第22話「ゾッコンなんで、安心して下さい!」
周りにも伝わるくらい仲良しな二人。
その空気が、今日もそっと広がっていきます。
ある日、街中で偶然 翔平と鉢合わせた結衣。
少し驚いた様子の翔平だったが、すぐに笑顔になって話しかけてきた。
「――あ! 結衣さん!」
「あ、翔平くん……!」
以前、涼也と一緒にいたときに一度会っていたせいか、気まずさは あまりなかった。
(さん付けにしようか迷ったけれど、なんとなくその距離感じゃない気がして――気づけば“くん”で呼んでいた。)
翔平は、どこか嬉しそうに目を細める。
「涼兄から聞きました! 結衣さん、涼兄と付き合うことになったんですね!」
「うん……そうなの」
「やっと……というか、あ、すみません、失礼だったらごめんなさい。
でも、ずっと“早くくっつけばいいのに”って思ってたんで、嬉しいです(笑)
モタモタしてると取られちゃいますからね、本当」
翔平の明るさに、結衣もつられて笑ってしまう。
そのまま彼は、さらに一言付け加えた。
「涼兄、俺が言うのも変ですけど、一途で浮気しないし、もう完全に結衣さんにゾッコンなんで、安心してください!
マジで、おめでとうございます!」
“ゾッコン”なんて言葉に、思わず頬が熱くなる。
「……ありがとう」
結衣が頭を下げると、翔平が くすっと笑った。
「……顔、赤くなってますよ?」
「えっ、うそ……!」
思わず頬に手を当てると、そこは じんわり熱くなっていた。
――その夜。
涼也と電話をしていると、自然とその話題になった。
「そういえば今日、翔平くんにバッタリ会って……」
「え、マジで? あいつ、なんか変なこと言ってなかった?」
「ううん、全然。むしろ“おめでとうございます”って言ってくれたよ」
「へえ……珍しくまともだな(笑)」
「それだけじゃなくて……
“一途で浮気しないし、もう完全に私にゾッコンなんで安心してください”って」
くすっと笑いながら言うと、涼也は一瞬黙った後、照れたように笑い声を漏らした。
「……間違ってない(笑)」
「え?」
「もう完全にゾッコンなんで、安心してください」
その不器用だけど真っすぐな言葉に、結衣は胸の奥がじんわり温かくなるのを感じた。
「……私も涼ちゃんにゾッコンだよ〜」
照れくさそうに、でも自然にそう言うと、涼也の表情がふっと柔らかくなった。
そのとき、涼也のスマホが震えた。表示された名前は「大悟さん」だった。
「……あ、ごめん。今、大悟さんから電話きた。ちょっと出てもいい?」
「うん、もちろん!」
通話が一時的に切れたようで、スマホが静かになる。
結衣は画面を見つめながら、涼也の声が戻ってくるのを静かに待った。
数分後――
「お待たせ」
「ううん、大丈夫だった?」
「うん。“おめでとう”ってさ、大悟さん。
『よかったな、弟。改めてよろしく。今度また飯でも行こう』って言ってた」
「えっ……そうなんだ……」
結衣は、ふと嬉しそうに笑った。
涼也は少しだけ苦笑いをして、照れたように言う。
「俺、結衣ちゃんのお兄さんに『よろしくな、弟!』って言われる日が来るとは思ってなかったよ」
その言葉に、結衣は思わず ふふっと笑ってしまう。
「うん……でも、なんか嬉しいな」
*少しずつ、周りの人たちにも認めてもらえて──
私たち、本当に“二人”になっていくんだ*
冬の空は、どこまでも澄んで青かった。
お忙しい中、読んでいただきありがとうございました!




