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再生回数7回のラブストーリー  作者: 市善 彩華
第3章 マーガレット ── 心の揺れ、恋の兆し
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第16話「少しずつ、近づいて」

少しずつ、近づいていく気持ち。

何気ないやりとりの中に、確かな温度が宿っていく──。

秋の空の下、静かに変わりゆく二人の関係を描きます。

あれから数日。

涼也と結衣の関係は、少しずつ──でも確実に変わっていた。


一緒に過ごす時間が自然と増え、言葉にもあたたかさがにじむ。

些細なことも、互いを意識してしまう。そんな感情が、静かに芽吹いていた。


ある日の昼休み。

結衣が一人でランチに向かおうとしたそのとき、涼也が小さく声をかけた。


「結衣ちゃん、ちょっと待って」


振り返ると、彼の手には小さな紙袋。


「これ、よかったら」


中身は、結衣が前に「気になってる」と言っていたカフェの限定スイーツだった。


「……わぁ、これ! ずっと食べたかったの」


目を輝かせる結衣の笑顔に、涼也の表情がふっと和らぐ。


「気に入ってもらえてよかった。……ちょっとでも、喜んでくれるなら嬉しいな」


少し照れたようにそう言う涼也を、結衣は優しく見つめた。


「ありがとう、涼ちゃん」


その一言に、涼也の胸が温かくなる。

誰かの“嬉しい”の理由になれることが、こんなにも嬉しいなんて。



結衣の笑顔を見るたびに思う。

自分にできることなんて、ほんとに小さなことばかりかもしれない。

けれど、それでも――彼女が笑ってくれるなら、もっとしてあげたくなる。

少しずつ、でも確実に近づいている。この気持ちも、彼女との距離も。



その後2人は、自然な流れでランチを共にし、他愛ない会話を交わした。

言葉は少なめでも、心は不思議と満たされていく。


そして夕方。

帰り道で、涼也が少しだけ照れくさそうに口を開いた。


「結衣ちゃん、今日は ありがとう。……楽しかった」


結衣は、ふわりと笑い返す。


「うん、私も。……また今度、行こうね。涼ちゃん」


柔らかな空気を残して、2人は別れた。



*涼ちゃんって、自然に呼べた。

優しい声、まっすぐな目。私には、もったいないくらいの人かもしれない。

でも、嬉しかったな。

こんな時間が、もっと続いたらいいのに。

……少しずつでいい。ちゃんと向き合っていけたら、きっと。*


お忙しい中、読んでいただきありがとうございました!

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