白黒(4)
闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。
これは、その中でも最強と謳われた1人の殺し屋と仲間達の終わりの物語。
初めて龍の本心を聞かされた澪達は、自らの浅ましさを痛感した。
『優柔不断』や『5股』と言われることを覚悟の上で、全員を愛すると決めた他人第一の彼に対し、自分達は彼の気持ちなどお構いなしに、最初からハーレムという選択肢を排除して、本命の座を争ってきた。
日本人としてはそれで普通なのだろうが、恋は正道ばかりではない。龍がしようとしている複数人との交際や、不倫、近親や教師との恋等といった邪道の恋もある。それで迷惑する者もいるかもしれないが、純粋かつ誠実な想いがあるのなら、それはもう純愛と呼んでもいいのではないだろうか?
ましてや相手は殺し屋。裏社会に生きる者を愛している以上、そんな些細なことを気にしてどうする。
とどのつまり、彼女達は心も視野も狭かったのだ。
「ごめん。困らせるようなこと言っちゃったね。でも、それでも、みんなから1人を選ぶなんてできないんだ。みんなのことが等しく好きだから……」
「龍君……」
「だから、その……こんな僕で良ければ、付き合ってください」
そう言って、龍は再び頭を下げ、全員との交際を申し出た。
無論、断られるのも覚悟の上で、龍は告白している。5人に言って、1人でも頷いてくれれば、それだけで御の字。それぐらい、自分でも非常識なことを言ってることは、重々理解している。
しかし、それは杞憂だった。彼女達の返答は、直後の一斉ハグの時点で決まっていたのだから。
「うわっ!」
「もちろん! こんな私でよければ喜んで!」
「ははは。5人同時に言われると、なんだか嬉しいな。みんな、これからはいがみ合わずに仲良く、ね。約束だよ」
無垢な少年のような笑みでそう言うと、龍は指切りげんまんで約束を交わそうと、小指を立てた。
確かに、約束という点で言えばお決まりのやり方ではあるが、この状況下でやるにはあまりにも幼稚すぎる。一様にやれやれと肩を竦めると、未来が彼の手を上から押さえて下ろし、
「それは、流石に子供じみてるよ。龍君」
「そうね。どうせ同じ誓いをするのなら……」
と、柚が言って、彼女がアイコンタクトをすると、5人一斉に龍の顔にキスをした。
「こっちの方が、恋人らしくていいでしょ?」
彼女達からの不意打ちのキスを受け、龍は一瞬にして赤面し、嬉しさと気恥ずかしさから、
「あう~……」
と、情けない声を漏らした。
初々しすぎる反応に、愛らしく感じた奏達は、改めてギュッと抱きつき、恋人らしくイチャつき始める。
誰にも邪魔されない空間をしっぽりと満喫する6人。恋が成就したからなのか、心なしかお湯がほんのりと温かくなった気がしただけでなく、目の前の景色も愛する者達と一緒に見ると、また違って見えてくる。
好きな人と一緒に見れば、世界も違って見える。
我ながら少しベタな表現ではありますが、ともかく今は、彼らを祝福するとしましょう。




