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この村、全員ラスボス経験者でした。 〜もう二度と世界を救いたくない元最強たちのスローライフ〜  作者: にる


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理由のいらない安心

朝。


目が覚める前に、

今日は何も起きない気がした。


起きる。


窓を開ける。


空は曇っている。


変わらない。


それでいい。


外へ出る。


井戸には人がいる。


桶はすぐに回ってくる。


待たない。


待たなくていい。


「おはよう」


声をかける。


返事が返る。


誰の声か、

確かめない。


それでも、

ちゃんと届く。


宿。


アーシャが笑っている。


「今日は、落ち着いてるね」


「そうだね」


理由はない。


器が並ぶ。


量は少ない。


少ないまま、

満たされる。


満たされたかどうかを、

考えなくていい。


「熱いから気をつけて」


言われる前に、

手を引く。


火傷はしない。


畑。


ガイルは既に終わらせている。


「今日はやらなくていい」


「いいの?」


「いい」


短い。


やらなくても、

何も困らない。


土はそのまま。


それで足りている。


広場。


人の位置が決まっている。


空いた場所がある。


誰も入らない。


入らなくても、

話は回る。


「静かだな」


「静かだね」


同じ言葉。


違和感はない。


午後。


川へ向かう。


飛び石の前で、

足が止まる。


遠回りを選ぶ。


選んだ感覚はない。


その方が、

楽だと分かっている。


森の方を見る。


風が止まる。


何も起きない。


起きないことに、

安心する。


理由は考えない。


鍛冶場。


入口は半分。


中に入らない。


入らなくても、

用事は済んでいる。


ドラムは振り向かない。


それでいい。


夕方。


宿に戻る。


布団はもう敷かれている。


「今日は、静かだね」


「うん」


同じやり取り。


変わらない。


変わらないから、

安心する。


夜。


部屋。


窓の外。


暗い。


音が少ない。


少ないまま、

落ち着く。


胸の上下が、

ゆっくりになる。


軽い。


何もしていない。


何もしなくていい。


それで、

十分だと思ってしまう。


そのまま、眠れた。

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