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3, 魔法とは

 「姫様、こんな場所でまた黄昏て…! と言うか、何回やればいいんですかこのやり取り…」


 青空の代わりに濁った赤い空が広がる、広大な庭。そこに、1人の女の子がいた。

 空を見上げて、黄昏ているのを咎められた彼女は、くるりと振り向く。ゆらりと、三つ編みにされた金と白が混ざり合った、不思議な髪が揺れた。


 「会いたいのですよ…ラヴィーに。でも…お母様はダメだって…」


 「それは…お聞きする限り、18歳になったら会う約束なのでしょう?それを破ってはいけませんよ、姫様」


 白髪をお団子にした女性は、優しげな声でそう言う。

 それでも、"姫様"と呼ばれた彼女は悲しげな目を浮かべたまま。


 「レヴィさんだって、ラヴィーを可愛がっていたではないですか! 何故、そんなにも飄々としてられるのです?」


 「飄々となどしていませんよ姫様」


 レヴィと呼ばれた女性は、自分の胸に手を置く。


 「わたくしやマーくんだって、会いたくてたまらないのです。でも、大人たるわたくし達が約束を破るなど、やってはいけませんわ」


 「む…」


 "姫様"は、その言葉を聞いて黙った。


 その数秒後、


 「でもぉ…レヴィさん、私とラヴィーはぁ…」


 「はいはい姫様!真名契約の話は後で聞きますから、魔法の勉強をしますよ! ラヴィーの隣に立てる者になると決めたのは姫でしょう?」


 「っ!! そうですね! ラヴィーをあっと言わせるためにも、魔法をもっと磨かなくては!」


 レヴィは柔らかく笑いながら、明るげな笑顔を浮かべる"姫様"のところへと近づいていった。







 場所が変わって、執務室。


 ガラス製の硬いペンの音が響く部屋には、複数の机と仕事をしている人達。


 「…ねぇ、レト」


 「…?」


 窓辺から修行している"姫様"を見ていた、幼なげな顔の男性が、名前を呼ぶ。

 "レト"と呼ばれた女性は、奥の方にある椅子に座り、書類と向き合っていた。


 「なんだ、マモン」


 「見てみなよ姫さま。ま〜たレヴィアタンに文句言ってんのw」


 「別に…それはいつものことだろう?」


 「もう姫さまも限界なんじゃないの?ラヴィーに早く会いた〜いって」


 「…」


 レトはそれを聞かなかったことにしたようで、また書類と向き合う。


 「不思議だなぁ、今世代は。魔族が人間に恋するなんて、滅多にない」


 マモンの言葉には、別の声が答えた。


 「そりゃあそうだろうよマモン。人間達はずっと魔法の美しさで競ってんだぞ?そんな中威力とか数とかに全振りした本物の魔法を使うラヴィーは、正に魔族にとって一番かっこよく惚れれる人間だ」


 「ふぅん…その言い方だと、サタン、君がラヴィーを狙ってるかのように聞こえるけど?」


 「んな訳がないだろう。ラヴィーと言う存在そのものが、はなからシアリー様とレト様のモンだ」


 それを聞いたマモンは少し不満そうな顔をして、


 「それはそうだけど、ボクらにも貸してくれるんでしょ?」


 数秒の間の後、


 「まぁ…ラヴィーの成長の為にも、お前らに預けるのも契約に盛り込んだからな。折角だし、シアリーと一緒に特訓できればなと」


 「いいじゃあないか。姫様にはそれが一番の薬だろうよ」


 マモンはそう言うと自分の机に戻る。

 それと同時に、ふわりと煙が現れ、レトのそばに形を作った。


 「レト。報告です」


 長い灰色の髪を三つ編みにした女性は、そう言って紙を渡す。


 「おやアスモデウス。今日は女性体なんだねぇ」


 「そうですね。ラヴィーとも少し会ってきましたから。あの子はどちらかと言うと女好きですから、この体の方が都合がいいんですよね」


 しれっと会ってきた宣言をされたのに若干の殺気を出しながら、レトは紙を読む。


 「…勇者召喚か」


 「何…?」


 サタンが声を出す。


 レトはふわりと紙を浮かせて、


 「もうそろそろ、我ら魔族や魔王を倒す為に何かして来ると思ってたんだが…まさか、異世界から勇者候補を召喚するまでに踏み切るとは…」


 「おバカだねぇ、人間は。戦場でも炎の花や水の生物を作る、まるでお遊戯会のようなことしかしてこなかったのに。勇者を召喚したところで、より美しさが探究されるだけ。魔法をちゃんとした使い方しないから弱くなるばかりなのに」


 マモンの言葉に、サタンもこくりと頷いた。


 「んで? レト様、どうするんだ」


 「…別に? どうもしないさ。それに…ラヴィーはきっと、来てくれる。シアリーとの結婚式のいい余興くらいにはなるだろう」


 「っ! ははははっ! いい余興か! 確かにそうだなっ!」


 「余興ねぇ…ボクら七つの大罪が使う魔法よりも、かい?」


 「比べる対象間違ってますよマモン」


 アスモデウスが咎めた後、


 「ラヴィーとシアリー様との結婚の、余興の余興の余興。それくらいの価値しかありませんわ」


 「ふむ、それもそうか」


 マモンは自分の机にもある紙を見つめながら、ちょくちょく窓の外も見る。



 かつて…自分達、七つの大罪をフィンガースナップ一つでぶっ飛ばしたヤバい存在に、確実に近づいているシアリーを見ながら。

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