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死獣神~死の書~  作者: 天馬光
59/110

白黒(2)

 闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。

 これは、その中でも最強と謳われた1人の殺し屋と仲間達の終わりの物語。

 意を決し、それを口にしかけたその時、入り口の引き戸がガラガラと音を立てて、誰かが入ってきた。その人物とは……


「はぁ……やーっぱ抜け駆けしとったか。万年発情変態ドアホ猫」


「あ、雲雀さん達。遅かったね」

 そう。雲雀である。正確に言えば彼女だけじゃない。龍の恋人候補も全員集合していた。

 ノリのいい雲雀や奏、共同生活をしている澪が乱入してくるのは、まだ予想できたとしても、1番の常識人であるはずの未来まで一緒にいるのは完全に想定外。彼女達の一糸まとわぬ姿を前に、龍は度肝を抜かれた。


「み、みんな! どうしてここに!?」


「どうしてって……ここ、家族風呂だよ」

 未来からネタバラシされたことで、龍の中で全てが1本の線となって繋がった。


 先回りして看板を外してまで、家族風呂だということを徹底的に隠し、龍達をここに来るよう誘導する。そんなことをするのは翔馬しかいない。

 無論、動機は龍を巡る恋のバトルに終止符を打つため。しっかりとケジメをつけた後で思う存分イチャイチャできるようお膳立てした彼は、今も協力者である瞳と朋美、興味本位でついてきた武文や朔馬ら旅の仲間達と共に、脱衣所手前の引き戸から恋の行方を見守っている。


 とはいえ、好意を寄せられている女子全員が素っ裸で囲むというこの状況に、ウブな龍が耐えられるわけがない。そそくさと家族風呂を後にしようとするが、そうは問屋が卸さない。雲雀と奏が龍の二の腕を掴み、逃げるのを阻止する。


「ちょう待て! あんた、こんなべっぴんと混浴できんのに、それでも男か?」


「いや、それは、その……」


「意気地なしですね」

 狼狽える龍に向かって放たれた澪の言葉のナイフが、彼の心を深く抉る。


「だね。せっかく未来まで勇気を振り絞って脱いだってのに、ここであんたが逃げたら、私らの立場はどうなんの? ねぇ? 未来」

 そう振られ、未来は恥ずかしそうに視線を逸らす。


「で、どないすんの?」

 追い詰められた男に選択の余地など無い。龍が女性陣の圧に屈し頷くと、澪達は遠慮無く湯船に浸かり、あっという間に彼を包囲した。


 それでも龍はまだ、僅かばかりではあるが、抵抗を続けていた。できるだけ柚達を視界に入れずに景色を楽しむことで、気持ちを落ち着かせつつ、前後左右からくるアプローチをやり過ごそうとしているのだ。もっとも……


「コラッ!」

 という奏の声と共に、彼女達の胸やら肌やらを全身に押しつけられたことで、それが無駄だとすぐに思い知らされるのだが。


 逃げ場の無いスキンシップの包囲網。どうすることもできなくなくなった龍に、奏は今回の本題とも言える話題を投げかけた。


「あ、そうだ。いい機会だし、この場ではっきりさせようよ」


「へ? 何を?」


「龍が誰のことを1番愛してるか、だよ」

 奏の提案に、女子達は乗り気になり、皆、賛成した。

 彼女達としても、この不毛な争いにいい加減飽き飽きしており、一刻も早く終わらせたいのだろう。でなければ、ここまで大胆なことはしない。


「えーっと、ちなみに聞くけど……僕の意見は?」


「あるわけ無いじゃん。多数決に従いなさい」

 もう慣れたとはいえ、一方的な決定を下され、龍はガックリと肩を落とした。


「そういう訳なんで、龍さん。聞かせてください。結婚相手にするなら誰がいいのか」

 澪に尋ねられ退路を失った龍に、未来達は真剣な眼差しを向け、彼の回答に注目する。

 そんな彼女達を前にし、改めて覚悟を決めた龍は、一度深呼吸して平常心を取り戻してから、自分の本心を伝えた。

 大きなお世話とはいえ、舞台は整いました。

 いざ、告白の時間です。

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