夜王(2)
闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。
これは、その中でも最強と謳われた1人の殺し屋と仲間達の終わりの物語。
さっきまで袋叩きにしていた相手が消えたことに、敵も味方も何が起こったのかわからず当惑する。
いったい黒龍はどこに? そう思っていると、当の本人が夜空から姿を現し、着地した。
首が折れ絶命した茅をその手に掴み、地べたに叩きつけながら。
「茅ちゃん! 黒龍さん……あなたって人はっ!」
「こいつがスパイとして戻ってきたことは、見抜いていた。君らと結託して殺そうとしていたこともな。だから、あえて泳がせスキを作り、殺したというわけだ。裏切り者の……このバカをな」
そう言いながら、黒龍はもう死んでる茅の頭を踏みにじった。
これには青龍も、怒りを露わにする。
「バカはどっちですか! 彼女はあなたの部下であり、仲間でしょう!? なのに、たった1回の裏切りでまだ12歳の子を殺すなんてっ!」
「その1回が、組織にとっては致命的となる。そもそも、裏切るこいつが悪い」
「黒龍さん……あなただけはーっ!」
そう言って青龍は怒りに任せて、ツインドラコスラッシャーを振ろうとしたが、それより先に、火薬掌とスタンガンブーツとガングローブによる連続攻撃をくらった。
続いて、白虎とユニコーンが同時に殴りかかるが、2人も拳やトンファーによる反撃に遭い、殴り飛ばされてしまう。
驚くべきことに、これらの攻撃は、黒龍がその場から動くことなく一瞬にして行われている。
「龍さん!」
「がはっ! ちょっ、これ、どうなってんすか!? あいつ、いったい何を!?」
訳がわからず、面を食らう青龍達に対し、黒龍は嘲笑しながら、
「前にも言ったはずだぞ? 少年。『敵に手の内全てを見せるバカはいない』と。それとも、昔すぎて忘れたか?」
と、得意げな態度をとる。
何がどうなっているのか? 誰もが困惑する中、その答えに真っ先に気付いたのは、冷静に黒龍を観察し、分析していた彼だった。
「まさか、別のデミ・ミュータント能力を隠し持っていたとでも?」
「……違うよ武文君。あの芸当は、最早人の領域を遥かに凌駕している」
「どういうこと? ペガサス君」
「おそらくあれは……ミュータント能力だ」
そのワードに青山夫妻や緋蘭らはキョトンとしたが、一方で、青龍の過去を知る者達には聞き覚えがあった。
デミ・ミュータントは、あくまで人の能力を最大限まで強化した存在であり、その特性上、天変地異や因果、時空を操るような人間離れした力を得ることは基本的に無い。
だが、ミュータントは違う。名前こそ由来となっているが、遺伝子操作によってではなく、先天的または1度死んで復活することによってごく稀に身につくものであり、その力はデミ・ミュータント以上に超常的なものが多い。時間停止や不老不死、運命操作等がそれである。
叶教授夫妻は、何かのきっかけでミュータントの存在を知り、それにあやかって自身らが生み出した人工的な特殊能力者をデミ・ミュータントと呼ぶようにしたのでしょう。




