この世界、設定盛りすぎなんだが?
ー栄都セレスティア・クロノの屋敷ー
気づけば、転生からあっという間に六歳。
……いや、早くない?
体感だとオープニング終わった瞬間に幼少期ダイジェスト入ったんだが。
作者の都合ってやつ?
赤ちゃん時代、ほぼスキップなんですけど。
まあ作者に文句言っても仕方ないか。メタ通報されそうだし。
……って、なに言ってんだ私。
コホン。
気を取り直して。
この六年でいろいろ分かってきたから、まずは家族の紹介をしておくね。
攻略対象じゃなくて、ガチの家族です。
父はグラン・ソーカ。名家の五男坊。
魔法の才能はあんまりなかったらしいけど、そのぶん頭はよかったみたいで、今は教会の司祭としてマジメに働いている。
ふくよかだけど優しい。
あと、昔はイケメンだったらしい。
……いや、そこは気になるでしょ。
昔の肖像画とかないの?
設定資料集、どこ?
次に母。サラサ・ソーカ。
火の魔法が得意なキャリア貴族ママで、めちゃくちゃ美人。
ただ、そのぶんマナーには超厳しい。
ほんと厳しい。
容赦ない。
笑顔で詰めてくるタイプ。こわい。
美人家庭教師付きの礼儀作法イベント、スキップ機能ほしい。
あと弟。マーク・ソーカ、五歳。ぽっちゃり。
毎日生意気にまとわりついてくる。
うざ……じゃなくて、元気。すごく元気。
HP無限か?
しかも母は男の子が可愛いらしくて、マークを絶賛溺愛中。
私には何かと厳しいくせに!
この扱いの差、どう考えてもおかしくない?
運営に問い合わせたいレベルなんだが?
で、ここからこの世界の話。
……いや、避けて通れないんだよね、ここ。
この大陸、ざっくり三つの国に分かれてる。
◆【イシュ=バルト法国】
信仰と教会の国。
魔法は“神の祝福”扱い。
朝は鐘が鳴るし、お祈りもあるし、全体的に「ゆる宗教+日常」って感じ。
私が住んでるのは、この国の東の端っこにある栄都セレスティア。
聖堂院リュミエールっていうデカい教会がドーンとあって、そこ中心に街ができてる。
もう見た目からして「ここが重要拠点です」って顔してる。
RPGの最初の安全地帯兼、あとで絶対なんか起きる町っぽさがすごい。
貴族の子供はみんなその教会の学校に通う。
私も春からデビュー予定。
……異世界の学校とか、普通に怖いんだが?
クラス分けで初手ぼっちルートとかやめてね?
でもまあ、友達くらいは欲しい。
前世でその実績、かなり薄いけど。
◆【アーク王国】
中央の国。表向きは「平和と自由」。
……らしいけど、中身はだいぶ腐ってるらしい。
魔法至上主義の血筋ゲー。完全にSSR家系を引いたやつが強い世界。
努力? もちろんゼロではない。
でも初期ステが違いすぎる。クソゲー寄り。
この国、完全に“生まれガチャ”で決まる世界なんだよね。
現代日本の比じゃない。
親ガチャだの学歴だの言ってた前世が、まだぬるかったと思えてくるの、普通にしんどい。
◆【ゼルファス帝国】
北の軍事国家。
「力こそ正義」ってやつ。
才能や能力で命の価値が変わるし、人身売買や奴隷制度も普通にあるらしい。
……いや、アウトすぎん?
倫理観どこに置いてきた?
現代なら即炎上どころか国際問題コースでしょ、それ。
しかも町並みも無骨で、要塞とか闘技場とか多いらしい。
絶対いるだけで胃がキリキリするやつ。
私みたいなインドアオタク、三日でメンタル溶ける自信ある。
そんな三国が、バチバチににらみ合いながら、なんとか平和をギリギリ保ってるらしい。
ギリギリってのがもう不穏。
そのうちイベント戦始まりそうでこわい。
正直、私の“オタク脳”から見れば、どの国も設定盛りすぎてて笑うしかない。
努力より宗教。
努力より血筋。
努力より才能。
しかも、それら全部を上からひっくり返すのが“魔法を使えるやつ”。
要するに、生まれた時点で勝ち負けがだいたい決まってるってこと。
現代日本の生まれガチャですらしんどかったのに、ここは何倍も露骨。
世界観、ハードモードすぎでは?
それでも私は、わりと“順応”できてる自信がある。
前世で鍛えた適応力――という名の現実逃避スキルが火を吹いてるのかもしれない。
とはいえ、現世の趣味知識、つまりFPSとか巨大メカとか、そのへんは今のところ封印中。
六歳児が急に「この地形、遮蔽物少ないな」とか言い出したら怖いでしょ。
親が泣くわ。
まあ、やるときはやる。
それがオタクの矜持。
推しと作品に鍛えられた観察力、なめないでほしい。
……で、最後に秘密も教えます。
最近、弟とこっそり“実験”も始めたんだ。
実は私、魔法はまだ使えない。
でも、転生者らしい“チート能力”があるっぽい。
そのチートがまた、まだよくわかってない。
何かを強く思い浮かべると、たまに地球の道具が手元に出てくることがある。
ただし、回数やタイミングは完全ランダム。
自分でも制御できてない。
……いや、そこは制御させて?
便利能力かと思ったら、仕様がソシャゲの闇ガチャなんだが?
この秘密はマークにだけバレてて、二人でこっそり研究中。
「姉ちゃん、今日も弾ける黒い飲み物出してみてよ!」
「無駄遣いはダメ! 回数制限あるんだから!」
「じゃあ一口だけ!」
「そういう問題じゃない!」
そんなやり取りをしつつ、私は今日も新しい人生の攻略法を模索している。
生意気な弟に振り回されつつ、誰にも言えない秘密を抱えて、マークと二人で研究を続けていく。
……そんな感じで。
――クロノ=ソーカの“二周目の人生”。
ここからが、本番です。




