第2章 政府の混乱
午前11時22分。
首相官邸地下危機管理センター。
緊急招集された国家安全保障会議は、異様な緊張に包まれていた。
防衛大臣が、震える手で報告書を読み上げた。
「現在、みょうこうが捕捉している艦隊は……空母6隻を含む総計30隻以上。
空母のシルエットは赤城、加賀、蒼龍、飛龍、翔鶴、瑞鶴と極めて酷似しています。
針路、艦の配列、航行速度ともに、史実の1941年11月26日の真珠湾へ向け航行中の第一航空艦隊、南雲機動部隊と極めて近い……」
会議室に重い沈黙が落ちた。
外務大臣が掠れた声で言った。
「……南雲機動部隊かどうかは置いておくとして、国籍不明の大艦隊と遭遇している……」
その時、別の報告が飛び込んできた。
「不明艦隊から暗号通信を多数傍受! 繰り返し発信されています!」
全員の視線が大型モニターに集中した。
画面には、暗号文が次々と表示され、変換されていく。
「我、第一航空艦隊。
単冠湾出撃後、艦隊司令部との通信途絶。
連合艦隊司令部応答なし。
現在位置確認を求める。
作戦続行の可否を指示せよ」
「繰り返す。我、第一航空艦隊。
単冠湾出撃後、艦隊司令部との通信途絶。
ハワイ方面に向かう。
応答求む」
防衛大臣が顔を青ざめさせた。
「これは……1941年当時の日本海軍が使用していた暗号体系から割り出した解析結果です……」
会議室に、信じがたい空気が流れた。
統合幕僚長が低い声で言った。
「暗号の形式、電波の特性、すべてが史実の第一航空艦隊の記録と一致している……
これは……南雲忠一中将率いる真珠湾攻撃艦隊そのもの……と判断せざるを得ない……」
首相は静かに目を閉じた。
「つまり、我々は今、
自国の過去の真珠湾攻撃艦隊と、
太平洋上で遭遇している。と……?」
外務大臣が声を震わせた。
「しかし……彼らは今、ハワイ方面に向かおうとしている。
このまま放置すれば、真珠湾を攻撃するかもしれん……」
防衛大臣が厳しい表情で続けた。
「現在、第三護衛隊群が最高度警戒態勢に入っています。
攻撃の可能性はまだ低いですが……
彼らは明らかに困惑しています。
突然、連合艦隊司令部との通信が途絶えた状態で、作戦を続行ようとしている……」
首相は深く息を吐いた。
「これは……我々が歴史そのものと向き合う事態だ」
日本政府は、自らの過去と、
どう向き合えばいいのか、
まだ答えを見つけられずにいた。
第2章をお読みいただき、ありがとうございます。
事態は急激に深刻化し、日本政府は信じがたい現実を前に大混乱しています。
本当に1941年の艦隊なのか。
現代の日本が、過去の日本とどう向き合うのか——。
物語はこれから本格的に動き出します。
第3章は明日投稿予定です。
引き続き、お付き合いいただければ幸いです。




