11.お披露目パーティー
こちらの世界も一日が24時間とのことで、ほんと良かったなって。
時差もなかったのかな。
寝すぎた感はかなりあったけども・・・
言葉は、召喚魔法のおかげなのか通じているし、文字も読める。
でも、日本語しか書けないみたい・・・
字だけじゃなくて、この世界のことをこれからたくさん学んでいかなきゃいけない。
お母さんもあっちに行ったばかりの時は、同じように思ったのかな・・・
両親からの遺言については、正直とても気になってる。
内容というより 『なんで準備してたの?』 とか、『お父さんもお母さんも魔法使えたの?』 とか、そんな疑問で頭がいっぱいで・・・
だってネックレスも木箱も、もらったのは16歳の誕生日で―――
「アーシャ、大丈夫か?」
黙りこんでると、隣のエーリクが心配そうに声をかけてくれた。
頭にぽんと手をのせて、それから撫でてくれている。
「ありがとう、エーリク」
考えることだらけなのも、気になることだらけなのも、当たり前だ。
だって、ここ異世界だもん。召喚されたんだもん。
開き直ったとこで、ハイ、お披露目パーティーいってみましょう♪
今、時間は19時ちょうど。
私は、エーリクが持ってきてくれたロイヤルブルーのドレスに身を包んでおります。
Aラインにフレンチスリーブの上品でかわいらしいデザイン。もちろん、魔力布ですよ。
胸元の開きは控えめで、ちょっと安心です。
着た瞬間にぴたりと肌に沿う心地よさがあり、そのくせ決して窮屈ではないという・・・
ああこれ、病みつきになる。もう普通の服が着れないかもしれない。
結局、あのスターサファイアのネックレスは着けていません。
テスタメンテの魔法の件もあるし、後で正式に遺言を聞き届けられるように手配をしてくれてるって。
詳しいことも、難しいこともさっぱりわからないけど、ここがお母さんの国だとわかったから、それだけですごく嬉しいの。
「アーシャ、とても愛らしいな。いや、美しすぎる。私はそなたの隣に居られるだけで踊り出したい気分なのだ。この喜びをわかってもらえているだろうか?」
きらっきらの笑顔でそう言い放つエーリク。
「・・・エーリクもとっても素敵です」
エーリクの胸元を見ながら言う。
誰だって照れるでしょ?
だから目を逸らすのくらい許してほしいの。
私をエスコートしてくれるエーリクは、いかにも王子様!っていうコスチュームで・・・って、コスプレじゃないから・・・
これでも略式用の装いだそうで、「結婚式の時はもっとすごいぞ」とかさらっと言われました、ハイ。
出会って二日で結婚確定、誰の話?って感じですよ。
それにしても、こうして改めてよく見るとエーリクはほんっとカッコいい。
黙っているとちょっと怖そうというか、キツそうに見えるんだけど、笑うとふにゃって表情がゆるんでそれがまたほんとにかわいいの・・・
って、何言ってんだよ、自分。
現実に戻ってきなさいよ!
さてさて、エーリクにエスコートされて入ったのは、比較的少ない人数で利用するためのバンケットルームだそうです。
広さはそう、うちの学校の多目的ホールくらいかなと思うんだけど。
2クラスくらい入って余裕で授業できそうな?
って、例えが学校関係でしかできない辛さ・・・
だって仕方ないじゃない。高校出たばっかりなんだもの。
さあ、ふかふかのレッドカーペットの上を、エーリクに右手を引かれ歩いております。
私たちが入ってくると、周りが「まぁ」とか「これは・・・」とかざわめきました。
髪の色かな、やっぱり目立つから。
目の色は遠いとわからないかな。
ここに集まっていらっしゃるのは、この国の王族と高位貴族の方々総勢30数名だそうで、つまり母のことを知る方もきっとたくさんいらっしゃるはず!
プラチナブランドがいっぱいです!
そして瞳が青紫色の方もたくさんいらっしゃる。
お母さんの兄弟とか、私のおじいちゃんとおばあちゃんもいるってことでしょ?
って、もしかしてエーリクと私、いとことかじゃないの?
なんか、気になることばっかりだな。
「今日は気兼ねない集まりだ。
緊張するな、といっても難しいかもしれないが心配しなくていい」
エーリクは安心させるよう背中に手を添えてくれた。
正直とっても緊張するけど、母が教えてくれたマナー全てはこの時のためにあったのだと思う。
というわけで、まず最初にエスコートされたのは、エーリクのご両親である両陛下のところでした。
「父上、母上。こちらが、私が伴侶として召喚したアーシャです。ほら、よーくご覧になってください。どこをどう見ても美しいでしょう? 愛らしいでしょう? 私、初めて彼女を見たときはもう呼吸が止まるほど見とれてしまって―――((ゴホンッッ))
あ、国王陛下の咳払いが入りました。
一体どこまで恥ずかしいトークが続くのか心配しておりました。
さすが御父上ですね、ナイスストップ―!
「エーリク、少し落ち着きなさい」
続いて王妃陛下のフォロー入りました!
「嬉しいのはよくわかりました。でもまずは私たちにもお話しさせてちょうだい」
そう言って、お二人が私のほうに体ごと向けてくださいました。
私は姿勢よく、優雅に、思い出の中の母と重ねるようにしてカーテシーをとった。
「はじめまして、国王陛下、王妃陛下。
私はニホンという国から参りました、アサヒ・ハネヤと申します。エーリク殿下にはとてもよくして頂いております」
顔を上げると、お二人ともとてもやさしい眼差しで私を見つめてくださった。
「その色・・・本当にわが国の王族と同じだな。しかも黒髪とはなんと艶やかで美しいのだろう」
「あ、ありがとうございます」
緊張する・・・すごく。
エーリクはたしかにこの方の子供なんだなってわかるほどよく似ている。
陛下はやっぱりプラチナブロンドだけど、短髪。
まだお年は30代かな。若くてかなりカッコいいです。
「あの、実は私たちもすでにアーシャと呼ばせて頂いてるの。だから、あなたにも私のことを名前で呼んでほしいわ。キャスリーンというのだけどキャシーと呼んでね」
「あ、ありがとうございます。キャシー様」
王妃陛下あらためキャシー様は、先ほどから陛下と一緒に私の黒髪を褒めておいでですが、実は
キャシー様の髪色こそが珍しいと私は思うのです。
だって髪の毛、エメラルドグリーンだからね??
なんで誰も何も言わないの?
周囲にはプラチナブロンドを筆頭に、赤毛から栗色まで様々だけど、どれもあちらの世界に存在している色だと思う。
でも、キャシー様の色は違う。
もし、召喚された部屋にキャシー様がいらっしゃったら、私一発で『あ、ここ異世界だ』ってわかったと思うんだよね・・・
私は詳しく聞きたくてエーリクを見上げると、袖をちょいちょいっと引っ張った。
するとエーリクが、
「どうしたアーシャ、そんなに愛らしい表情で私を見つめて・・・・・そうか!」
とか言って、いきなりギュって抱きしめてきた。ご両親の前なのに!?
「ちょっ、エーリク。ちがうの、恥ずかしいわ・・・」
「ダメだ、可愛いアーシャが悪いのだ」
そんな私たちの周りには、挨拶をしようと集まってくださった皆さまが・・・
微笑ましいというか、生暖かいというかそんな目で見守っておられます。
ちょっと、誰か止めなさいよ! バカップルみたいじゃないの!
スヴェンを呼ぼうと思ったら、
「エーリク、それでは嫌われてしまうぞ?」
と、声がかかった。
振り返ると、これまたイケメンが・・・しかもそこはかとなくセクシーな感じの・・・
エーリクが離してくれないので失礼かと思いながら、
「あの、はじめまして。アーシャと申します」
と、できる範囲で挨拶してみた。
もう、アーシャでいこうと思う。すると、
「待て、叔父上に愛称はマズイ。好かれては困るのでな」
え? 叔父上って、そんな歳には見えないけども・・・?
20代後半みたいな。
下手すると、エーリクのお兄さんで通りそうな感じ。
「叔父上、これは私の伴侶でアシャーヒといいます」
なぜかそんな紹介をされた。
アシャーヒ・・・って誰よ!?
「私に愛称を呼ばせたくないとは・・・わが甥っ子は狭量だな」
その人は、金髪のカラー見本のようなブロンドでまさにキラキラしていた。
目はもちろん青紫で、少したれ目がち。
わかりやすくゲームで言ったら、軽い、お色気担当キャラのイメージだなって。
「なっ、失礼な。それはご自分の振る舞いを顧みてからおっしゃってください」
エーリクはすねるように言って、私を叔父様の目から隠した。
「それでは私がずいぶんと悪い男みたいではないか」
叔父様が苦笑いを浮かべて言うと、
「お前が悪い男でないなら、いい年して遊び歩くのはやめたらどうだ」
また別の声が聞こえてきました。
「アーシャ、こちらは前国王で私のおじい様だ」
エーリクが手を離してくれたので、私はまたカーテシーをした。
その優しそうな男性は、私の挨拶にニコリと笑んで返してくださった。
そしてそのまま、エーリクの叔父様(きっと独身を謳歌していらっしゃる)にお説教をなさってます。
それから、エーリクにくるんと向きをかえられて、
「アーシャ。こちらが私の曾祖父、ラナース公だ」
と、少し改まって紹介された。
曾祖父・・・ひいおじい様ということ? お年は80歳くらいかしら、でも姿勢はまっすぐで凛とした空気をまとっていらっしゃる。
私は、ここでまた気合を入れ直して綺麗なカーテシーをとった。
「ラナース公、はじめまして。私はアサヒ・ハネヤと申します。どうぞよろしくお願いいたします」
ラナース公は私の姿を目にした瞬間から、じっと固まったように動かなかった。
挨拶をしている間も、ただ私の目を、いやもっと奥を覗き見るようにされて・・・
それから小さく、
「カーレン姉上・・・」
とおっしゃった。




