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第二話

 「おはようございます。あの......レイン様?どうかしました?」


 クラムが不思議そうな顔で訪ねてくる。


 「いやぁ、別に何にも…」


 きっと、布団にくるまりながら、顔だけ出している僕のことが気になるのだろう。


 「……そうですか、あと朝食はここ置いておきますね」


 「うん、ありがと」


 今僕は、胸に抱えたこいつを、ほかの人に見せて良いものかすら分からない。こういう場合、こいつは恐らく特別な存在か何かなのだろう。そうそう口外していいものかーー


 そこで、思わずふわふわとしたこいつをぎゅっと強めに抱いてしまった。


 『にゅむ!』


 「ちょっっっ!!!」


 コイツ…静かにしてろって、言ったのに。


 この時のレインは、その事に気付かなかった。


 「?……レイン様、今何か言いました?」


 「い…いやぁなんでもないよ。通りすがりの天使がいたもので?」


 やばいな。即刻、コイツについての調査を始めないと……このままだとバレるのも時間の問題だ。


 「……猫とか連れてませんよね、レイン様?」


 「!!」


 やばっ、そういえば猫ではないにしても動物っぽくはあるぞ、コイツ。


「……大丈夫だよ」


 そう、レインの記憶には、3歳の頃に野良猫をこっそりと持ち帰り、アース兄様が暴れ狂ったという記憶があるのだ。ちなみに今、あの時の猫は、最近退職したメイドの一人が引き取っている。


 しまったどっちにしろアース兄様には見せない方が良いな。


「もうすぐライ様が学園から帰ってくるんですよ。あの人を抑えられるのは、アース様だけなんですから、あまり悩みを増やさないで上げてくださいね。あと、ついでに私のお給料を上げてください。」


「わかった……とも言えない内容も含まれてなかった?」

 

「くっ!」


 僕がそういうとクラムは少しむすっとした顔をして、部屋を去っていく。


 はぁコイツ……どうしようか、とレインは頭を抱える。


 『にゅむ』


 さっきまで抱いていたコイツを膝元に優しく置く。


 「なぁ、君ってなんなんだ?」


 ダメ元で本人に聞いてみる。


 『にゅむ?』


 「君のことを知りたいんだよ」


 アース兄様やクラム、他のメイドたち、ライ姉様はまだ会ったことないけど、とっくに情は移ってしまった。彼ら、彼女らを危険にさらしたくない。 


 「教えてくれない?」 


 『にゅっ!……にゅむ!にゅむ!』


 言葉が通じたのか、いや元々通じているのか、膝元から飛び出し、”これを開け”と言っているような声色と耳の動きと共に、一冊の本を部屋の棚から取り出す。


 「【魔法、属性丸分かり本】?」

 

 その本には、ユーリア教授による様々な魔法の大まかな効果、そして、経験を基にした応用方法が主に書かれていた。


 しばらくペラペラとめくっていると、ふわふわとした生き物は耳を使い、回復スキルのページのところで止めてきた。 


 「回復スキルは人の体を癒し、修復するという働きを持つ。後衛に一人連れるだけで疲れを知らずに戦い続けることができるだろう。ーーーこれだけ?」


 他のスキルや、属性は何ページにも及ぶ豊富な解説や挿絵があるのに読んでみると、回復スキルの内容はこれだけだった。


 ついでに最後の方に小さな文字で、"回復スキルについてのデータはとても少ない"と書かれていた。


 「つまり君は、これ(回復スキル)ってことなの?」


 『にゅむ!』


 なんてこった僕は、知らぬ間に回復スキルに出会っていたのだ。


 ♢


 「ら、ライさん!お待ち下さい!!」


 「どうしたんだ?カミラ。まさか、この程度すらついて来れないのか?」


 雄大な自然を遮る物がない、広い平原を、ライは自分の身体より大きい荷物を背負いながら、走りまくっていた。


 「こ......こんな...ぶっ通しで...4時間も...」


 「なんだなんだ?だらしの無い、本当に私の護衛なのか?」


 「そもそも...ライさんが......馬車を頼むの....許可してくれれば」


 「嫌だ!だって馬車、私より遅いんだもん」


 可愛い乙女顔で、なんて頑強な事を言うんだ、この人。


 「それにレインも今頃寂しがってると思うの。だからお姉ちゃんとしても早く帰ってあげないとね」


 「...ははは、そうですねー」

 

 この前帰った時、凄い避られてなかったっけ?獣臭いとかでーー


 「......そう言えば、狩りは」


 「狩りはもう良いよ」


 流石に学んだんだね、とカミラは感心する。

 

 一方、ライの顔からは少しの申し訳なさが伺えた。


 「あっライさん、見えてきましたよ....!ってもういない」

 

 

 だんっ


 「たっだいまーーー!」



 ライ姉様帰宅の少し前。


 「やーん、レイン様はやっぱり何着てもお似合いになる〜」


 「ねぇクラム?これは普通に恥ずかしいんだけど...」


 リボンや宝石やらがふんだんに付いたロングスカート、細く煌びやかなティアラ、まさにお姫様が着るようなドレスを着た僕が、鏡に映っている。


 「大丈夫ですよ!私達しか居ないので!」


 そう言う事じゃないよ、と顔で訴え掛ける。


 ライ姉様のおかえりパーティーは、毎度出来るだけ奇抜なアイデアで何かしらを変えて、開催している。


 これには、アース兄様もライ姉様もノリノリであった。


 ガールデン家の血というものか。


 ちなみに、前回はうちが無人館になってたドッキリをしたが、あれはライ姉様が「私ってそんなに獣臭かった!?」と二メートル位の猪を片手に半泣きになっていたので、今回は特別に労うドッキリにしようとなっている。


 「お願いしますよ、特別に労うドッキリってレイン様の案ですよね?」


 ......そうだったのか。


 「それでも、せめてこのティアラだけは外させて...」


 「あっ!だ、ダメです。それがこの服の本体なんですから!!」


 「この服ってダンジョンのボスなの?」


 「とにかく!!それだけは外させません!!」


 「嫌だ!僕だって男としての.......」


 「なんで、急にオス宣言を!?」


 「こっちがなんでだよ!!」


 「あー、無駄な抵抗はやめなさい!」


 「僕は決して諦めな」 


 

 だんっ


 「たっだいまーーー!」


 ライ姉様が帰ってきた。


 





 


 

 


 


 


 



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