7, 勇者のお披露目
勇者召喚から半年。
学園内の大広間には、沢山の生徒が集まり、料理や飲み物が置かれている。
これから勇者を連れて、ニルドアと王族が入ってくる。そして、魔王を倒すためのパーティーメンバーを紹介するのだ。
勇者のお披露目に1ヶ月使うのは、選ばれたパーティーメンバーは、自分がそのメンバー内であるとまだ知らず、今日知らされる。故に、特訓の期間を設けるためとも言える。
「はあ…」
ため息をつきつつ、ワインを口にする。
一応既に成人年齢である16歳にはなっているが故だ。
数十分後、階段を登った先にある大きな扉がゆっくりと開かれた。
ざわめきと共に、王女と聖女に片腕を組まれ、とてつもなく幸せそうな顔をした男性が入ってくる。
これがあの時召喚した勇者候補とか思いたくない。
王子が一歩前に進み出て、
「皆の者!今日より、勇者が完全な存在となった!改めて紹介しよう!我が国を助ける存在、勇者シュンだ!!」
女生徒の歓声と共に、勇者が前に出る。
鉄っぽい鎧に金の飾りやら宝石の飾りやらがされ、彼らの周りには小さな水や火の玉がくるくる回っている。
「俺こそが、この国を守り魔王を倒す存在、シュンだ!!」
その声が響いた後、数秒の間の後、また歓声が上がる。
両手を女2人にホールドされてるからか、彼は笑顔になるだけで手をふり返す事はなかった。
やがて、少し声が小さくなって来た所で、王子が目配せする。
ニルドアは勇者から手を離し、一枚の紙を取り出した。
「これより、勇者様に代わり私から、魔王討伐のパーティーメンバーを発表致します!! 皆様、静粛に!!」
シン…となった広間に、声が響く。
名前を呼ばれた者は、皆涙を流して喜んでいた。『魔王を討伐するほどの力量の証明』になるからだ。
やがてニルドアは、遠くにいる私と、わざとらしく目を合わせた。
「そして最後に…幼い頃、魔界へと迷い込み、無事に帰って来た過去を持つ私ニルドアとヴィオラを、パーティーメンバーとします」
さっきまでお祝いムードだったのが、一気に凍る。
二つの意味でだ。一つは私がパーティーメンバーであること。
もう一つは…
「ご安心ください!私もヴィオラも、何も悪くないのです!ただ、魔族に連れ去られて、気が付けば魔王城にいた…という記憶を持つのです。私は…ヴィオラが、あんな魔法を撃つのは、その魔族に何かされたせいだと、思っています」
その言葉にまた空間がざわめく。
私自身の目も、大きく開かれた。
…コイツ、何を言ってるんだ?私が魔族に何かされた?寧ろした側なんだけどな…。
あぁでも待てよ?あの契約に関してはされた側か?いやでも私は承認した上で契約したしな…その場合は"された"んじゃなく"した"んだし良くね?
ふと前を見ると、ニルドアがテレポートで飛んできていた。
彼女は私の手を握り、
「ねぇっ、そうでしょヴィオラ。…ううん、答えなくていい。私はわかってるよ、魔族に思想を変えられたんでしょ。…私と勇者様なら、治せるよ」
「っ…」
これは…こんなことになるとは思ってなかった。
どうする?どうすればいい?
すると、階段上にいた勇者もまた、テレポートでこちらに来た。
「ヴィオラ…さん。貴女が魔族に何かされたのは、ニルドアから聞いています。俺と共に来て、その呪いを解きましょう?」
見事にこの世界の人間の思想に染まった彼は、必死なニルドアを惚けるように見ながら、私のことも見つめてくる。
「…」
いや…前向きに考えよう。
コイツらは、私が魔族に思想を変えられたと信じている。呪われたと思っている。
なら…
「…ご心配、ありがとうございます」
最大限利用する。
「っ! なら、ヴィオラ!宜しくね!」
「…うん」
その身に知らせてやろう…魔族の美しさと、人間の愚鈍さを。




