18話 妄想犯行計画からの招待状 前篇
妄想犯行計画からの招待状 前篇
雪護喜冬である私は今、まほらぎ市内のまほらぎ市民病院にいる。
病院にいる私がいる理由は、同僚であり、趣味友であり、片想いしている森咲 杜鷹君が、昨日の夜に自宅で倒れて緊急入院した為だ。
【202X 12月27日 AM09:00】
【まほらぎ市民病院 待合室】
『雪護さん、雪護 喜冬さん』
待合室で名前を呼ばれた私は、森咲君の担当医がいる診断室に通された。
「森咲 杜鷹さんは、かなりの疲労が溜まっていたようです。雪護さんは、会社の同僚との事ですが、何か心当たりはありますか?」
「いえ……でも入社以来初めて彼は、会社を欠勤しました、私と彼は同期入社の同じ部署ですので、分かります」
「そうですか……幸い命には別状はないですが……森咲さんには、念の為に二日から三日程、検査入院をしていただく必要があります」
「分かりました……彼のご家族には、私から連絡しておきます……」
「よろしくお願いします」
私は森咲君の顔を見たかったが、森咲君の容態を考えた担当医により、面会することはできなかった。森咲君のご家族に状況を説明するため、私は彼の実家へ電話をすることにした。
プルル! プルル!
『はい、森咲ですが……どちら様?』
「いつもお世話になっております、雪護 喜冬です」
『あらまぁ、喜冬さん、杜鷹は元気?』
「あの……その……森咲くんの事でお電話しました――」
私は森咲君のお母様に、森咲君の現状を話したが、森咲君のお母様の反応は予想していた反応とは、少しだけ違った……
『そう……杜鷹がねー。あの子、昔から誰よりも人を見てる子だから、なんでも抱え込む癖があるのよ』
「そうなのですか?」
『そうなのよー、困った子でしょ? 多分、私たち家族が行ったらね、『なんで来たんだよ、心配すんな!』って怒られちゃうからねー……雪護さん』
「はい、なんでしょう?」
『私たち家族から言うのもおかしいと思うんだけど……雪護さん、杜鷹の側で見守っていただけないかしら」
――森咲君を見守る事はできるけど……森咲君が抱えている問題が、分からない以上どうにもできないよ……
「はい……分かりました。また何かありましたらご連絡します」
「杜鷹をお願いします、雪護さん」
「はい、失礼いたします」
ツー! ツー! ツー!
「私はどうすればいいのだろう……とりあえず、家に帰ろう、ん?」
ピロリン!
私が家へ帰ろうと考えた時、突如、マナーモードにしてあるはずのスマホの通知音が鳴った。
スマホの通知からメッセージを開いた私は、現実ではない得体の知れない何かに巻き込まれていく様な危機感を覚えた。
「何……これ? 森咲君の名前がなんで書いてあるの?」
【妄想犯行計画、再ログイン期限のご案内】
森咲 杜鷹様。
妄想犯行計画への再ログイン期限迄、残12時間を切りました。
万が一、ログインがされない場合は、ゲームルールに従い、時が停止したほこやぎ町の時が再び紡ぎを開始します。
以上。
【妄想犯行計画プロジェクト 担当者 小蒼】
森咲君の名前と妄想犯行計画という怪しい名前と萬屋 赤葉の事件帳の舞台であるほこなぎ町に似た名前であるほこやぎ町。
そして妄想犯行計画プロジェクトの担当者、小蒼と名乗るメッセージの差出人。
このメッセージを見た私は、一つの仮説を考えた。
私と森咲君が、駅近くのまぼらぎシアターで、劇場版萬屋 赤葉の事件帳を観た12月のあの日の土曜日。
あの土曜日、映画序盤で森咲君が眠ってしまった事を境に、森咲君は現実ではない、得体の知れない何かに巻き込まれた。
2日後の月曜日に森咲君と会った時の瞳の光が消えていたことも。
昨日、仕事納めの日に欠勤したことも。
会社からの仕事納めの祝品を届ける程で、心配した私が森咲君の部屋を訪れた後に起きた一連の出来事も。
そして、青ざめた顔になった森咲君が倒れる直前に、誤魔化そうとした物。
これらの点が、一つの線として繋がっているのではないか? ……と私は考えたのだ。
私が考えた仮説を確かめるべく、森咲君の自宅であるハイツまほらへ向かうことにした。
【202X 12月27日 PM12:00】
【ハイツまほらぎ 森咲 杜鷹の部屋】
ガチャン! ガチャ!
「お邪魔します――」
私は今、森咲君の自宅に来ている。
森咲君が昨日の夜に倒れた、リビングの奥の部屋へ私は直ぐに向かった。
「やっぱり、あった。ノートPCとVRゴーグルの様な物……見間違いじゃなかった」
森咲君が倒れた部屋の机に置いてあった、森咲君が隠そうとしたモノの正体は、一台のノートPCとメガネ型のVRゴーグルだった。
――昨日見た時と同じ、ACアダブターが付いていない!
ノートPCが置かれている机の前にある椅子に座った私は、ACアダプターの無い得体の知れないノートPCの電源の電源ボタンを押した!
【KoKuSouS 起動中……】
【ようこそ! 森咲 杜鷹!】
KoKuSouSという聞いたことが無いない、謎のOSを搭載しているノートPCのデスクトップ画面が表示された時、私の瞳に映る光景が信じられなかった。
『ふぁぁぁぁ〜! よく寝た…… ふっ、おはよう、雪護喜冬』
デスクトップ画面の中で、画面の反対側にいる私へ目覚めの挨拶をしてきた女の子は、雪護 喜冬である私の10年前の姿に似ている子だった。
『ふっ、やっと来たんだ、雪護喜冬。そう言えば……私の契約者である森咲杜鷹は大丈夫?』
――私がやっと来た? 森咲君の契約者? 一体、どういうことなの……
「あなたの言葉の意味が、私には理解できない。あなたと森咲君の契約とあのメッセージに記されていた妄想犯行計画は、何か関係があるの?」
今までの一連の出来事の仮説を確かめる為に、私は画面の中の少女へ問いかけた。
『ふっ、何にも知らないんだー、喜冬は。未来を変えようとしている杜鷹を……』
「森咲君が、未来を変えようとしている?」
『ふっ、画面越しで、喜冬と話をするのも面倒くさいから、そこに置いてあるメガネ型ゴーグルをかけててよ』
「メガネ型ゴーグル? これのこと?」
『ふっ、そう。もしかして怖い?』
確かに、画面の向こう側にいる少女の言う通り、怖くないと言ったら嘘になる。
私の瞳が今まで映して来た今が壊れていくのでは無いかと考えてしまうと…………正直、怖い。
でも森咲君が隠そうとしていた秘密を知ることができるなら、怖い帰るという選択を雪護喜冬である私は選ぶ事はしない。
だから私は……雪護 喜冬である自分の意志で、メガネ型ゴーグルをかけた!
――あれ? 意識が遠のく……何かが見える……
【おかえりなさい? 森咲 杜鷹?】
【妄想犯行計画にログイン開始……】
【妄想犯行計画システム管理者による、ほこやぎ町 境界線外へ五感転送が完了しました!】
――おかえりなさい? ログイン開始? システム管理者? 五感転送? …………私はどうなって……
【202X X月X日 APM XX:XX】
【ほこやぎ町 境界線外 まほやぎプラネタリウム】
「ふっ、おーい! 雪護喜冬!」
「う……ううん……ここは?」
「ふっ、ここはまほらぎ市とほこやぎ町の境界線、まほやぎプラネタリウム」
先程の少女と思われる声に、声をかけられて意識が目覚めた私は、天体観測が上映中の観客が誰もいないまほやぎプラネタリウムという施設内にいるみたいだ。
意識がハッキリした私の視界には、VRゲームみたいな様々な情報UIが表示されており、確かに現在地の表示は、ほこやぎ町 境界線外まほやぎプラネタリウムと表示されている。
――この現在時刻の日付と時刻、どうなってるの? APMって、午前と午後が混ざってるってこと?
ついさっき声をかけてきた、声の主である0年前の私に似ている少女が今、私の目の前にいる。
「ふっ、雪護 喜冬、あなたの選択は、本当にこれで良かった?」
「うん。本来、森咲君がいるべき世界は、ここじゃない。でも森咲君の秘密を知り、理解する為には、森咲君の秘密である絶望の未来というモノ、あなたの事やそして妄想犯行計画について、私自身が知らないといけないし……でも先ずは、あなたの名前を教えてくれる?」
「ふっ、ワタシの名前は小蒼。かつて想いを叶える存在である刻想器だったモノであり、森咲杜鷹と想いの契約をしたモノ……それが小蒼」
想いを叶える存在、刻想器と言う言葉と名前を初めて聞いた私は、夢の中の出来事ではないかと戸惑っている。
――刻む、想いの器で刻想器……
「ふっ、刻想器は、幾つもの世界を渡る存在。ヒトと刻想器が奇跡的に出会いし刻、その人が持つ未来の形見せて、未来を変える為の力を代償と引き換えに、想いの契約を結び与える存在」
「未来を変える為の力? 代償と引き換えに想いの契約を結ぶ存在?」
「ふっ、雪護 喜冬。このプラネタリウムで、森咲杜鷹が観た未来を、あなたは見る覚悟があるの?」
森咲君の未来を見る覚悟はあるのかって? あるに決まってるじゃない。
萬屋 赤葉の事件帳がキッカケで、私と森咲君は仲良くなれたし、最初は話が合う同僚だと思っていた。
でもいつの頃からか、私にとって森咲君は、同僚以上趣味友未満以上の感情……護りたい大切な人へと変わっていった……
「小蒼さんが、私の大事な人である森咲君に観せた未来は何?」
「ふっ、私が杜鷹に見せたのは、絶望の未来だよ!」
私は、森咲君が観たという絶望の未来を今から観ることになる。
でも私は、杜鷹君を見捨てたりはしない、だって彼は……森咲杜鷹は……
雪護喜冬である私が、護るべき、大切な人なのだから!
18話 妄想犯行計画からの招待状 前篇 完
19話へつづく!




