命を賭して(2)
闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。
これは、その中でも最強と謳われた1人の殺し屋と仲間達の終わりの物語。
「……そうだな。朔馬…………私も同意見です。柚様は今、1人の少女として生きようとしているのです。黒龍さん。いくらあなたといえども、その邪魔だけはさせません!」
黒蛇は朔馬に感化されてそう言うと、ヒドラを鞘から抜き、その切っ先を黒龍に向けた。
初めての反抗と迷い。決死の覚悟と絶対的忠義心。様々な想いが入り交じった剣を手に、黒蛇は対峙するが、向けられている本人に動じている様子など微塵もない。むしろ、そんな黒蛇の心境をバカにしているようにも見えた。
「ほう。この俺に歯向かうとは、いったいいつからそんな身の程知らずの自信家になったんだ? 2人共、よっぽど死にたいようだな」
「何とでも言ってください。我らの主は柚様です! 柚様の為ならこの命、惜しくありませんっ!」
「フッ、ならば、お望み通り、忠義に殉じさせてやろう。さぁ、かかってこい」
そう言って黒龍は首をゴキゴキと鳴らし、受けて立つ姿勢を見せた。
おそらく、黒龍に勝てる確率など万に一つも無い。己の死期を悟った黒蛇は、このことを死獣神に伝える役目を朔馬と茅に任せ、自分は2人を逃がすため、殿を買って出た。
当然、2人がそれをすんなりと受け入れるはずがない。考え直すよう食い下がるが、黒蛇の覚悟はとうに決まっている。
「早く行けっ! でないと、全てが手遅れになるかもしれない」
「黒蛇さん……」
「安心してくれ。2人が逃げる時間ぐらいは、死ぬ気で稼いでみせる」
ここまで言われたら、頷く他ない。朔馬と茅は、黒蛇に同調した影達の援護を受けてその場から離脱した。
これで望みは託された。思い残すことがなくなった黒蛇は、安堵の笑みを浮かべた後、
「頼んだよ2人共。柚様、お達者で。どうか、お幸せに……いきますよ。黒龍さん! はーっ!」
と言って、全身全霊の力を込めた一突きをした。
こうして空が白んでいく中、ブラック・ナイトは黒龍派と黒蛇派に二分され、内部抗争へと発展したが、黒蛇が2人と合流することはついになかった……
最期まで柚のために生きた忠義の男・黒蛇。
彼の生き様には最大限の敬意と賞賛をすべきでしょう。




