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死獣神~死の書~  作者: 天馬光
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命を賭して(1)

 闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。

 これは、その中でも最強と謳われた1人の殺し屋と仲間達の終わりの物語。

 それはまさに、青天の霹靂だった。

 平成19年3月3日早朝。柚のコピー上限を20に上げる施術をしていた未来から呼び出された死獣神メンバーが彼女の家で目にしたのは、俯く茅と、銃弾を何発も浴びて瀕死の重傷を負っている朔馬の姿だった。

 痴話喧嘩にしてはあまりにも度が過ぎている。いったい何があったのか。龍達は隣の部屋で澪が朔馬の治療をしている間に、リビングで茅から事情を聞くことにした。



 およそ1時間ほど前。茅達ブラック・ナイトの構成員達は、いつものようにまだ夜も明けていない内から、本部で朝礼をしていた。

 報告や連絡事項もそこそこに、黒蛇からの訓示が始まると、皆が真剣に聞く中、朔馬だけは眠気を堪えきれず、大きな欠伸をする。これが終わったら訓練をサボって二度寝をしよう。そう心に誓っていた。

 それを察知した茅は、放電準備を整えていたが、朝礼が終わりにさしかかったその時、あ(・)る(・)男(・)が現れたことで、その場にいた全員の眠気が吹っ飛んだ。


「ずいぶん司令役が板についてきたようだな。黒蛇」

 その声の主が、7年前に死んだはずの黒龍だったからである。


 何故彼が生きているのか。そのからくりが気になる黒蛇達の様子など無視して、黒龍は全員の横を通り過ぎながら顔を見渡し、黒蛇に疑問をぶつけた。


「黒蛇。蠍の姿が見えないようだが?」


「柚様のこと、ですか?」


「他に誰がいる? 俺に憧れを抱いているはずのあいつが、この場にいないのはどういう訳だ? 何か任務でも与えているのか?」

 かつての主からの質問に、黒蛇は言葉を詰まらせた。


 無理もない。黒龍に尊敬と憧憬の念を抱いていたあの柚を、自分の独断でクビにしたなど、口が裂けても言えるわけがない。

 かといって、出向扱いや変な嘘をついたところで、黒龍に見破られるのは必至。直接本人から確認をとるという名目で、彼女をここに呼び戻すことになったら、その瞬間、柚の1人の女性としての幸せが閉ざされてしまう可能性が極めて高い。


 どう転んでも最悪の結果に繋がりかねない。答えに悩む黒蛇が沈黙を続けていると、どこからか、


「……あんたに、教える筋合いはありません……」

 という声が聞こえてきた。

 黒龍に逆らった命知らずは誰だ? 影達が大バカ者の正体を知ろうと一斉にその方向を向くと、そこには、鋭刃十手を構えた朔馬がいた。


「どういうつもりだ? 朔馬」


「どうもこうもないっすよ。柚姉ぇの未来のために、あんたと柚姉ぇを会わせるわけにはいきません!」

 そう言う朔馬の姿を見て、黒蛇達大人は気付かされた。自分達よりよっぽどこの少年の方が勇気があり、柚のことを第一に考えていると。

 そうだ。柚のために今できることは、彼女を黒龍に差し出すことではない。その要求が柚の身に降りかかる前に、自分達が拒否することだ。

 まさかの展開から始まった『死獣神~死の書~』最終章。

 物語はここから終わりの物語へと向かっていきます。

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