闇の体現者(1)
闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。
これは、その中でも最強と謳われた1人の殺し屋と仲間達の終わりの物語。
乱戦の様相を呈し始めた黒龍とのラウンド2。その開始を知らせる合図代わりに、ある音がその場にいた全員の耳に届いた。
ドクン
あまりにも突拍子もないタイミングで聞こえてきたその音に、影部隊や助っ人らのみならず、省略の力を発動しようとしていた黒龍もピタリと動きを止める。
「なんだ? 今の音は」
ドクン…………ドクン…………ドクン……ドクン……
徐々にテンポとボリュームが上がっていく。
「これって……鼓動?」
「こんな大音量で……いったいどこから?」
音の発生源はどこだ? 全員が耳を頼りに辺りを見渡す。
すると、ある一点からしていることを突き止め、全員がそこを注視する。
そこにあったのは、未だ呼吸もできずに苦しんでいる黒猫の体のみ。見ると、鼓動音に合わせて体が脈打っているようだ。
「柚……?」
「あいつ、何を?」
奏がそう言ってる間にも、音はどんどん早く大きくなっていく。
ドクン……ドクン……ドクン……ドクン、ドクン、ドクン、ドクン、ドクンドクンドクンドクン、ドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドク………………
やがて、音はピターッと止み、辺りを静寂が包み込む。
ただならぬ静けさに、皆、安堵するどころか、不安と危機感を募らせた。中には影や奏、緋蘭のように、身震いを起こし、微動だにできない者までいる。
黒猫に何が起きている? 皆が固唾を呑み、見守っていると、突然、彼女の体から黒い何かが発せられ、静寂ごと全てを呑み込んだ。人も街灯も星の光も、全て。
その何かは、とても形容しがたいものであったが、一言で言うなら『闇』そのものである。
「な、なんだ!? これは!?」
「柚! みんな! どこ!?」
全てを遮る闇に呑まれて、両陣営はパニックを起こす。
その中でペガサスは、自らの光で周囲を照らそうとするが、ことごとくかき消されていってしまう。ヘタをすると、天使である自分も消滅しかねない。それぐらい闇の濃度が濃かった。
こんな常識外れの闇を放出した彼女の身にいったい何が? 誰よりも冷静に状況を分析していたペガサスは、ある結論に達した。
黒猫の願いは届きました。この闇が彼女に何を齎すのかとくとご覧ください。




