そんでもってだね
ジゼルとの挨拶と報酬云々の応酬を終わらせたらば、獲物(実物)についてのお話をふることにする。
「で、ジゼル。中々の大きさの獲物だけど…」
どうやって運ぶのか、までは皆までいわず、あえて濁しながら尋ねる。
一般的なことかもしれないので知らなくていぶかしがられたらやだし。
因みにわたしは亜空間のスキルあるからまるごと入るけど。
「俺が持ってるマジックボックスなら少し処理すればそれに入るかな」
ほほぅ、亜空間魔法が付与された魔道具があるのね。
ちょっとまっててくれ、と言うとジゼルは解体作業に入る。手慣れているようで、テキパキと作業をこなす姿は見ていて感心する。
生き物の解体というグロが伴う作業を経験したことがなかったので、みていたらどうなるか心配だったのだが…。そういった耐性も聖女チートにはあるらしく、存外平気だった。
ありがとうチート。
いるかいないかわからない神に感謝の念をおくっておいた。
ジゼルは解体が終わると掌に収まる程度の大きさの箱を持っていたバッグから取り出し、その中に生物だったものを入れた。
彼が解体で汚れてしまった箇所を水の魔道具で綺麗にする頃にはもう辺りは茜色が混じり始めていた。
解体作業中にわたしが集めていた枯れ木に火をつけて今夜はここで野宿することに。
ジゼルは魔物や生き物がよってこないよう結界石を地面に穿ち簡易天幕をはった後、解体ほやほやのレッサードラゴンの肉をその焚き火で焼き始めた。どうやらこれが夕飯のようだ。
「色々おまかせしてしまってごめんね、ありがとう」
「これぐらいなんてことないさ」
お礼を言われて、言葉通りなんてことないという顔をしているが尻尾がゆらりと揺れるのがみえた。かわいい。
他愛のない話をしながら食事をし、就寝の時間となった。人と、気を張らずにゆっくり話したのは久しぶりだったから楽しい時間だったなぁ。
結界石があるにしても夜番は必要なので、先手を買ってでた。深夜起きれる自信はないからね。
「一晩くらいなら俺が起きてても大丈夫なんだが」
耳が少し倒れてるのかわいい。何度でもいう。かわいい。
「あなた、あれだけの怪我をしたんだから休まないと。それから後始末とかご飯まで用意してもらって…。ほんとにありがとう。寧ろ私が一晩起きてられたらいいんだけど」
「いや、それは流石に申し訳ないしな。じゃあ、休ませてもらう。交代までよろしくな」
「うん。おやすみ」
徹夜も寝てる最中に起きるのも出来ないタイプなの。すまんな。
ぱちりと火がはぜる音を聴きながらぼんやりとこれからのことを考える。
なにがしか仕事を探さないと。森からでないで自給自足してもいいけど、領地問題もあるだろうしなぁ。
出来れば、町についたあともしばらくジゼルに取り入って色々学ばせてもらいたいところであるが、彼は承諾してくれるであろうか。
大型獣相手に健闘する強さとあの容姿だから彼女とか奥さんがいてもおかしくないし、そうであれば寄生は出来ない。
うだうだとひとりで考えていてもどうにもならないことだから埒が明かないわ。
町につく前に確認してみよう。
と、思考を別のことに切り替える。
仕事を探すとはいっても元の世界に戻ることはないのかと疑問を浮かべる人もいるだろう。
この件についてだが感覚的に「戻れない」とわかっているのでないだろうなー、と考えている。
そして、戻る手段を探すということも選択肢に入っていない。
なんでかって?
向こうに未練となるものがないからである。
家族は既に他界しているし、これといって仲の良い友人や同僚もいない。
彼氏?無しっていったよね?(圧)
私がいなくなったことでのあの世界での影響はないようだし。
チートの情報によると、なんか、そんな人がいたようないなかったようなって感覚になってるらしい。
所有していたマンションの1室はあちらから切り離されて、向こうでは普通に空っぽの貸家として運用され、こちらではわたしの「ルーム」というスキルで使用できるようになっている。まだ一度も確認したことはないけれどもね。
あっちに戻らないとという気持ちにならないのはチートのせいで、その思いを抱かないようにされている可能性は大いにあるが別にかまわんかなぁと考えてる次第。
そんなふわっとした感じで考えながらぼーっと焚き火を眺めていたら、案外時は過ぎていた模様。
ジゼルに声をかけて(起こす前に小回復をかけた)交代し、睡眠タイム。ぐぅ。




