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この村、全員ラスボス経験者でした。 〜もう二度と世界を救いたくない元最強たちのスローライフ〜  作者: にる


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決まっている感じ

朝。


目が覚める前に、

今日は右から起きる気がしていた。


身体が先に動く。


考えない。


右足が床につく。


冷たい。


でも、

そこで止まらない。


窓を開ける。


外の空気が入る。


深く吸う前に、

呼吸が落ち着く。


それで十分だと思う。


外へ出る。


井戸へ向かう。


角を曲がる。


いつもの道。


途中で、

左へ避ける。


避けたあとで、

木箱があることに気づく。


見ていなかった。


身体だけが先に避けている。


井戸。


桶が回ってくる。


受け取る。


水を汲む。


隣の人と、

同じタイミングで手を離す。


音が重なる。


誰も見ない。


宿。


アーシャが席を指す。


指される前に、

そこへ向かっている。


「今日はそこ」


「うん」


確認みたいな会話。


器が置かれる。


塩の位置。

湯気の向き。

箸を取る順番。


全部、

迷わない。


迷う前に終わる。


食事を終える。


椅子を引く。


音が重なる。


今日は三つ。


同じ高さ。


同じ長さ。


畑。


ガイルは昨日と同じ位置。


「そこまで」


言われる前に、

足が止まる。


鍬を持つ。


三回。


止まる。


四回目が浮かばない。


身体が、

続きを選ばない。


「いい」


ガイルが言う。


確認だけが残る。


鍛冶場。


入口の板。


身体が自然に角度を変える。


擦れない。


止まらない。


中に入ろうとは思わない。


思う前に、

通り過ぎる。


ドラムは振り向かない。


それで流れが終わる。


広場。


人が動いている。


立つ場所。

歩く順番。

振り向く方向。


揃っている。


揃っていることを、

誰も気にしていない。


午後。


川へ向かう。


飛び石の前。


止まる。


遠回りへ向かう。


迷わない。


遠回りの方が近い気がする。


途中で、

前を歩く人が少しだけ速度を落とす。


同時に、

自分の足も遅くなる。


合わせようとはしていない。


それでも、

合う。


森の方を見る。


風が揺れる。


視線が向く。


一瞬だけ、

足が前へ出そうになる。


胸が浅くなる。


止まる。


止まったあと、

何も浮かばない。


戻る。


その方が自然だと、

身体が知っている。


夕方。


宿に戻る。


入口の布を避ける。


肩が触れない。


通れる幅が、

最初から分かっている。


アーシャが言う。


「今日は、落ち着いてるね」


「そうかも」


本当にそうかは、

考えない。


夜。


部屋。


窓の外。


暗い。


耳の奥で、

何かが重なる。


低い音。


言葉ではない。


聞こうとすると、

遠くなる。


呼吸が浅い。


浅いまま、

整う。


身体が、

次の動きを考えなくなる。


決める前に、

終わっている。


それで、

一日が進む。


少しだけ、

何かが減っている気はした。


でも、

止まる理由にはならなかった。


そのまま、眠れた。

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