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FPSオタクな私、異世界転生して魔法学園生活スタートしたけど魔法使えません!? −限界具現化(ゲンカイ・マテリアライズ)チートで乗り切ります!  作者: ちぇ!
ごまかしから始まる学院生活

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控えめチートで大丈夫? ドキドキ入学式

ー聖堂院リュミエール・入学式の日ー


聖堂院の大講堂には、小学一年生くらいの子どもたちが、三十人ずつ六クラス分も集められていた。


……うるさい。

とにかく、うるさい。


さっきまで司祭にあれだけ

「背筋を伸ばしなさい」

「足を開かない」

「式の間は静かに」

って言われてたはずなのに、みんなもう好き勝手である。


隣の子の髪を毛づくろいみたいにいじる子。

椅子をギコギコ鳴らして遊ぶ子。

大あくびのまま止まってる子。

急に歩き出して即回収される子。

床の模様に吸われてしゃがみ込む子。


いやもう、動物園かな?


見かねた母さんのこめかみが、ぴくぴくしていた。

あれは完全に“よその子でも説教モード”の前兆である。

私はひっそり冷や汗をかく。

こわい。


やがて式は、聖堂院で一番えらい大司教の挨拶から始まったのだが――


誰も聞いてねえ。


というか、私も途中からだいぶ怪しかった。


大司教さま、たぶんすごくえらい人なんだろうけど、なにせ声がふがふがしている。

入れ歯がないのか、もともとそういう喋りなのか分からないけど、とにかく何を言ってるのか聞き取れない。


ありがたい話っぽい。

たぶん。

でも内容が耳に入ってこない。


前の方に座ってる子なんて、もう半分寝てるし。

後ろでは親同士が小声で世間話してるし。

真面目な母さんですら、口元を手で隠してこっそりあくびしていた。

……あ、母さんもこういうとこあるんだ。

ちょっと安心した。


そんな、ふわっふわに緩みきった空気を――


一気に引き締めたのが、小等部六学年の生徒代表、エリシア・エクス・ヴェルデンだった。


壇上に立った瞬間、空気が変わった。


いや、ほんとに。

さっきまでガヤガヤしてた大講堂が、すっと静かになったのだ。


背筋はまっすぐ。

声は澄んでいて、よく通る。

言葉のひとつひとつが聞き取りやすくて、しかも全然つっかえない。


自己紹介も、歓迎の言葉も、これから始まる聖堂院生活への励ましも、全部がきちんとしていた。

きちんとしているのに堅苦しすぎなくて、ちゃんと「楽しそう」と思わせる話し方だった。


すごい。


同じ“子ども”のはずなのに、完成度が違いすぎる。

こっちは今日、魔法をごまかせるかで頭いっぱいなのに。


(うわぁ……なにあの人。

 めちゃくちゃちゃんとしてる……。

 私も、あんなふうになれたらいいのに)


思わず見入っていたら、隣で母さんが小さく息をついた。


「やっぱり凄いわね……」


「知ってる子なの?」


「有名人よ。この都市のすぐ北、王国領にあるヴェルデン家の侯爵令嬢。留学生なのに、生徒代表に選ばれているの。普通ならありえないわ」


母さんの声には、感心と、ほんの少しの呆れが混ざっていた。


「優秀すぎて、例外にするしかなかったのでしょうね」


へえ、と私は小さくうなずく。


ヴェルデン家。

たしか、その家が治めている都市ヴェルデンは、大陸でも有数の海洋都市なんだっけ。

港町で、交易で栄えていて、この栄都セレスティアにもかなり影響を与えてるとかなんとか。


つまり、すごい家の、すごい娘ってことだ。


(いいなぁ、海のある街。

 絶対にぎやかで、珍しい物とかいっぱいありそう。

 いつか行ってみたい)


そんなことを考えていたら、気づけば式は終わっていた。


はや。


いや、大司教の話が長かっただけで、後半はわりと一瞬だった気もする。

エリシア先輩の挨拶が強すぎたのかもしれない。


周囲の親子がぞろぞろと立ち上がる中、母さんが私の肩にそっと手を置いた。


「さあ、行きなさい」


「う、うん」


「あなたの魔法は少し特殊だから、あまり目立たないものにするのよ」


母さんは、いつものきびしい顔のまま続けた。


「少し火が出るとか、その程度でいいわ。終わるまで試験場の外で待っているから」


……その言い方で、私は確信した。


(あー……やっぱり、母さん、気づいてるんだ)


どこまで知っているのかは分からない。

でも、少なくとも“普通じゃない”とは思ってる。


じゃなきゃ、そんな言い方にはならない。


私は一瞬だけ、母さんの顔を見た。

相変わらず厳しそうで、でも今日は、いつもより少しだけ声がやわらかかった気がした。


「頑張る!」


とりあえず元気よく返すと、母さんは小さくうなずいた。


私は母さんと別れ、試験場へ向かって歩き出す。


マークと昨日の夜、こそこそ作戦会議した内容が頭の中をぐるぐる回っていた。


火魔法っぽく見せるならライター。

風なら小型扇風機。

水なら水風船。

土は……土のう袋ってどうなんだろう。今さらだけどちょっと雑じゃない?


いやいや、迷ってる場合じゃない。


とにかく今日は、“普通に見せる”ことが最優先だ。

目立たず、怪しまれず、でも魔法が使える子として通す。

それが目標。


私はぎゅっと拳を握った。


(よし……やってやる)


たとえ本物の魔法が使えなくても。

たとえ中身がハッタリでも。


今日だけは、ちゃんと“それっぽく”見せてみせる。


そんな決意を胸に、私は試験場の扉へ向かった。


……この時はまだ、

“控えめにごまかすだけ”で終わると思っていたのだけど。

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