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時の魔法で癒したい~甘えたがりな王子に振り回され、溺愛される日常~  作者: 妹尾ことり
第1章 はじまりの物語

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6.側近のスヴェンさん



「伴侶・・召喚・・・ですか?」


「ええ、そうです」



場所を移して、私は今、エーリクの側近だというこのスヴェンさんと話してます。

ここはエーリク王子の執務室だそうで・・・広さは、教室くらい?


応接セットというか、つやつやのローデスクを挟んで向かい合い、ゴージャスなソファに座ってます。

あ、スヴェンさんにも呼び捨てでと言われたんだった。


「誰の・・ですか?」


わかっているけど念のため聞いてみると、


「そちらのエーリク様の、です」


スヴェンが微笑みながら、エーリクを手で示した。


エーリクはというと、なぜか私の隣に腰かけて、一緒にスヴェンと向かい合っている。

さっきから時折不安げに私を見つめてくるのだけど・・・


えーっと、たぶん、ですよ?

たぶん、さっきの意表をついた告白(??)の返事を待っているのだと思われ・・


そもそも、告白なの?

「アーシャがほしい」だなんて・・・ちょっとストレート過ぎだよね・・・

ちっとも不快じゃなかったけども。

正直なところ、ドキドキしたというか・・・


エーリクは昨日会ったばかりの男性で、いかにイケメンでリアル王子様だといえ、まだ何にも知らないんだよ?

それなのに、むしろなんで全然イヤじゃないの?

もう・・・なんなんだろうね、私自身に一番驚いてるよ・・・


はぁ、とため息ついてたら、



ぽすん



って、エーリクが私の膝に倒れ込んできた。


「えぇ??」


さすがに、声に出てしまった。


「あ、限界でしたね」


スヴェンは事も無げに言い放った。


「え!? 何が? 大丈夫なんですか?」


だって突然、膝に倒れ込んできたんだよ、心配するでしょ?

上から、エーリクの顔を覗き込むと、スース―と幼げな寝息が聞こえた。



「・・・寝てる?」


「まあ、この二日ほとんど寝てませんからね」


スヴェンは私の膝の上で眠るエーリクを見て、苦笑いしながら言った。


「二日も寝てないんですか!!?」


「ええ、一昨日は伴侶召喚の魔法の準備で。魔法陣を描いたり、失敗しないように詠唱の練習を何度もしていましたね。あと、不安で寝付けなかったそうです。そして昨日は、アーシャ様が来てくださった。あの後は大変だったんですよ! あんなに喜ぶエーリクを見たのは私も初めてでした」


彼はなにか思い出したのか、急にクスっと笑いながら話を続けた。


「けっこうお酒を飲まれて・・・それでも気になることがあると言って、結局朝まで調べ物をされていましたね」


「朝まで・・・」


そう返しながら、エーリクのほうに視線を落とす。顏を覗き込んでみると、目の下にはうっすらとクマができていた。

私は、苦しいような切ないようななんとも言えない気持ちになった。



「伴侶召喚の魔法は、男性が18歳になったら誰でも使える魔法なんです。でも、女性陣には不評なんですよ。男の都合で勝手に呼び出すわけですから」


スヴェンがちらりと私を見たので、「そう・・ですね」と苦笑気味に相槌をうつ。


「でも、エーリクはなりふり構っていられなかったのです。彼はこの国の王子で、時の魔法の使い手です。もうずっと自分の伴侶に会いたくて、何年も、本当に何年も待ち焦がれていました」


スヴェンの美しい黄緑色の瞳が、私を見据えている。

次第に熱を帯びてくる口調に、私は黙って耳を傾けていた。


「エーリクは3歳で時の魔法の使い手と判明しました。それ以来ずっと人との接触が苦手で、エーリク自身も周囲の人間も、ご両親である両陛下でさえも手袋をして彼と接するようになりました」


話を聞きながら、身に覚えのあることだけにエーリクの痛みがよくわかってしまった。

しかも彼は両親とも触れ合うことができなかっただなんて・・・


「そして昨日、ついにあなたが召喚された。エーリクにぬくもりを与えられる、ただ一人の存在。伴侶であり、時の魔法のパートナーでもあるアーシャ様、あなたが・・・」


ふう、とスヴェンは息をついた。

さっきから、彼はゆっくりと私にわかるよう話をしてくれた。


でも・・・


「・・あ、あの、私は魔法なんて使えませんよ?」


そうだよ、私に魔法なんて使えるわけがない。

申し訳ないような、残念なような気がしてそう伝えると、


「いえ、アーシャ様は時の魔法使いですよ」


確信をもって、はっきりと言い切られた。

理由を問うように、彼の黄緑色の目をじっと見つめた。


「なぜなら、伴侶召喚の魔法は絶対だからです」


私が何も言えないでいると、


「時の魔法使いはこの世界に二人だけ存在するそうです。そして、その二人は必ず惹かれ合い、パートナーとして共に魔法を高めていくんです。時の魔法は人の心を癒すと言われているんですよ」


そう付け加えてくれた。

そして、スヴェンは私と膝の上のエーリクに向けてとてもやわらかく笑った。


そこで初めて気づきました・・・


話を聞いている間中、ずっとエーリクの頭を撫でていたことに・・・


そう、ずーっと。

まるで膝の上に座った犬を撫でるかのように。


「うわっ、あ、あの、なんかすみません。私などがその、王子の頭を・・・」


私が恐縮して手を離すと、


「いえ、もっと撫でてやってください。お願いします」


と頭を下げられてしまった。




「ところでアーシャ様、先ほどのアレですが・・・」


アレ、とはあの告白のことだろうか。


「あれは・・・かなり直接的な申し出ではありましたが、結婚の申込みなんですよ、間違いなく。伝わっておりますでしょうか・・・?


ああ、やっぱり・・雰囲気からはそうかなーって。


「なんとなくは、ええ」


私は頷いて、スヴェンの顔を見ると、彼はなぜか口元を引き結び目には涙をためていた。


「えっ、あの」


声をかけようにも、なんて言ったらいいのか・・・


「すみません、ただ嬉しくて」


言いながら、スヴェンはほほ笑んだ。笑ったら、黄緑色の瞳からポロっと涙が落ちた。


「こちらの都合で勝手に召喚してしまって言えた口ではないのですが、それでも・・・エーリクは本当にいいやつです。だから、どうか彼をお願いします」


再びスヴェンが頭を下げた。



うん、なんか二人がとってもいい関係なのはわかったよ。

幼馴染、とかなのかな。


あと、イケメンの泣き顔・・・破壊力ヤバイから・・・


「あ、あの・・・エーリクのことは・・その・・・私自身もビックリするくらい・・惹かれてるんで、まぁ・・」


なんとかそこまで言って、あとは笑っておいた。

スヴェンはそれを聞くと、安心したようで涙を指で拭いていた。




ただね、ひとつだけ、どーしても気になることがあるんですよ、未解決の案件が・・・

これは確認しておかねば・・・


「でも、一件よろしいですか? とても気になっていまして・・・」


私が改まって言うので、彼も「何でしょう?」と言いながら姿勢を正した。



「あの・・・私、魔王と戦わなくていいんですよ・・ね?」


恐る恐る聞いた瞬間、


ブハッ


と、なぜか膝の上のエーリクか噴き出していた。






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