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再生回数7回のラブストーリー  作者: 市善 彩華
第3章 マーガレット ── 心の揺れ、恋の兆し
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第17話「……俺、何かしたかな?」

ほんの少しのすれ違いが、胸の奥をざわつかせる。

けれど、向き合って言葉にできたとき、心の距離はそっと近づいていく──

そんな帰り道のお話です。

「……そろそろ帰ろっか」


結衣の言葉に、涼也は軽く頷いた。

並んで歩く帰り道。空は、すっかり夜に染まり、街灯が二人の足元を淡く照らしている。


ほんの少しだけ──二人の距離が縮まった気がしていた。

だけど、どこか、ぎこちない空気が流れていた。


【*なんでだろう。さっきから、ちょっと上手く話せない*】


結衣は、涼也の横顔をそっと盗み見る。

笑ってはいるけど、どこか、よそよそしい。無理しているようにも見える。


【*私……何か変なこと言っちゃった?*】


沈黙が続く中、スマホの通知をきっかけに、ふとSNSを開いた。

タイムラインには、偶然にも涼也のXアカウントが流れてくる。


そこには、有名な女性芸能人とのやりとりがあった。


涼也が軽くツッコミを入れ、彼女が笑って返す。

フォロワーの間では、おなじみのやりとりらしくリプ欄は賑わっていた。


【*あ……そっか。やっぱり、そういう人なんだよね*】


心の奥に、すっと冷たい風が吹き抜けた。


「……ん? どうかした?」


涼也の声に、結衣は慌ててスマホを閉じる。


「ううん、なんでもないよ」


微笑もうとしたけれど、うまく笑えなかった。


その後も会話は途切れがちで、駅までの道のりが やけに長く感じられた。


改札前まで来たとき、涼也が ふと立ち止まった。


「……俺、何かしたかな?」


「え?」


「今日の帰り道、ずっと……なんか、結衣ちゃんの様子が変で。

もしかして、俺……気づかないうちに嫌なこと言った?」


【*やっぱり、この人は優しい*】


驚いたような、でも真剣なその表情に、胸がきゅっと締めつけられる。


結衣は一度、大きく息を吐いた。


「……涼ちゃんって、芸能人の人とも仲良いんだね」


涼也は一瞬だけ目を丸くして、すぐに「うん」とうなずいた。


「たまたま共通の知り合いがいて、そこからちょっとね。……投稿、見ちゃった?」


「うん。……なんか、そういうの見ると、ちょっと自信なくすっていうか……」


「結衣ちゃん」


涼也の声が、そっと遮る。


「俺、今一緒に歩いてるの、誰だと思ってる?」


「え……?」


「有名人と話せても、結衣ちゃんと歩く方が俺には、よっぽど特別なんだけどな」


その言葉に、目の奥がじんわりと熱くなる。


「……ごめん。変なことで拗ねちゃって」


「拗ねてたの?」


「……ちょっとだけ、ね」


涼也が笑って、結衣もつられて笑った。


「じゃあ、俺もちゃんと気をつける。誤解されるようなこと、したくないから」


「うん……ありがと」


見つめ合ったまま、しばらく言葉を失った。

遠くで、電車の発車ベルが鳴り響いている。


「……じゃあ、また明日ね」


「うん。また明日」


改札をくぐる直前、結衣は ふと振り返って声を張った。


「ねぇ、涼ちゃん!」


「ん?」


「……明日も、ちゃんと話そ?」


涼也が優しく頷いた。


「もちろん」


【*大丈夫。この人のそばにいると、ちゃんと伝えようって思える*】


少しずつ、この人となら素直になれる──そんな気がした。

お忙しい中、読んでいただきありがとうございました!

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