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この村、全員ラスボス経験者でした。 〜もう二度と世界を救いたくない元最強たちのスローライフ〜  作者: にる


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21/28

静かな通常

朝は、いつもより少し遅かった。


ユウトは目を開けてから、しばらく天井を見ていた。

染みの位置。

木目の流れ。

昨日と同じだと思い、違うかもしれないと思って、やめた。


考えるほどのことじゃない。


身体を起こす。

床がきしむ。

音は軽い。

軽すぎる気もしたが、そういう日もある。


外は静かだった。

鳥の声が、少ない。

いないわけじゃない。

ただ、間が空いている。


井戸へ向かう。

道の途中で、足を止める。

止めた理由が分からない。


……なんだっけ。


思い出そうとして、首を振った。

水を汲む。

冷たい。

指先が少し赤くなる。


「おはよう」


声をかけられて、振り向く。

アーシャだった。

いつもより早い。

服も、もう整っている。


「早いね」


「そう?」


首を傾げる。

その仕草が、少しだけ遅れた。


「今日は忙しくなる?」


「多分」


理由は聞かれない。

ユウトも言わない。


宿に戻る。

扉が軽い。

昨日より軽い。

蝶番の音がしない。


中は、変わらない。

机。

椅子。

階段。


ガイルが外で畑を耕している。

鍬の音が、一定だ。

速さも、深さも。


ユウトはしばらく見ていた。

数えそうになって、やめた。


「手伝う?」


「いい」


短い返事。

視線は合わない。


ドラムの鍛冶場から、音がしない。

火は入っている。

赤い。

でも、叩く音がない。


「今日は使わない」


中から声がした。

聞いていないのに。


「分かった」


理由はない。

それで終わる。


村を一周する。

いつもと同じ順番。

曲がり角。

石。

木。


途中で、道が少し広くなっている気がした。

気のせいだと思って、歩いた。


家が並んでいる。

扉。

窓。

洗濯物。


一軒分、視線が滑る。

何かを見落とした気がして、戻ろうとして、やめた。


戻る理由がない。


昼になる。

日差しが強い。

影が短い。


村人たちは動いている。

同じ動き。

同じ声。


「今日はいい天気だ」


「そうだね」


言葉が重なる。

少しだけ、ずれる。


ユウトは食事を取る。

味は、いつも通りだ。

薄い。

それでいい。


噛んでいると、安心する。

理由は分からない。


午後。

用事はない。

それでも時間は進む。


川のそばに座る。

水面が揺れる。

反射が、少し遅れる。


石を投げる。

音が一拍遅れて返る。


……まあ、そんなこともある。


夕方。

影が伸びる。

伸び方が均一だ。


アーシャが声をかける。

「今日はここまで」


「うん」


ガイルが鍬を置く。

重心を落とす。

無駄がない。


ドラムが火を落とす。

何も作っていない。


ルーンが村を一度だけ見回す。

「穏やかだ」


誰も返事をしない。


夜が近づく。

空が暗くなる。


ユウトは宿に戻る。

扉を閉める。

鍵はかけない。


布団に横になる。

身体が沈む。


外から、声がする気がした。

言葉にはならない。

音でもない。


耳を塞ぐほどでもない。

聞こうとも思わない。


目を閉じる。


今日も、何も起きなかった。

そう思って、眠った。


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