第15話「──あなたに届けたくて」
名前で呼び合うようになったその瞬間、二人の距離がそっと近づいていく。
重なった想いと、交わされたプレゼント──秋空の下、心が温かくなる物語。
涼也と結衣は、秋の夕暮れの街を歩いていた。
日が沈み、少し肌寒くなった空気が心地よく感じる。
「……今日、一日、楽しかったな」
結衣が笑顔でそう言うと、涼也も微笑み返した。
「うん、俺も楽しかった。結衣ちゃんと一緒にいると、なんだか落ち着くんだよね」
結衣は少し照れくさそうに微笑みながら、足元を見つめる。
「私も、すごく楽しかったです。涼ちゃんといると、気を遣わなくていいから、自然に話せる」
涼也は照れたように肩をすくめた。
「それが一番だよ。無理しないで、ありのままでいられるのがいいんだと思う」
二人は、しばらく歩きながら、静かな時間を楽しんでいた。
「……あのさ」
涼也がぽつりと話し始める。
「さっき、誕生日プレゼント渡せてよかった。本当は もっと早く渡したかったんだけど、タイミングを逃してしまって」
結衣は、その言葉に笑顔を見せる。
「いえ、遅くなんてないですよ。涼ちゃんからのプレゼント、すごく嬉しかったです」
ふと結衣が思い出したように、優しい声でつぶやいた。
「……私ね、あのプレゼント、誕生日プレゼントのつもりで渡したんです」
涼也が少し驚いたように顔を上げる。
「えっ……」
「でも、さっき、涼ちゃんに“今日渡すつもりじゃなかった”って言っちゃったから……訂正しとこうと思って」
結衣が少し照れくさそうに笑うと、涼也も気が抜けたように笑った。
「そうだったんだ。気持ち、ちゃんと伝わったよ。すごく嬉しかった」
「ふふ、よかった。ポッキーの日って、誕生日覚えやすいから助かりますね」
「はは、翔平にも毎年イジられてるんだよ」
「翔平さんらしいかも」と結衣がくすっと笑う。
二人の間に、自然な笑いが生まれる。
「結衣ちゃんがくれたプレゼント、大事にするね。本当にありがとう」
「どういたしまして、涼ちゃん」
その一言に、また一つ、心の距離が近づいた気がした。
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