#18
偶然なのか狙ったのか不明だが、開け放ったベランダの窓から、星にまたがった裕也と白兎は身体を滑り込ませる事に成功した。
クッションとなって光りながら砕けた星は、花火のように花弁を開き、飛散しながら部屋の中で降り注いでいた。
木目調のフローリングにピンク色のハート模様のカーテンが踊る。
木製のベッドにもハートの装飾が随所に見られ、掛けられた毛布もまたピンクハートの統一感が見受けられる。
本棚と勉強机、机の横にはピンクのランドセル。
裕也は一目で女の子の部屋だと識別すると、顔を紅潮させて白兎を捜した。着地の瞬間の光は星が砕けたモノのようだが、その刹那に白兎の姿を見失った。
部屋を見渡すと流石に女の子の部屋らしく至る所にぬいぐるみが鎮座している。
ベッドの枕元にも、ひときわ大きなウサギのぬいぐるみが。
「何をしてるのかな」
裕也はぬいぐるみに話しかけた。
「ノックも無しでひとの家に飛び込んでベッドにまで入るかなぁ」
「いや、偶然ですよ。たまたま窓が開いていてラッキーでしたね。落ちて跳ねた先がベッドだったのもラッキーでした。おしり痛くありませんでしたか?」
ぬいぐるみらしきものが呑気な声で応えた。
ベッドの中でハートの毛布が膨らみを見せる。
もぞもぞと動きながら、その中で埋もれるのは、髪の長い少女だった。毛布から顔を出し、ベッドの前に立つ裕也と目が合う。
歳は裕也とさほど変わらないようではあるが、それもそのハズ。
「わっ、裕也くんだ、びっくりした」
少女と少年は同い年で、
「由香ちゃん……」
クラスメイトだった。
「うわっ、何?なんで居るの?うわっ、ウサギでかい!可愛い!」
「こんばんは、お邪魔してますミス……ユカ・サクライ」
「ちょっと、ベッドから降りてよクレイバー」
「うっわ、喋った!ウサギが喋ったよ裕也くん!何で私の名前知ってるの?」
「そこの壁にある額縁にお名前が書いてございます」
「ちょっと!今すぐ降りてよ!クレイバーってば!」
「うっわうっわチョー恥ずかしい、めっちゃ喋ってる、何?あなたクレイバーって言うの?裕也くんが連れて来たの?」
「どちらかと言うと私がご案内しました」
「クレイバー!降りてこーい!」
「ああんっ裕也くん引っ張っちゃダメ!ひどいことしないでっ」
「そうですよミスター、羨ましいんですか?」
「お前わざとやってるだろ」
夜の闇に溶け込むには似つかわしくないやり取りが、星の煌めきが部屋の塵と消えるまで続く。




