夜王(3)
闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。
これは、その中でも最強と謳われた1人の殺し屋と仲間達の終わりの物語。
そんな本家本元とも言える力を、よりにもよってあの男が得たのだ。
「ご名答。流石は天使ペガサス。見事と言っておこう」
「それはどうも。と言っても、あなたのことだ。能力が何かまでは明かすつもりはないんでしょう?」
「いや、問題ない。ここまでやった以上、いずれバレるし、バレたところで対処できる代物じゃない」
そう言った直後、黒龍はペガサスの背後に瞬間移動し、彼を突きまくった。
寸前に張ったバリアのおかげで無傷で済んだが、彼の手には、さっきまで持っていなかった十手が握られている。
「俺のミュータント能力の名は省略。過程を省き、結果のみを与える力だ」
それを聞いて、全員が納得すると同時に、戦慄した。
彼は、茅のところに『行く』という動作を省き、『着いた』という結果を残したことで瞬間移動したり、『攻撃動作』という過程を省いて『ダメージ』という結果を与えたことで、究極のノーモーションアタックを実現していたのである。
それだけではない。自然治癒のデミ・ミュータント能力も省略の力と併用すれば、一瞬にして完治する。それはすなわち、よしんば手傷を負わせても、瞬時に回復されてしまうということだ。
「冗談じゃねぇ……こいつ、化け物か?」
「弱ったな。省略なんかされたら、俺の柔はもちろん、チャカも刃物も通用しねぇじゃねぇか」
省略能力の恐ろしさに直面し、助っ人や獅子らは戦意喪失する。
「くくく、悍ましいだろう? 少年。これが君とは違う、俺の異形の強さだ」
「……それでも、やるしかないんです。あなたを放置しておくわけにはいきませんから」
そう言って青龍はツインドラコスラッシャーを構える。ここで彼を倒さなければ、柚も奏も仲間も守れないからだ。
そんな彼のやる気に当てられたのか、朱雀達も前に出る。
「……獅子。それとユニコーンさんと白虎君は影の相手をお願い。黒猫は奏さんを守って」
「玄武……」
「青龍君と朱雀さんは彼を集中攻撃。鳳凰さんとペガサス君は2人を援護。多分だけど、省略能力を攻略するには、彼の動きを先読みして、超高速の一撃を叩き込むしかない」
「だね。加えて硬化能力をぶち破るとなると、レーザーか僕や青龍君の人智を超えた力を使わざるを得ないだろう」
「ま、それしかないわな。おっしゃ! 牽制役はうちと玄武に任しとき! あんたらはあのボスドラゴンをぶちのめせ!」
そう言ってすぐ、青龍らは頷き、黒龍に襲いかかる。
それでもなお、黒龍は余裕の態度を崩さない。
とうとう黒龍がその真の力を解放しました。
これまで様々な特殊能力が出てきましたが、省略ほど戦闘に特化した凶悪な能力は存在しないでしょう。
なにせ、『攻撃動作』を省くということは、回避や防御が意味を為さない必殺の一撃を、一瞬にして直撃させることができるということですから。
ある種暗殺にも大規模戦闘にも向いている万能な能力です。




