↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
7/10

7, 勇者のお披露目

 勇者召喚から半年。

 学園内の大広間には、沢山の生徒が集まり、料理や飲み物が置かれている。

 これから勇者を連れて、ニルドアと王族が入ってくる。そして、魔王を倒すためのパーティーメンバーを紹介するのだ。


 勇者のお披露目に1ヶ月使うのは、選ばれたパーティーメンバーは、自分がそのメンバー内であるとまだ知らず、今日知らされる。故に、特訓の期間を設けるためとも言える。


 「はあ…」


 ため息をつきつつ、ワインを口にする。

 一応既に成人年齢である16歳にはなっているが故だ。




 数十分後、階段を登った先にある大きな扉がゆっくりと開かれた。


 ざわめきと共に、王女と聖女に片腕を組まれ、とてつもなく幸せそうな顔をした男性が入ってくる。

 これがあの時召喚した勇者候補とか思いたくない。

 王子が一歩前に進み出て、


 「皆の者!今日より、勇者が完全な存在となった!改めて紹介しよう!我が国を助ける存在、勇者シュンだ!!」


 女生徒の歓声と共に、勇者が前に出る。

 鉄っぽい鎧に金の飾りやら宝石の飾りやらがされ、彼らの周りには小さな水や火の玉がくるくる回っている。


 「俺こそが、この国を守り魔王を倒す存在、シュンだ!!」


 その声が響いた後、数秒の間の後、また歓声が上がる。

 両手を女2人にホールドされてるからか、彼は笑顔になるだけで手をふり返す事はなかった。


 やがて、少し声が小さくなって来た所で、王子が目配せする。


 ニルドアは勇者から手を離し、一枚の紙を取り出した。


 「これより、勇者様に代わり私から、魔王討伐のパーティーメンバーを発表致します!! 皆様、静粛に!!」


 シン…となった広間に、声が響く。

 名前を呼ばれた者は、皆涙を流して喜んでいた。『魔王を討伐するほどの力量の証明』になるからだ。


 やがてニルドアは、遠くにいる私と、わざとらしく目を合わせた。


 「そして最後に…幼い頃、魔界へと迷い込み、無事に帰って来た過去を持つ私ニルドアとヴィオラを、パーティーメンバーとします」


 さっきまでお祝いムードだったのが、一気に凍る。

 二つの意味でだ。一つは私がパーティーメンバーであること。


 もう一つは…


 「ご安心ください!私もヴィオラも、何も悪くないのです!ただ、魔族に連れ去られて、気が付けば魔王城にいた…という記憶を持つのです。私は…ヴィオラが、あんな魔法を撃つのは、その魔族に何かされたせいだと、思っています」


 その言葉にまた空間がざわめく。

 私自身の目も、大きく開かれた。


 …コイツ、何を言ってるんだ?私が魔族に何かされた?寧ろした側なんだけどな…。

 あぁでも待てよ?あの契約に関してはされた側か?いやでも私は承認した上で契約したしな…その場合は"された"んじゃなく"した"んだし良くね?


 ふと前を見ると、ニルドアがテレポートで飛んできていた。

 彼女は私の手を握り、


 「ねぇっ、そうでしょヴィオラ。…ううん、答えなくていい。私はわかってるよ、魔族に思想を変えられたんでしょ。…私と勇者様なら、治せるよ」


 「っ…」


 これは…こんなことになるとは思ってなかった。

 どうする?どうすればいい?


 すると、階段上にいた勇者もまた、テレポートでこちらに来た。


 「ヴィオラ…さん。貴女が魔族に何かされたのは、ニルドアから聞いています。俺と共に来て、その呪いを解きましょう?」


 見事にこの世界の人間の思想に染まった彼は、必死なニルドアを惚けるように見ながら、私のことも見つめてくる。


 「…」


 いや…前向きに考えよう。

 コイツらは、私が魔族に思想を変えられたと信じている。呪われたと思っている。

 なら…


 「…ご心配、ありがとうございます」


 最大限利用する。


 「っ! なら、ヴィオラ!宜しくね!」


 「…うん」


 その身に知らせてやろう…魔族の美しさと、人間の愚鈍さを。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。