10話 第1の妄想犯行 その4(オープンキッチン調査篇)
第1の妄想犯行 その4 (オープンキッチン調査篇)
【金餅邸 食室】
【残解決時間 160時間】
赤葉さんと僕は、金餅邸の食室に来ている。
「いやーやっぱり、豪華なオープンキッチン!流石、お金持ちだけある!モリタカもそう思わない?」
「そうですね、赤葉さん。こんな豪華なオープンキッチンは、ネットでしか見たことないです」
金岳邸の食室は、アニメで見たことがあったけれど、実際に僕の瞳が写している、目の前の豪華なオープンキッチンの臨場感はまるで別物だ。
とりあえず、まずはオープンキッチンの流し周辺を確認してみよう。
豪華なオープンキッチンの流し周りは、家政婦さんがこともあり、綺麗に整理整頓されているのだが、今の僕が注目するのはそこではない。
トリックに使用されたお皿を犯人は必ず洗うはずだ、と僕は考えている。
しかし金餅邸の家政婦さん達は、洗い物をする時にゴム手袋をしないのか、どれだけ探してもゴム手袋は見つからなかった。
でもゴム手袋を使わないと言うことは、トリックに使われたお皿には、犯人の指紋が付いている可能性も出てくる。
「あんまり嗅ぎたくないけど……うん、まだ匂いは残ってるな……萬屋さん、お皿を入れる袋は持っていますか?」
「お皿を入れる袋?持ってるよ。さっき、明堂さんからもらったよ」
「ありがとうございます……では赤葉さん、袋はそのまま広げておいてくださいね」
「了解……くっさ! これなんの匂いよ? 洗剤と変な匂いが混ざって、頭がくらくらする……」
赤葉さんにも嗅覚があるかを試す為、赤葉さんに袋を広げてもらったが、やはり赤葉さんにも嗅覚がある。
五感再現された仮想空間内で、僕だけが嗅覚があると思っていたが、嫌悪感が僕から見ても分かるこの赤葉さんの顔と反応は、ホンモノだ!
「ゲホッ! モリタカさ、本当に魚嫌いなの私。ゲホッ! 吐きそう」
「萬屋さん、なんか……ごめんなさい」
「ゲホッ!次からは、ちゃんと事前に言ってよ、いい?」
「はい、わかりました」
鑑識さんに調べてもらう為、匂いが残るお皿を袋に入れた僕は、次にこのお皿を洗ったであろうスポンジを探すことにした。
「あれ?スポンジがない……」
「スポンジ?スポンジならあそこにあるみたいだよ」
赤葉さんが指を差した先には、スポンジ干しに1つだけ乾いたスポンジが干されていた。
この乾いたスポンジの匂いを僕が嗅いでみたところ、かすかにではあるが、鼻につくような洗剤と変な匂いは混ざる様な匂いが残っていた。
おそらく犯人は、K.S換気システムにログインして、この匂いを消す為に食室から書斎までの廊下と2つの部屋を換気する設定をした。
K.S換気システムの所有者兼管理者である金餅さんが、家政婦達の信頼度に合わせて権限を設定して、家政婦たちの操作管理ログだけは、金餅さんだけが閲覧できるようにしたのではないだろうか。
しかし金餅さんが初老だからという先入観で、こんな高性能な換気システムを使いこなせる訳がないと判断するのは、まだ早い。
なぜなら、萬屋赤葉の事件帳の第一話の被害者である金岳さんは、金餅さんと同じ匂いの特異体質持ちの設定だからだ。
もし金餅さんの特異体質設定が、金岳さんから変えられていないなら、強烈なアレの匂いに、鼻を数分さらしただけで気絶してしまったはずだ。
だから匂いの特異体質であった金餅さんは、高性能なK.S換気システムを導入したのでは? と僕は考えている。
僕たちが今朝、初老の家政婦さんに案内されて、邸内へ入った時、微かに残り香が残っていた。
初老の家政婦さんからの匂いがしなかったが、数時間前の僕たちが邸内へ入る直前、2人の家政婦さんと僕たちは、すれ違っている。
だからあとは、K.S換気システムの管理IDとパスワード、匂いの正体だったアレを見つけるだけ、それだけだ!
【残解決時間 159時間】
10話 第1の妄想犯行 その4(オープンキッチン調査篇)完。
11話 第1の妄想犯行 その5へつづく!




