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第16話 屁の勇者、ラーメン屋を起業

「いらっしゃいませ~!」


俺は、かつてトムトムダンジョンのボス――トムちゃんを討伐し、国王から莫大な褒美を手に入れた。

その金で開いたのが、ここ「しまさのベトコンラーメン」だ。

ベストコンディションラーメンの略で、ニンニクたっぷり、腸を直撃する刺激の一杯。

だが、トムトムダンジョン帰りの俺の腹は戦いの後遺症で、おならが止まらない体になっていた。


医者曰く「次に無理をしたら、屁と一緒にうんこも出る身体になりますよ」とのことだった

……気をつけないとな。


客が来る。

小太りで眼鏡の男が注文した。


「ベトコンラーメン辛めで」


一杯1000円。原価は300円。だが家賃や光熱費を差し引けば、利益はわずか250円。

だから俺は、牛乳をセットで売ることで利益を稼ごうとした。


「おい、マスター!」


「はい、ただいま!」


カモシカのような足取りで駆け寄る俺に客が怒鳴る。


「ビールはないのか? 牛乳しかないとか正気かよ! 二度と来ねえ!」


……腹の底から何かが出そうになるのをこらえながら、俺は深々と頭を下げた。


だが災難は続く。

ある日、牛乳を飲んだ客が腹痛で病院に運ばれる事件が発生した。


原因は――暑い厨房で半日放置した牛乳。

「一度熱湯で沸かして冷ませば安全だろう」

そう思って客に出した俺の判断が、命取りになった。


開店から3ヶ月後、店は営業停止。褒美の金も半分以上が赤字と役人への賄賂に消えた。


いや、半分どころかもっとだ。

なぜなら毎晩フィリピンパブに通い、キャスト全員に1万円ずつ配るという

“モテる男”のパフォーマンスを続けていたからである。


金も名誉も失い、残ったのはビチビチの腹だけ。

そんなマイナスのことを考えていたとき、頭の中に声が響いた。

――「しまさ、諦めてはだめ」


メアリの声だった。

そうだ、俺は挑戦者だ。もう一度立ち上がるべきなのだ。


自分が一番したかったことを思いだした。


俺が一番したかったことは、1ヶ月間、Netflix漬けの生活だった。

牛乳と食料を買い込み、大音量でアニメと映画を観続けた。


「キーン、ガヤガヤ、バキーン」


1ヶ月後、体調は100%回復。アニメの影響で自分が無敵になった気がした。


「よし、新しい冒険の始まりだ――!」


しまさは満面の笑みで、再び歩き出した。

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