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この村、全員ラスボス経験者でした。 〜もう二度と世界を救いたくない元最強たちのスローライフ〜  作者: にる


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何もしなくていい日

朝。


目が覚めたとき、

何をする日か、すぐに思い出せなかった。


思い出せないまま、

困らなかった。


布団から起きる。

床は鳴らない。


鳴ったかどうか、

気にしない。


外へ出る。


井戸には、すでに人がいる。


桶は回っている。


ユウトが手を伸ばす前に、

桶が差し出される。


「ありがと」


言うと、

相手は頷くだけ。


順番を決めた覚えはない。


でも、

順番は整っている。


宿へ戻る。


アーシャが鍋をかき混ぜている。


「今日はゆっくりでいいよ」


「何かあった?」


「何も」


即答。


器が並ぶ。


量は、ちょうどいい。


足りるかどうか、

考えなくて済む。


畑へ向かう。


ガイルはすでに作業している。


「今日は?」


「端だけでいい」


端だけ。


理由は聞かない。


土は固くない。


鍬は軽い。


作業は短い。


「もういい」


ガイルが言う。


まだ動ける気がする。


でも、

言われた通りに止める。


鍛冶場。


入口は半分だけ開いている。


中に入ろうとすると、

ドラムが言う。


「今日は熱い」


熱くはない。


でも、

引き返す。


用事はない。


広場。


椅子が一脚足りない。


立ったままでも、

困らない。


誰かが言う。


「今日は静かだ」


誰も否定しない。


午後。


川へ向かう。


飛び石は広い。


遠回りを使う。


慣れている。


跳ばなくても、

遅れない。


森の方を見る。


特に呼ばれていない。


呼ばれていないなら、

行かなくていい。


夕方。


宿に戻ると、

布団がもう敷かれている。


「早いね」


「今日は、早い」


アーシャは笑う。


理由はない。


夜。


部屋。


窓の外は暗い。


考えることが、ない。


やることも、ない。


何もしていない。


何もしなくていい。


胸の上下が、

ゆっくりになる。


軽い。


軽すぎる気がして、

少しだけ目を開ける。


何も変わっていない。


また閉じる。


そのまま、眠れた。

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