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時の魔法で癒したい~甘えたがりな王子に振り回され、溺愛される日常~  作者: 妹尾ことり
第1章 はじまりの物語

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13.懐かしい声



それはいつも山にトレッキングに行くときの恰好で、本当に普段通りの二人・・・

懐かしい父と母の姿だった。


まるで動画を見ているような・・・

森の中、鳥のさえずりまでも聞こえている。


父と並んでいた母が一歩前に出た。

そして、ゆっくりと覇気のある声で語り始めた。



**********************



私の名前は、カーレン・リヴ・マリアンネ。王国歴425年7月17日生まれ。

父はクラウス3世、母は南の王国から輿入れしたベル=マリアンネです。


私、カーレン・リヴ・マリアンネは今日ここに、わが伴侶リュージ・ハネヤ立会いの下、最愛の娘アーシャのために遺言をいたします。



しかしその前に、まず私の身の上についてお話しせねばなりません。


私は時の魔法使いです。その能力故、幼い頃より人と触れ合うことは苦手でしたが、王妃でありながら母上は常に愛情深く私に接してくださいました。しかしその母上も弟のマティアスを産んですぐ亡くなりました。それからは私の傍に仕えてくれた侍女のアリスだけが私を支える友であり、姉のような存在でした。


私は16歳の誕生祭から1週間の後、伴侶召喚の魔法を使いました。

男性が成人すれば使えるのなら、16歳で成人とされる女性もまた同様に使えるのではないかと想定したからです。


私は召喚魔法を使って、私の伴侶を呼び出すつもりでおりました。

ですが、もう一つ気になることもありました。


伴侶召喚の魔法で呼び出されるのは女性です。

ですから、女性である私が召喚魔法を使用すると、相手の召喚ではなく自分を転移させてしまうのではないか・・・その可能性も考えたのです。


万が一、そちらの場合であったなら、私は北の王国から忽然と姿を消すことになります。

おそらくこれまで国を挙げて探してまいりましたから、私の伴侶は国内にはいないでしょう。そして、この大陸にもいるのかどうかわかりません。まだ見ぬ海の外の世界か・・・そんなことも考えておりました。


ただ一人、侍女のアリスにだけはすべてを話し、その内容は墓まで持っていくようにと契約魔法を結びました。


そうして召喚魔法の結果、もうひとつの可能性であった『自分が転移させられる』こととなりました。

私はあの時の召喚、いえ転移魔法の結果、こちらのリュージ・ハネヤのもとへ飛ばされたのです。

祖父であるハーラル豪奢王から成人の祝いにと賜った、この『青のスチアーネ』と共に。



今、こうしてこの国宝『青のスチアーネ』にかけたテスタメンテが解除されているということは、つまり私の娘であるアーシャが私の祖国である北の王国ノアランに、伴侶として召喚されたということでしょう。


アーシャは間違いなく、時の魔法の使い手ですから。

しかし両親である私たちも時の魔法使いです。これがどういうことなのか、皆さまにはおわかりでしょうか?


時の魔法使いは本来、何世代かに一組生まれます。

王国史上、親子間で続いたことなどありません。


しかしこうして実際に、私と娘との間でそれが起きてしまった。

これがどういうことなのか、私なりに考察しました。


それは、こちらがそちらとは異なる世界だということが大きな要因だと考えられます。


私が転移したこの世界に、北の王国ノアランもその他3王国も存在しておりません。これはわが娘アーシャに詳しくたずねて頂けるとよろしいかと存じますが、つまり、そちらとこちらとでは全く次元が異なるということです。

時の進む速さが違うのかもしれませんし、私が転移した時点で時を超えたのかもしれません。


それから、こちらの世界に魔法は存在しません。もちろん私にも伴侶であるリュージにも魔力はありますから、二人で行使する『時の魔法』だけは特別です。私たちは時の魔法を使ってこちらの世界の人々を癒しておりますが、その他の魔法は使えません。


わが祖国、いえそちらの世界は自然豊かで魔力を媒介する精霊の力があふれておりました。しかし、こちらにはそもそも精霊が少ない。ほぼいない、と言っても過言でないのです。


ですから、私たち夫婦はこうして時間を見つけては自然豊かな山々へ足を運び、わずかな精霊の力をお借りして、このテスタメンテを完成させるための魔力を『青のスチアーネ』に蓄えて参りました。その期間は実に6年余りに及びました。


なんとか、わが娘アーシャが16歳を迎えるまでに間に合って良かったと安堵しております。



あらためまして、これより娘アーシャのために遺言をいたします。


1.祖父であるハーラル豪奢王より私個人に賜りましたこの『青のスチアーネ』を娘アーシャに相続させます。


2.アーシャの後ろ盾として、私の10歳下の弟マティアスを指名します。



以上が、私からの遺言です。



マティアス・・・

私の大切な、可愛い弟・・・

私が急にいなくなってしまって淋しい思いをさせてしまいました。

あなたは今何歳になったのかしら・・・

心優しいあなたが立派な大人になり、やがてノアランの王となって世を治める姿を見られなかったことがとても残念です。

ですが、こちらの世界で私は何よりも大切なリュージという伴侶を得ました。そして私たちの間に、アーシャという宝物も生まれました。

勝手なお願いでごめんなさい。でも、マティアスにならアーシャを任せられるの。どうか、どうかアーシャを頼みます。



アーシャ・・・

詳しいことを何も話さずにごめんね。余計なことを言って不安にさせたくなかったのだけど、別れが突然来てしまうのは悲しいわね。

でも、あなたの伴侶となる人はあなたを誰よりも愛してくれる。それは私にもリュージにもわかるの。

私の祖国ノアランで、どうか彼と力を合わせて、皆を幸せにする時の魔法使いとなってね。

私のアーシャ・・かわいいアーシャ・・ずっと大好きよ・・・




あさひ・・・

お父さんもお母さんも、お前を手放す日が来るのがこわくて、ずっと何も言い出せなかったんだ。

それでもその日は必ず来るのにな。

お前が高校を卒業したら話そうと思ってる。

だから、これは保険なんだ。万が一何も知らずにあちらへ行ってしまったらお前が困るから、こうしてお母さんと二人で何年もかけてこの魔法を用意したんだ。


時の魔法は不思議な魔法だな・・・

パートナーとの信頼を築きあげるほど、魔法の及ぶ範囲も力も強くなる。

お前もきっと、パートナーとふたりで自分たちの時の魔法を作っていくのだろう。


あさひ、私たちの大切なあさひ・・・

きっと幸せになれるから、パートナーを信じでがんばりなさい。

私たちはいつもおまえの心の中にいるからな。



**********************



父の声を最後に、白い布に映し出されていた人物が消えた。

青のスチアーネから放たれていた光も、もう消えていた。



皆静まり返り、司法官の一人が記録のため動かすペンの音だけが会場に響いていた。





遅くなりましたが、やっと時間が取れました。

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