第6話 屁の騎士、誕生
決闘の日は、突如としてやってきた。
場所は、王国の中心にある「おならドーム」。
観客席は満員。国民たちは息をのみながら、今か今かと決闘の開始を待っていた。
アナウンスが鳴り響く。
「ただいまより、“プウラ王女 vs しまさ”による
屁の頂上決戦 を開催いたします!」
会場が沸く。鳥も嬉しそうにピヨピヨと鳴く。
だが俺は、すでに静かな闘志に満ちていた。
半年間、俺はキャサリンと共に酒を浴び、脂っこい料理に挑み続け、
腹にガスを溜める訓練をしてきた。
プウラ王女に敗れたあの頃の俺とは違う!
王女が優雅にステージへ現れる。金のティアラに、純白のドレス。
それはまるで、天使のようだった。
……ただし、屁をこくまでは。
「ふふふ、よく来たわねブゥ!、しまさ。あなたが私に挑むなんて、100年早いわ」
「いや、半年で十分だ」
俺はゆっくりと足を進め、ステージ中央に立つ。
司会が大声で叫んだ。
「第一ラウンド:ガス放出対決!」
まずは王女のターン。
彼女はドレスを少し持ち上げ、優雅にしゃがむ。
「ふんっ」
ブボボボボボボッ!!!
音とともに金色の風が会場を駆け抜けた。
近くにいた観客の帽子が吹き飛び、遠くの鳥が気絶する。
「さすが王女…!」
「風速、12メートルです!」
ざわめく会場。だが、俺は怯まない。
ついに俺のターンだ。
「キャサリン、見ててくれ!」
俺は静かに構え、腹筋をギュッと締め、己の限界を超える覚悟を持って──
「いくぞぉおおおおお!!」
ビチビチビチチィッッ!!!!!
爆発的な音とともに、俺の屁は放たれた。
その音はドームを揺らし、電光掲示板が一瞬だけフリーズした。
「これは…!?」
「測定不能です!!前代未聞の屁です!!」
王女の表情が曇る。
「まさか…ここまでとは…!」
第二ラウンドは臭気対決。
だが、半年分の腸内管理をしてきた俺の屁には、すでに腐敗の極致が宿っていた。
観客席から「うっ」と倒れこむ者まで出る始末。
ついに、王女が膝をつく。
「認めるわ、しまさ、あなたの屁、恐ろしいほどだった……」
「ありがとう、王女。俺はただ君に勝ちたかった。それだけなんだ」
王女はふっと笑った。
「今度は、恋の決闘を申し込んでくれてもいいのよ」
俺の心が、一瞬だけ屁以外のことで温かくなった。
会場は歓声に包まれた。
国王も涙を流して立ち上がり、叫んだ。
「しまさ!お前を“屁の騎士”に任命する!」
俺は静かにうなずいた。
こうして、屁の力で世界を救う男の物語は始まったのであった。




