第14話 誇り高き垂れ流し
トムちゃんの毛が黄金に輝いた。
「なんて、かがやき…」
しまさは思わず言葉をこぼした。
おしっこ以外のものをこぼしたのは、数年ぶりのことだった。
「ひるむな……死ね、トムちゃん!」
『デスおなら』
「キュイーンッ……ツカーン!!」
「しっぽびんた!」
「バシーン!」
放たれたデスおならは、無惨にもはじき返される。
「驚いたか、しまさ。俺の黄金モードは体内の魔素を消費する代わりに、攻撃力が二倍となる!」
「くっ、なんて強さだ…」
その刹那、しまさの心に声が響いた。
「諦めてはだめ」
――メアリの声だった。
幻聴ではない。彼女の気配が身体に入り込むのを、確かに感じた。
「そうか…俺は挑戦者だ。
ここで全力を尽くし、トムちゃんに敗れたとしても本望。
どうせなら強く散る!」
しまさはポケットから、白濁した液体を取り出した。
それはすでに緑がかった変色を帯び、鼻を刺す異臭を放っている。
「しまさ……血迷ったか?」
勝利を確信した表情で、トムちゃんが呟く。
「これはメアリに作ってもらった牛乳スープ。
一ヶ月前のものだ。本来なら一年後に飲むつもりだったが今飲む!」
「そんなものを飲めば腹を壊すぞ。まあいい、死ね!」
「ワン! ワン! ワン!」
「グアッ……ゲボッ!」
トムちゃんの攻撃が降り注ぐ。
血にまみれながらも、しまさは牛乳スープを口に運ぶ手を止めない。
一リットルを飲み干したその時、しまさは不敵に笑った。
「俺の勝ちだ!!!」
腹の奥が轟音を立てた。
『移動おなら』
「ブッ! ブーッ! ビチーーーッ!!」
「少林寺拳法パンチ!」
「ツカーン!」
「グワァ!」
トムちゃんは10メートル先の壁まで吹き飛ばされた。
さらに続く――
「移動おなら!」
「ビチッ! ブーッ! ブーーーッ!!」
「少林寺拳法・乱れ蹴り!」
「グハッ! しまさ…俺の負けだ。もうやめてくれ……」
「お前は命乞いをする者を、一度でも許したことがあったか?」
そう言い放つと、しまさの拳は止まらなかった。
千度の打撃。辺りは血と臓物に染まり、地獄と化す。
「くっ、腹が…」
次の瞬間、しまさは無様に垂れ流していた。
だが、彼は誇らしささえ感じていた。
これほどまでにちびって、誇らしいと思ったことはない。
そうしてしまさは、静かに目を閉じた。




