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死獣神~死の書~  作者: 天馬光
60/110

白黒(3)

 闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。

 これは、その中でも最強と謳われた1人の殺し屋と仲間達の終わりの物語。

 まず、第一声で口にしたのは、恋心を殺し続けてきたことに対する謝罪の言葉。男のケジメとして、こればっかりは避けては通れない。

 頭を下げた彼は、先程深く反省し、自分と向き合ってきたと語り、自らの気持ちを伝えた。それは……


「……こんなこと言ったら、また『優柔不断』だって言われそうけど、この中から1人なんて選べっこない。いや、正確には選びたくないよ」

 誰か1人を選ぶのではなく、みんなまとめて愛するという今までの延長線上のような答えだった。

 謝罪に続いての予想外の回答に、面を食らう未来達。その気持ちを察しながら、龍は1人1人に対してどこが好きなのか、面と向かって述べていった。


 澪は、意地っ張りで龍を独占したいがために、陰湿で独り善がりな行動をとってしまう。

 その一方で、彼女には優しさと品の良さもあり、好意をストレートにぶつけてくる一途さも兼ね備えている。

 そんな彼女との同居生活は、多少の補助はあれど全く苦ではなく、何より1人で住んでいた時より居心地がいい。

 こんな日々が続けばいい。そう思えるほど、龍は彼女を愛している。


 奏が異性として好きだと告白してくれたのは今日が初めてだ。

 だが、今にして思えば、彼女の明るくて負けん気が強く、社交的なところに龍は憧れを抱いていたのかもしれない。でなければあの時、あそこまで彼女の将来を案じることはなかっただろうから。

 そして、弟としての憧憬の念はやがて、年月を経るごとに異性としての好意に変わっていき、今日の告白で恋心へと変化した。今ならはっきりと言える。彼女に幸せな人生を奏でさせることができるのは自分しかいないと。

 それほどまでに龍は弟としてではなく、異性として彼女のことを愛している。


 雲雀は、この稼業をして初めてできた相棒だ。

 時に理不尽で、時に暴力的なだけに、澪や柚と同じくらい厄介だが、それでも自分と違い、果断即決でムードメーカーな彼女は、公私共にパートナーとして頼れる存在となっている。

 自分に無いところを多く持つ者に惹かれるのは必定。人志との一件で知ったのなら尚更だ。

 故に、龍は彼女を愛している。


 柚は、いわゆる一目惚れした相手だった。

 本性を現してからの彼女とは色々あったが、復讐が終わってからは、一目惚れや似た者同士というアドバンテージもあり、好意が一気に加速した。

 もう黒蛇との約束は関係ない。1人の人間として柚の寂しさを埋める存在となった龍は、1人の男として彼女を心から愛している。


 龍にとって初恋の相手。それは言うまでもなく未来だ。

 優しくて献身的で、芯も強い彼女は常に正しく、まさに聖女と言っても過言ではない。

 だからこそ、殺し屋であり、過失とはいえ1度手にかけてしまった自分に、彼女を愛する資格はあるのだろうか? もしかしたら、彼女にはもっと相応しい人物がいるのでは? そういった負い目や苦悩が鎖となり、恋心を殺していた要因の1つとなっていた。

 しかし、自身を見つめ直した今、彼を縛るものはない。こんな自分でも愛してくれているのなら、彼女の気持ちを無下にしてはならないし、未だ変わらぬ初恋の気持ちに嘘をつくべきではない。

 だから、今なら声を大にして言える。誰よりも彼女を愛している、と。


 彼女達がいたから今の自分がある。彼女達との騒がしい日常があるから、自分は人の心を取り戻せた。なのに、1人を選んで残りを切り捨てるなどできるはずがない。

 幸せにすると決めたら、愛してくれている者全てを等しく愛し、幸せにする。青山龍とはそういう男なのである。

 これが他人第一である龍が出した答え。

 優柔不断や邪道と非難されることになろうと、彼女達と真摯に向き合い、愛を貫こうとする。

 僕はこういう愛の形もアリだと思います。

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