第8話 トムトムダンジョンの洗礼
トムトムダンジョン。そこは勇者たちを容赦なく叩きのめす、地獄のような迷宮だった。
中に足を踏み入れた瞬間、俺はその洗礼を受けた。
「うわっ……!」
そこら中にこびりついたうんこ。天井、壁、床、いや、空気すら茶色い気がする。
衛生状態は酷く、保健所が来たら即閉鎖レベルだった。
「勘弁してくれ……」
思わず口をついて出たその言葉が、まさか最後の言葉になるとは、
このときの俺は知る由もなかった。
――ガサガサッ!
草むらが揺れた。その瞬間、黒い影が俺に飛びかかってきた!
「うおっ!?」
その攻撃に、俺のカモシカのようにしなやかな足がボキッと音を立てそうになる。
つかーん、つかーん、つかーん!
止まらない猛攻!
気づけば俺の肛門も限界を迎え、うんこがこぼれ落ちた。
「ここまでか……」
そして、俺は意識を手放した――。
次に目を覚ましたとき、そこは王国の城だった。
「気がついたのね」
まぶたの隙間から見えたのは、プウラ王女。
気品と優雅さ、そしておならのキレを兼ね備えた美女だ。
「なぜ、俺はここに……?」
「しまさがあまりにも危なっかしいから、こっそり見張りをつけてたのよ。危うく命を落とすところだったわね」
「ありがとう、プウラ王女。でも……あれは一体何だったんだ?」
「“トムゴキブリ”よ。トムちゃんの餌を食べて、異常進化したモンスター。
トムトムダンジョンにはよくいるわ。ゴロゴロとね」
俺、あんなヤツらと戦わないといけないのか。まだまだ修行が足りねえ……。
「プウラ王女、お願いだ。俺に修行をつけてくれ!」
「ふふ、昨日の敵は今日の友ってわけね。で、見返りは?」
「俺がプレゼントだ!」
「……まあ、いいわ。もてる男はつらいわね」
「まあな。フィリピンパブでは無双だったぜ」
こうして、俺は、プウラ王女の元で1年に及ぶ修行を積んだ。
こうして1年が経った――
「くっ……強すぎる。あなたに勝てる者は、もうこのプウラ王国にはいないわ……」
「フッ……」
「しまさ、あなたの次なる試練は、再びトムトムダンジョンに行くことよ。
トムゴキブリとの決着をつけてきなさい!」
「任せろ。今度は、俺がうんこをこびりつけてやる番だ!」
そして、俺の第二の戦いが始まった――!




