ガールズトーク(4)
闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。
これは、その中でも最強と謳われた1人の殺し屋と仲間達の終わりの物語。
大牙という尊い犠牲を払った2人は、その後、何事もなかったかのように会話しながら、街を散策する。
唯一、彼に救いがあるとすれば、それを話のネタにされていることと、未来に同情されていることぐらいだろう。
「大牙君。災難だね」
そう言ってすぐ、未来はあることを思い出し、
「……あ、そういえば柚さん。例の動画のことなんだけど……」
と、恐る恐る口にした。
本日2度目の地雷。柚の怒りに満ちた視線が未来に向けられる。
「あなたもそのことを蒸し返す気?」
「そ、そんなつもりはないよ」
「じゃあ、何?」
ご機嫌斜めな柚からそう聞かれた未来は、昨夜帰ってすぐ、愛花のパソコンにハッキングし、ネット上に散らばっていた例の動画を全て削除したことを報告した。
忌々しい恥動画が、この世にもう存在しない。その事実に柚の機嫌は一転し、無垢な少女のように喜ぶ。
「ありがとう! 未来さん」
無邪気な笑顔で感謝を伝える彼女を見て、未来もやった甲斐があったと微笑む。麗しい友情がそこにはあった。
ただ、1つ気になることもある。善人の未来がハッカー相手とはいえ、良心の呵責もなくハッキングという犯罪行為をした理由だ。
「でも、よかったの? 犯罪でしょ?」
「確かにそうだけど、友達のためにやったことだし、龍君の道を歪めて殺し屋にしてしまった以上、私も犯罪者みたいなものだから」
「そんなことないよ。未来さんが犯罪者なわけ……」
「ううん。法律ではそうかもしれないけど、友達を犯罪者にして、黙認している時点で、私も共犯。龍君や柚さん達と何も変わらないよ」
それを聞いて、柚は悟った。彼女も龍に対する過去の負い目から、自分を殺しているのだと。
自分を殺しているから、犯罪者と同類だと思ってハッキングまでするし、負い目を感じているから、恋愛でも我を通して自由に幸せに生きることを避け、一歩引いている。
彼女の献身や恋愛の姿勢等は全て、そこに起因していたのだ。
しかしそれは、到底容認できるものではない。柚は彼女の自己犠牲を否定した。
「全然違うよ。未来さんは、私達と違って犯罪者じゃない。どちらかと言えば聖女よ。私達の過ちを何度も正してくれたんだから」
「そう、かな?」
「うん。そんなあなたが、自分を殺して不幸に生きるなんて間違ってる。寧ろ、未来さんこそ自分に正直に生きるべきだよ。恋も人生も、ね」
『自分に正直に』その一言のおかげで、未来の心は救われた。きっと、似た者同士である龍も同じようなことを言うはず。そう思うと、親友と想い人から背中を押されているみたいで、肩の荷がスッと下りた気がする。
「……わかった。そうなれるよう努力してみる」
「それがいいよ」
そう言った後、2人は大牙と玄を待つ間、時間を潰そうと、カフェを探し始めた。
聖女のような未来でも自分を殺し、間違いを犯す。
それを正し、救えるのは、愛する存在と唯一無二の親友だけなのかもしれません。




