ペガサスの模倣犯(6)
闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。
これは、その中でも最強と謳われた1人の殺し屋と仲間達の終わりの物語。
こうなってはペガサスの独壇場。手始めに秘書達を風の刃とスレイブフェアリーで皆殺しにした彼は、怯える正治の妻と娘の前に移動し、命乞いを聞く間もなく瞬殺した。
「……さて、次は煌太君だ」
「す、すまねぇ! どうか許してくれっ! 模倣したこと謝る! 俺はただ、あんたのようになりたくて研究していただけなんだ! あんたのような一流の犯罪者に! 頼む! 見逃してくれたら何だってする! だから……!」
床に額を擦りつけるように土下座し、そう頼み込む煌太を前にしたペガサスは、風の刃を外して彼の肩に手を置くと、優しく微笑み、
「却下」
と、キッパリ断った。必死の命乞いを断られた煌太は、戸惑いと絶望の表情を浮かべていたが、ペガサスからすれば、至極当然の答えだった。
粗雑な犯行で品性と美学を汚されたのも理由の1つだが、彼の場合、ペガサスが何故犯行を重ねるのか丸っきり理解していないのが最大の要因だ。
ペガサスにとって殺人は、神様から与えられた使命である世界を浄化するための手段であり、我欲のために殺人をするそこらの殺人鬼なんかと一緒にされたくない。
それらを述べたペガサスは、続けて自らの持論を説いた。
「……あと、これもわかっていないようだから言わせてもらうけど、殺人者にはそれを為すために必要な要素が3つある。内2つは凶器と技量だから言うまでもないとして、もう1つ大事な要素があるんだ」
「何すか?」
「それは、どれだけイカレてるかだ。どんなに優れた武器や技量があっても、良心の呵責なんか感じてたら人は殺せない。いかに良心を無くすほどの狂気にかられるか。そこが殺人者にとって最も重要なんだ。ま、継続的にやろうと思ったら、多少の理性も必要だけどね。いずれにしても、憧憬の念から僕を研究し、親の為に人を殺してる時点で君はまとも。殺人者に向いていない」
憧れの人物からそう断言された煌太は、反論する気力さえ失ってしまった。
「とはいえ、僕を研究し、模倣した物好きは君が初めてだから、その努力には敬意を表さないと。そのためにも……」
そう言ってペガサスは、両手に光を集めて収束し、手を覆う光の刃を形成した。
「天国武術の1つ、天手剣で君の命を終わらせてあげるよ。人間相手にわざわざ光の力を使ってあげるんだ。光栄に思うといい。さ、始めるよ。まずは地雷閃の華麗な円舞を」
ペガサスはそう言うと、駒のように回転して切り刻んでいき、
「最後は天神剣の猛々しいソロを!」
と言いながら、2つの天手剣を合わせて作った特大の天手剣、煌太を縦に両断した。
「満足した? これが天手剣極奥義・天神斬だよ。おっと、ごめん。聞いても無駄だったか」
そう言ってペガサスは、皮肉な笑みを浮かべた。
『誕の書』の後書きでも触れた殺人者にとって大切な要素。その3つ目がイカレ度合いです。
僕はこれが1番重要だと思ってますし、こんな持論を説いているあたり、ペガサスほど作中でイカレている人物はいないでしょう。
特に、今のペガサスは。




