでワタシの名前、知ってるの?」


 私は今、幻でも見ているのだろうか?

 萬屋 赤葉の事件帳の主人公で、18歳の眼鏡をかけた女の子だ。

 長くて綺麗な赤髪、街の記録人を自称するフリーター探偵、赤毛のフリ探が、何故か私の目の前にいる。


 ――これは幻? それとも現実?


「もしもーし? お姉さん、本当に大丈夫?」

「ごめんなさい……大丈夫です……」

「なら良いんだけどさ、でも冬の外は寒いからとりあえず中に入りなよ」

「ありがとうございます、お邪魔します」


 赤葉さんにビル内に案内された私は、赤葉さんの事務所らしき萬屋記録局へ、お邪魔させていただく事にした。


 ――なぜ架空のキャラクターである赤葉さんから良い香りがするの? 本当に訳が分からない……


 【202X1月X日 PM19:40】

 【ほこやぎ町 萬屋記録局】


「さぁ、入って! 寒いからさ、お姉さん」

「お邪魔します……」


 私が入った萬屋記録局は、一言で言えば探偵事務所に似た様な感じの事務所だった。


「暖房の温度は……よし。あー、お腹空いたー」



 事務所奥の局長と書かれたデスクの椅子へ座った、赤葉さんは、ぶつぶつ独り言を言い始めた。


「やーと、やいねぇへの金餅 良緒(かねもち よしお)様の異臭騒ぎの調査報告書を書けたから杜鷹とご飯を、食べに行こうと思ったのに……杜鷹は、声かけても爆睡してて起きない!」


 杜鷹? 確かに今、杜鷹君の名前を赤葉さんは呼んだ……


 「ありえないと思わない? ……あ! お姉さんの名前、まだ聞いてなかった……」

「雪護……雪護喜冬です……初めまして、萬屋さん」


「喜冬さん? 珍しい名前だけど、明るい場所で見たら、やいねぇとは違う『私、覚悟を決めたわ!』的なオトナな雰囲気が……って、ごめんね。初対面の人に向かってワタシは何を言ってるんだろう……」


 私の目の前にいる、萬屋赤葉という人物は、とても架空のキャラクターとは思えない仕草を交える普通の女の子だ。

 萬屋赤葉の大ファンである杜鷹君に、囚われたらダメ! と言うのも無理があると感じる程、目の前の萬屋赤葉さんは18歳の女の子に見える。

 


 私が今いる場所は、萬屋赤葉の事件帳の舞台である、ほこなぎ町じゃなくて、妄想犯行計画という世界。

杜鷹君が、大好きな萬屋赤葉の事件帳の世界を、刻想器だった小蒼さんが、リマジネーションを行い、ほこやぎ町として作り上げたのだろう……

杜鷹君の拠点も、ゲームの拠点設定で萬屋マンションほこなぎは無理があるから、小蒼さんが萬屋記録局(よろずやきろくきょく)という場所を用意したと私は考えている。


「ごめーん! 喜冬さん。あったかい飲み物が無かったから、買ってくるね!」

「うん……ありがとうございます」

「すぐに帰ってくるから!」


 ガチャ! バタン!


 赤葉さんは勢いよく飲み物を買いに行ってしまった。


「杜鷹君はどこにいるんだろう……ん? 視界のUlマップにM.M のピン?」

 

 白いスマホにインストールされている視界UIと連動していたマップアプリを開くと、Morisaki Moritakaの略であるM.Mピンの現在地は、萬屋記録局内にを示していた。


「ただいま、あれ? 喜冬さん、どうしたの?」

「萬屋さん、ここに……ここに、森咲 杜鷹さんはいますか?」

「えっ? 森咲 杜鷹? その部屋にいるよ」


 赤葉さんが指さした先には、モリタカルームと書かれたルームプレートが、部屋のドアに掲げられていた。

 

「あの……森咲さんとお会いしてもいいですか?」

「え? 別にいいけど……でも爆睡中だから起きないよ。もしかして喜冬さんは、杜鷹の知り合いなの?」

「私は、その……ごめんなさい……」


 私と杜鷹君の秘密を赤葉さんに勝手に話したら、杜鷹君はどう考えるのだろうか?

 私も杜鷹君も萬屋赤葉が大好きだから……目の前にいるこの萬屋 赤葉さんも絶対に傷つけたらダメだ!


 

「なんでワタシに謝るの、喜冬さん? 杜鷹はね……ワタシと最初に出会った時に、『よおぉろずやーあぁかはぁぁーだ!ホンモノダァぁぁ!』って、人混みのスクランブル交差点で叫んできたんだー」


 ――いくら赤葉さんが好きだからとはいえ、それはどうなのかな……杜鷹君……

 

「あの時のモリタカは、やばい系の不審者で、ワタシがホンモノの言葉の意味も

理解できなかった。そのあと彼と話してみて、訳アリなのも知ったし……ワタシは年上は苦手……でも局長として局員のモリタカは信頼してるん……だけど! 魚嫌いなワタシへ臭い干物の匂いがついお皿を近づ――」


 杜鷹君が赤葉さんにした事を話そうとした時だ――事務所の玄関ドアが開き、赤髪の綺麗な大人の女性が――事務所に入ってきた――

 

「赤葉ちゃん、白葉ねぇが来たよ! おっ? 八色(やいろ)姉さんへの調査報告書を発見! どれどれどれ……OK! 赤葉ちゃんもやればできるじゃん!」

「どうだー! 局長赤葉様が、本気を出したらこのくらい楽勝だよ! あれ? 白葉ねぇは今帰り?」

「そうそう、白葉ねぇはもうクタクタだぁー、ん? 赤葉ちゃん、こちらの方は?」


 萬屋赤葉さんには、姉が二人いる。

警察キャリア組の萬屋 八色(よろずや やいろ)警視とほこな……やぎ……ほこやぎ商事勤務の萬屋白葉さんだ。

 萬屋赤葉の事件帳では、二人の役割はそれぞれ決まっていて、白葉さんは赤葉さん以上に事件に巻き込まれる役割で、赤葉さんが事件に介入してしまう原因にもなってしまっている。

 事件に巻き込まれた時の白葉さんは、冷静さを保ち、推理熱中癖の赤葉さんのブレーキ役と情報整理役として、八色警視と赤葉さんとの橋渡し的な役割も持っている。

 それが私が知っている萬屋白葉さんである。

 

  ――小蒼さんいや杜鷹君……どれだけ萬屋 赤葉の事件帳が好きなのよ!


「初めまして、雪護喜冬と申します」

「こちらこそ初めまして。萬屋 白葉と申します。あっ、赤葉ちゃん! ご飯、まだでしょ!」

「うん、まだ!」

「じゃあさ、ご飯行こーよ! 白葉ねぇが奢るからさ! 雪護さんもどう?」

「喜冬さん? もしかして、杜鷹が気になる?」

「ん、杜鷹? それって……萬屋記録局の新人さんのこと?」

「そう! 金餅さんの異臭騒ぎ調査報告書に書いてある、西坂さんが起こした計画的犯行計画を暴いたのは、私たちと杜鷹だよ!」


 ――え? それって、あの子が仕組んだトリックのこと?


「喜冬さん、どうしたの?」

「その……杜鷹さんが解決した事件の……赤葉さんが作られた、八色さん宛の調査報告書を見せていただくことは、可能なのでしょうか?」

 「うーん、ごめんね。それはできないかな」


――そう……だよね、私は部外者だから無理だよね……



「確かに、杜鷹と私達が暴いた事件だけど、やいねぇが手回しをしてくれたおかげで、ワタシとスキンハゲとやいねぇが協力した結果、杜鷹が暴いたからね」

「そう……ですよね……」

「ごめんね、喜冬さん」


 ここはフィクションという世界ではなくて、現実世界の私たちと同じ様に、赤葉さん達の今が流れている世界なんだという事を改めて実感した。



  ――スキンハゲって明堂(めいどう)警部か、あの赤葉さんと明堂警部の定番のやりとりも杜鷹君は見たのかな、ちょっと羨ましいな……



「とりあえず喜冬さん、さっき知り合った人にお願いするのもアレなんだけど……しばらく留守をお願いしてもいい? 白葉ねぇとご飯食べたら戻ってくるから、どう?」

「はい、分かりました。いってらっしゃい」

「いってきまーす! 行くよ、白葉ねぇ」

「はいはい、またあとでね、喜冬さん」


 ガチャ! バタン!


 赤葉さんと白葉さんは、ご飯を食べに行ったから、しばらく戻ってこない。

 今ならほこやぎ町の杜鷹君が、どうなっているのか、私自身の目で、確かめることができる。


 そう考え、モリタカルームの扉を私は開けた!


 

20話 妄想犯行計画からの招待状  後篇 完。

21話へつづく!

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