殺し続けた感情(5)
闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。
これは、その中でも最強と謳われた1人の殺し屋と仲間達の終わりの物語。
その戦いの行方も気になるが、今は龍の過ちから正していかなければならない。その為にもと、シュバルツは感情的になる朔馬を抑え、彼の代わりに茅が理論立てて意見した。
柚達が好きな人から愛されていないと知れば、一種の自己嫌悪に陥りかねない。それだけでも、十分柚達の心を傷付けることになる。同じ女だから茅もそこのところはよくわかる。
仮にそうでなくても、人を愛せない者が誰かを幸せにすることなどできない。
結局のところ、龍がやってることは、己に罰を課してるように見えて、実際はただ逃げてるだけであり、彼自身の罪を消すことにはならない。
そのことを年下の少女諫められ、気付かされた龍は、自身の行いを猛省した。
「あ、すみません。たかが12歳の小娘が生意気なことを言って」
「……ううん。君の言うとおりだ。逃げても、何も解決しない。僕が本当にすべき償いは、幸せから逃げることじゃない。殺した人達の分まで幸せに生きることだった。そういうことだよね?」
龍がそう問いかけると、翔馬達は頷き、朔馬も面白くなさげではあるが、同意した。
「そのためにもまずは、自分を殺すことからやめよ。あんた自身が自分の心に素直になって、あいつらの中の誰かを愛してやらないと、この問題は永遠に終わらない。そうなったら、誰も幸せになれないよ」
「そうだね。わかったよ、早乙女さん。ちゃんと嘘偽りなく伝えてくる。僕が蔑ろにしてきた僕の本心を」
「そうしろ」
恋の先輩である2人に背中を押され、龍の決意は固まった。そうだ。今日こそ自分の本心を伝えなければ。そして、意中の相手をこの手で幸せにしてみせる、と。
龍は瞳らに礼を言うと、教えてもらった露天風呂へと足早に向かっていった。
その背をシュバルツらと共に見送ると、瞳は朔馬の方を向き直し、
「それはそうと……朔馬」
「何すか?」
「人生と恋の先輩として言わせてもらうけど、さっきの言葉、周りをよく見てから言うべきだったよ」
意味がわからない朔馬はキョトンとするが、瞳は彼の反応など気にせず一瞥する。その視線の先にいたのは朔馬ではなく、複雑な表情を浮かべる茅だった。
龍はようやく自分を殺すことをやめました。
その彼が自分の意思でいったい誰を選ぶのか。ラブストーリーのゴールがいよいよ見えてきました。




