第1章 10時の異常接触
2026年11月26日 午前10時02分
太平洋 北緯38度付近
海上自衛隊第3護衛隊群第7護衛隊は10日間の訓練航海を終え、母港の舞鶴に帰投するため、針路を変えようとしていた。
護衛艦「みょうこう」のCIC(戦闘情報センター)は、いつも通り静かな緊張感に包まれていた。
そんな時、レーダー員の声が、わずかに上ずった。
「艦長! 単冠湾方向、方位305、距離180kmに多数の大型艦船反応! 30隻以上です!」
艦長の海野隆一(一等海佐)は、コーヒーカップを置いて即座に反応した。
「詳細を!」
「空母らしき大型艦6隻を含む大規模艦隊……スクリュー音解析中ですが、既知の民間船舶や自衛隊・米軍の艦艇……パターンに該当しません。国籍不明です」
CICに緊張が走った。
海野艦長は眉を寄せた。
「国籍不明の30隻規模の艦隊だと? この海域にそんな大艦隊が存在するはずがない。すぐに統合幕僚監部に緊急報告だ。レベル5だ」
数分後、解析結果が次々と入ってきた。
「空母6隻……隻数、配置から推測される答えは、史実の南雲機動部隊と……、酷似……」
副長が画面を見つめながら、信じられないという表情で呟いた。
「まさか……」
海野艦長も画面を凝視した。
「暗号通信を傍受! 暗号文のため、内容は解りませんが、艦同士のやり取りは日本語でされているようです!」
「艦同士のやり取りが……日本語……?」
CICの空気に困惑の色が広がった。
午前10時28分。
各省庁は、信じがたい報告を受け取り、大慌てで緊急会議を始めた。
太平洋に突如現れた、国籍不明の30隻規模大艦隊。
その艦隊は、空母6隻を主力とし、北太平洋航路を外に向かう針路を取ろうとしていた。
関係者たちは最初、
「中国の新空母群か?」
「ロシアの極秘演習か?」
と様々な推測を立てた。
しかし、衛星画像、電子戦解析、音紋解析が進行するにつれ、会議室の空気は徐々に異様なものに変わっていった。
職員が、震える声で報告書を読み上げた。
「……空母6隻のシルエットが……史実の赤城、加賀、蒼龍、飛龍、翔鶴、瑞鶴と完全に一致……
配置も、11月26日午前9時に単冠湾を出撃した南雲忠一中将率いる第一航空艦隊の記録と……一致しています……」
会議室に、信じがたい沈黙が落ちた。
誰かが掠れた声で言った。
「……1941年の、真珠湾攻撃艦隊……だと?」
日本政府は、
突如現れた理解しがたい大規模艦隊と、
どう向き合えばいいのか、
まだ誰にもわからなかった。
第1章をお読みいただき、ありがとうございます。
2026年の太平洋に、突然現れた1941年の南雲機動部隊。
現代の自衛隊と、過去の日本海軍が、運命の海で出会う物語です。
これは「もしも」の物語であり、
二つの時代の「日本」が、どのように向き合うのかを描いていきます。
重厚で、少し難しいテーマになるかもしれませんが、
最後までお付き合いいただければ幸いです。
第2章は本日夕方に投稿予定です。
どうぞよろしくお願いいたします。




