11話 第1の妄想犯行 その5 (萬屋八色登場篇)
第1の妄想犯行 その5 萬屋八色登場篇
【202X年1月X日 PM16:00】
【金餅邸 書斎室】
【残解決時間 159時間】
赤葉さんと僕は、犯行現場である金餅さんの書斎室に戻ってきた。
K.S換気システムの管理者IDとパスワードの手掛かりを見つけるためだ。
僕と赤葉さんに気づいた明堂さんが、こちらに向かってきた。
「赤毛のフリ探! 事件解決の手掛かりは見つかったのか?」
「あのさ! その呼び方はやめてって、何回も言ってるよね?」
――この仮想空間のほこやぎ町でも赤葉さんは、赤毛のフリ探偵と呼ばれているのか?
僕が知っている萬屋赤葉の事件帳の主人公である萬屋赤葉さんは、ほこなぎ町在住の町の記録人を自称しているフリーターだ。
フリーターという肩書きと探偵という肩書を合わせてフリーター探偵。
そして赤髪という赤葉さんの特徴から、赤葉さんは明堂さんから赤毛のフリ探というあだ名で呼ばれている。
――当の本人である赤葉さんは、このあだ名は気に入ってはいないんだけどね……
「スキンハゲ! って言われてさ、いつも怒っているのは誰だっけ?」
「あ? 地雷踏んだな! 赤毛のフリ探偵! 萬屋姉妹の妹の1人だからって、言っていいこと悪いことがあるだろうが! 赤毛のフリ探!」
「はぁ? 先に言ってきたのはそっちでしょ! このスキンハゲ!」
「ふぅ……全く、良い歳した大人と萬屋の名を持つ我が妹……本当に呆れたわ」
――今、聞き覚えのある声が聴こえなかったか? もしかしてこの声の主は、萬屋八色? 今の今まで、すっかり八色さんの存在を忘れてたよ……赤葉さんと明堂さんが、仮想空間であるほこやぎ町の現実にいると言うことは、つまり八色さんも……
「明堂くん、赤葉、そこまで! あなたたち、ここは1人の命の灯火が消えた現場なのよ、分かってる? それとキミは確か……モリタカ君だっけ? 赤葉が暴走したらあなたが止める役割のはずよね」
ピシッとスーツを着こなした声の主で、2人の間に仲裁に入ったその女性の正体は、予想通りの人物、赤葉さんの姉の一人、警察キャリア組である萬屋八色警視だった。
もしこの人を怒らせたら、八色さんの部下である明堂さんの警察官としての未来が、一瞬で消えてしまうぐらいの影響力を持つ警察官だ。
「それと、萬屋記録局みたいな謎の組織が、我々警察からマークされずに、活動できているのか……赤葉、忘れてない?」
萬屋 赤葉の事件帳で赤葉さんが、毎回事件に首を突っ込んでも、警察からお咎めがないのは、赤葉さんが事件を解決しているからではなく、八色さんの上層部への強力な手回しによるものだからだ。
「ごめん……やいねぇ」
「すみませんでした、萬屋警視」
「分かればよろしい。で? モリタカ君、手掛かりは見つかったの?」
「はい、八色さん、手掛かりなんですが……」
僕は、K.S換気システムの管理IDとパスワードの件、食室で見つけた匂いが残るお皿とスポンジの件、書斎室に僕たちが戻って来た理由を八色さんに説明をした。
「なるほどね……匂いが残る皿とスポンジと換気システムの管理パスワードとIDねぇ……」
「そうです、あのK.S換気システムの管理画面に、管理者ログインをすることができれば、操作ログ情報から犯人へと繋がる手掛かりになるかと……」
「なるほどね、金餅良緒……KANEMOCHIIISHO」
「……え?八色さん、今なんて言いましたか?」
KANEMOCHI IISHO? どういうことだ?
「金餅さんの口癖……色んな場所で自己紹介代わりに言っていたそうよ。『わしゃ、お金持ち。いいでしょ?』ってね」
被害者の名前がヒントだったなんて、意外な盲点だった。
赤葉の事件帳の第一話の金岳 もつ照だって、『わしゃ、金だけは持ってる』が口癖の老人だったし、今にして思えば、隠されたヒントが被害者の名前も推理モノでよくある設定だ。
「とりあえず、K.S換気システムの制御室に行きましょうか、赤葉、モリタカくん」
時間は待っては来れないけど、八色さんが教えてくれたヒントを試す為に、赤葉さん達と僕はK.S換気システム制御室に向かうことにした。
11話 第1の妄想犯行 その5 (萬屋八色登場篇)完。
12話 第1の妄想犯行 その6へつづく!




