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9話 第1の妄想犯行 その3(K.S換気システム 調査篇)

 

 第1の妄想犯行 その3(K.S換気システム 調査篇)



【202X1月X日 PM13:00】

【金餅邸 邸内書斎室】

【残解決時間 162時間】



「いいかお前ら、現場だけは絶対に荒らすなよ。お前達がヘマしたら俺の未来がなくなっちまう……」



 推理ドラマによくある明堂警部のぼやきから犯人を暴くための探索が始まった。

 探索始まった合図として、僕の瞳が映す、このほこやぎ町の時刻表示の下に虫眼鏡を持った帽子のアイコンが表示された。



 ――こういう細かいアイコンを小蒼ちゃんはさりげなく入れてくるよな。



 ニャーン! ニャーン!

 ニャーン! ニャーン!



「猫?このタイミングで猫?」



 萬屋赤葉の事件帳の第1話で、猫が出てきたのは終盤だったはず。

 そんなことを考えていたら白いスマホから小蒼ちゃんの声がまた聴こえてきた。



 『ふっ、いつまで杜鷹は赤葉のアニメの情報頼りに攻略しようとしているの?杜鷹が今立っている場所は、仮想空間のほこやぎ町で、もう1つの1秒1秒が流れる現実世界であり、杜鷹が知ってる赤葉の世界とは理が違う』



 僕の瞳が映しているこの光景の1秒1秒が、リアルタイムで時が流れている現実。

 このほこやぎ町に今、妄想犯行計画のプレイヤーの1人としてではなく、ほこやぎ町の森咲 杜鷹という1人の住人として、僕はもう一つの1秒1秒の現実を体験している……それが、五感再現だ。



 『ふっ、1秒1秒を大事にしないとあっという間に解決時間が来て、ゲームオーバーだね、杜鷹』


 小蒼ちゃんの煽りを受け、必ずこのステージを暴くスイッチが入った僕は、赤葉さんに聞きたい事を思い出した。



「萬屋さん、一つ聞きたいのですが?」

「なに、杜鷹?」

「ほこやぎ町で、『――――』を売っているお店を知りませんか?」

「『――――』? なんでそんな物を売っているお店を知りたいのよ。ていうか私、野菜は好きだけど、魚は嫌いなの」


 赤葉さんに聞いた『――――』は、このトリックに必要不可欠なアレであり、異臭騒ぎの原因、猫が泣いている原因もアレが関係していると僕は考えている。



 でもアレを見つけただけでは、犯人が金餅さんを殺めた確定的な証拠にはならない。

 書斎を含めた邸内を一度、調べる必要があるけれど、まずはあの一番怪しそうな換気設備であるK.S換気システムから調べてみよう。


「赤葉さん、あの換気設備の制御室に行きましょう」

「制御室?何を調べたいのか知らないけど、分かったわ」


 赤葉さんと僕は、K.S換気システムの制御室に向かうことにした。


【金餅邸 K.S換気システム制御室】

【残解決時間 161時間】



 広大な広さの金餅邸内に設置された換気設備の名前は、K.S換気システム。

 僕と赤葉さんはその換気設備の制御室に来ているのだが、コンピュータ制御されているK.S換気システムのコントロールパネルは、意味不明な文字の羅列が表示されていて、何が書いてあるのか、僕にはサッパリ理解出来なかった。


「何が書いてあるか意味不明だし、近未来すぎでしょ! 杜鷹もそう思わない?」


 ――それは僕にもわかんないよ、赤葉さん。出来ることならこの設備を作った、小蒼ちゃんに聞いてくれ……


 仮にも換気システムという名前が付いているのであれば、換気設備のフィルターの交換目安と交換履歴のログ、設置場所などが、記されている項目があるはずだ。


 K.S換気システムの言語設定を見つけ出して、言語を日本語に設定した僕は、管理画面のフィルター関連の設定項目を見つけた。



「……フィルター関連ログ……ここを操作すれば、どうだ」



 フィルター関連ログが表示されると期待した僕に対して、換気システムが映し出したものは現実だった。



【管理者IDが必要です。管理者IDとパスワードをご入力ください 残1回】



 ――ですよね……やっぱり、そうなりますよね。



「ねえ、モリタカ? ……あと1回で、もし入力出来なかったらどうなるの?」

「おそらく……K.S換気システムの強制シャットダウンとか……」


 システムの強制シャットダウン、それはすなわち詰みを意味する。


 ――犯人もしくは金餅さん自身が入力ミスした可能性もあるけど……



「強制シャットダウン? ……怪しさマックスすぎ」

「萬屋さん、管理者IDとパスワードの手掛かりがないか、もう一度邸内を調べましょう」

「分かったわ、モリタカ」



 赤葉さんと僕は、管理者IDとパスワードの手掛かりを探すため、ひとまずK.S換気システム制御室を後にした。



 9話 第1の妄想犯行 その3(K.S換気システム 調査篇)完

 10話 第1の妄想犯行 その4(オープンキッチン 調査篇へつづく!

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