第23話「上がるだけの一年、始まります」
年末から年始へ。
変わらない声と、やさしい時間に包まれて――。
新しい一年の始まりを、二人で迎えます。
年末の夜。
(なんとなく、涼ちゃんの声が聞きたくなって──思わず電話をかけた)
「もしもし? 今、大丈夫だった?」
「うん、ちょうどまったりしてたところ。どうした?」
なんてことない会話。
「良いお年を」には、まだ少し早くて──ほんの少し話すだけのつもりだったのに、
気づけば話は尽きず、時計の針は0時を過ぎていた。
年越しの瞬間を電話越しに迎えるなんて、思ってもみなかった。
ちょっとだけ寝不足な元日。
でも、明日の初詣が楽しみな気持ちは変わらない。
「ねえ、明日、初詣楽しみにしてるね」
「うん、楽しみだね。今日は遅くなっちゃったけど、明日は ゆっくり行こう」
照れくさいけど、優しい声に心が ぽっと温まった。
*
年が明けて、二人で初詣へ。
人で賑わう神社の境内。空気は冷たくて、でも心は不思議と穏やかだった。
鐘の音に耳を澄ませ、二人で並んで手を合わせる。
そして、おみくじ。
「…………えっ」
まさかの“大凶”。
「うわ……どうしよう。年明け早々これって……」
半べそで紙を見つめると、涼也が笑いながら言った。
『大凶って、一番上がり幅あるんだから、いいんだよ。だって、あとは上がるだけでしょ?』
その笑顔に、結衣の心がふわっと軽くなる。
「……そっか。たしかに、そうだね」
結衣が境内の木におみくじを結び終えて手を離すと、冷たい風が指先にふれた──
その瞬間、涼也がふいにもう一枚のおみくじを差し出してきた。
「……え?」
「ほら、俺の。大吉だった。結衣ちゃんにあげるよ」
「え、だめだよ、それ……」
「いいの。俺は もう、十分幸せだから」
「……ありがと。これ、お守りにする」
にこっと笑って、大吉のおみくじをそっと胸元にしまった。
空を見上げると、澄んだ冬の空に星が静かに瞬いていた。
*
【不安なこともあったけど、年の始まりがこんなにあたたかいなんて──
やっぱり、涼ちゃんと一緒でよかった】
お忙しい中、読んでいただきありがとうございました!




