剛の拳 柔の技(7)
闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。
これは、その中でも最強と謳われた1人の殺し屋と仲間達の終わりの物語。
それから2日後の平成18年12月22日。治療を受けたことで回復し、やっと意識を取り戻した大牙は、寝起きでぼやけた目で時間を確認した。
午後5時。帰りの便の時間までもう時間がない。焦った大牙はベッドから飛び起き、十三の車で急いで空港へと向かった。
その車内には依頼者である帝虎と紅花も同乗しており、彼を見送ろうと空港ロビーまで同行していた。
「今回は助かった。感謝するぞ。白虎」
「いやぁ、それほどでも。あ、できれば……」
「わかっておる。緋蘭には黙っておく。恩人を売るようなマネなど絶対にせん。約束しよう」
それを聞いて安心した大牙は、帝虎に礼を述べ、搭乗口へと向かおうとした。
その足を十三が呼び止める。
「大牙。お前はいい格闘家であり、漢だ。俺が保証する」
「柔のオッサン……」
「その上で頼みがあるんだが、俺に白虎流護皇死神拳の『柔』に通じる部分を教えてくれ。時間がないなら、口頭でも構わない」
相棒だった男からの突然の申し出に、大牙は一瞬嬉しく思った。格闘家として認めてくれただけでなく、自分の技を心から求めてくれているのだから。
しかし、彼はすぐに思い直し、首を横に振った。
その理由は2つ。1つは自分がこの世に不必要になった拳法である白虎流護皇死神拳の最終継承者であり、今後誰にも継がせる気がないこと。
もう1つは、十三が望んだ『柔』の道は、人殺しの道ではなく、あくまで殺さずの道。その道を追求する者に、白虎流護皇死神は必要ないのである。
その説明を受け、納得した十三は、自らの願いを諦めた。
「……それもそうだな。すまない。忘れてくれ」
「それがいいっす。その代わりと言っちゃなんですが、俺は忘れません。あんたのことも、あんたから教わったことも、全て」
そう言って2人は再会を誓い、固い握手を交わした。
考え方や正確に大きな違いはあれど、格闘家としての相性はなかなかいい。
龍とは違った最高のパートナーを彼はみつけたと思います。




