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死獣神~死の書~  作者: 天馬光
58/110

白黒(1)

 闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。

 これは、その中でも最強と謳われた1人の殺し屋と仲間達の終わりの物語。

 一方、手を振る彼女らに見送られた龍は、決意を胸にフロントで使用予約を取り、例の露天風呂に入った。

 気がかりなのは、何故か露天風呂の看板が外されていたこと。十中八九翔馬の仕業だとは思うが、それを気にしていたら、折角の決心が鈍る。そう考えた龍は、軽く警戒だけしながら、手前の脱衣所で服を脱ぎ、風呂へと続く引き戸を開けた。


 そこに広がっていたのは、白く美しい世界。目の前には雄大な山々が聳え立ち、まるで粉砂糖を振りかけたような雪が山肌に積もっている。

 まさに絵画のようなその光景に龍は感動し、思わず声を上げた。


「うわー! すごい。まさかここまでとは思わなかったな。翔馬君に感謝しないと」

 そう言うと、龍は掛け湯をし、大浴場よりこじんまりとした浴槽にゆっくりと浸かった。この上ない湯の快感が全身を駆け巡り、自然とため息が漏れる。極楽極楽とはこのことであろう。


 そんな至福のひと時が、突然終わりを告げた。度々感じたことのある股間の違和感によって。


(うっ……この感じ……握られてる……? いや、しごかれてる。こんなことするのって……)

 犯人の目星はついている。龍は温泉に手を突っ込み、犯人を抱き上げた。


「……やっぱり」


「むぅ。邪魔しないでよ。龍君」

 そこにいたのは、やはり柚だった。


「もしかして、僕が来るまでずっと待ってた?」


「うん。翔馬君からここに来るって、事前に聞いてたから。それで1時間ぐらい前から待ってたんだけど、いくらなんでも来るのが遅すぎ。危うくのぼせるところだったよ」


「あはは、それはごめん」

 龍は条件反射で謝ったが、よくよく考えるとこちらに非や過失は一切無い。もし仮に、彼女の言うとおりのぼせて倒れてたとしても、それは自業自得からくる自爆であり、自分のせいではない。


 そう思いはしたものの、ここで下手に責めたら彼女の機嫌が余計に悪くなると直感した龍は、その気持ちをグッと呑み込み、遅れた理由である朔馬らとの会話を話した。その際、彼女を傷付ける恐れのある自分の愛情のことは触れずに。

 それを聞き、朔馬の性格や思考をよく知る柚は納得してくれた。


「……そっか。なら、仕方ないね」


「そう言うってことは、わかってたんだ。朔馬君の気持ち」

 龍の言葉に、柚は首を縦に振った。


「でも、サク君には悪いけど、その気持ちには応えられない」


「どうして?」


「確かに私にとって、サク君は苦楽を共にした大切な人。多分そこは、一生変わらない。けどそれは、あくまで弟分としての話。同じ『好き』でも、異性としての『好き』とは意味が違う。それに……」

 そう言って柚は、龍に寄り添い、


「今の私は、龍君にぞっこんだから。誰に言い寄られても、靡かないよ」

 温泉によるものか、はたまた恋心からくるものなのか、柚の顔がほのかに紅潮している。

 その艶っぽい顔に心を奪われた龍の胸に、柚から発せられた真っ直ぐかつ愛に満ちた言葉が、矢となって突き刺さった。

 かつて復讐心を抱いていた少女が、こんなにも自分のことを愛してくれている。いや、彼女だけじゃない。きっとこの場にいない他の4人も、柚と同様の方法と告白をするはずだ。


 ならば、そこまで愛してくれている彼女達の想いを真正面から受け止めず、恋心を殺してきた自分ができることは、いったい何だろうか?

 その答えは、ここに来る前に決まっていた。

 全裸待機ならぬ入浴待機。安定の変態っぷりをみせつけてくれました。よい子はマネしないように。

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