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この村、全員ラスボス経験者でした。 〜もう二度と世界を救いたくない元最強たちのスローライフ〜  作者: にる


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揺らぐ日常

朝。


いつもより、

音が少なかった。


鐘は鳴っている。

人も動いている。


でも、

音と音の間が広い。


ユウトは宿の前に立ち、

しばらく動かなかった。


今日は、

呼ばれていない。


だから、

自分で決める必要がある。


そのことが、

少し重い。


外に出る。


村は、

問題なく回っている。


畑。

井戸。

鍛冶場。

宿。


全部、いつも通り。


それなのに、

目が自然と

「空いている場所」を探してしまう。


探していることに気づいて、

やめる。


畑では、

ガイルが作業していた。


鍬の音が、

一定。


「今日は、どうですか」


ユウトが聞く。


「変わらん」


即答。


「……昨日と?」


「昨日とも違う」


一拍。


「今日だ」


それだけ。


昼前。


宿。


アーシャが、

客と話している。


笑っている。

声も軽い。


「泊まりは?」


「三人」


「少ないですね」


「十分」


その言葉が、

最近よく使われている気がした。


午後。


鍛冶場の前。


ドラムが、

木箱を積んでいる。


数は、揃っていない。


高さも、

微妙に違う。


「倒れませんか」


「倒れたら、

直せばいい」


即答。


それで終わり。


夕方。


広場。


人は集まる。

話もする。


でも、

自然と間が空く。


誰も、

そこを埋めようとしない。


ユウトは、

その外側に立っていた。


以前なら、

気にしなかった距離。


今は、

意識してしまう。


近づく理由も、

離れる理由もない。


ただ、

そこに立つのが

落ち着かない。


夜。


部屋に戻る。


窓を開ける。


風が入る。

涼しい。


星は、

少ない。


雲が多い。


それでも、

全部隠れない。


ぽつぽつと、

光っている。


数えそうになって、

やめる。


代わりに、

しばらく見ていた。


考えない。


意味を探さない。


今日は、

何も起きていない。


それが、

もう「普通」になっている。


布団に入る。


目を閉じる。


胸の奥に、

小さな揺れが残っている。


怖いほどじゃない。

安心とも違う。


ただ、

戻れない感じ。


ユウトは、

その揺れを抱えたまま、

眠りに落ちた。


この日常が、

いつまで続くのか。


考えなかった。


考えないことが、

今は一番、

自然だった。


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