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FPSオタクな私、異世界転生して魔法学園生活スタートしたけど魔法使えません!? −限界具現化(ゲンカイ・マテリアライズ)チートで乗り切ります!  作者: ちぇ!
ごまかしから始まる学院生活

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双属性疑惑!? 魔導館のきらめき対決


――聖堂院リュミエール・魔導館


みんなが一斉に魔力コントロールに取りかかると、魔導館の中はまるで万華鏡になった。


赤。

青。

緑。

茶。


先生が言っていた四大属性――

紅蓮、蒼氷、翠嵐、剛岩。


最初はその四色だけだと思っていたのに、実際に光が浮かび始めると、思っていたよりずっとカラフルだった。


「あれ、ピンクいるぞ……」


思わず小声でつぶやく。


よく見ると、水色っぽいのもある。

黄色寄りの茶色もある。

紫がかった青まである。


どうやら同じ属性でも、色味や濃さにはかなり個人差があるらしい。


(へえ……)

(こういう“同じ属性でも個性が出る”やつ、設定としてめちゃくちゃ好きなんだが)


ゲームだったらキャラクリ勢が盛り上がるやつである。

「推しの魔力色考察」とか絶対流行る。

いや、この世界にはたぶんないけど。


その中でもひときわ目を引くのは、アルガスの紅蓮色だった。


とにかくデカい。


色の鮮やかさもすごいんだけど、それ以上に、最初から出力がおかしい。

ボン、って感じで出てる。

繊細さ? なにそれ食べれるの? みたいな魔力だ。


(うわー、いかにもアルガスだ……)


性格がそのまま光ってる。

雑で強い。

勢いでどうにかしようとしている。

でも実際、それでなんとかなってるから腹立つ。


一方のリリスも相当すごいはずなんだけど――この魔導館、壁も床も青い。


つまり、蒼氷の魔力色と背景が完全にかぶっていた。


同化。

見事なまでに同化。


背景が味方しすぎてる。


(あっ……これ、青属性には地味に不利ステージだ)


リリスの手元では、たしかに蒼い光がきれいに形を変えている。

細く伸びたり、輪になったり、小さく回転したり。

技術としてはすごい。

たぶんかなりすごい。


でも――


背景に埋もれている。


完全にカモフラージュだ。


珍しくリリスも「ぐぬぬ……」みたいな顔をしていて、なんとか目立とうと魔力の形を変えたり、回転させたりしている。

うん、すごい。

すごい技術だ。


でも。


(完全に背景色負けである)


こういう時、環境って残酷だな。

どれだけ努力しても、ステージ相性ってある。


ミーナは相変わらず楽しそうに、自分のふわふわした緑の魔力を追いかけていた。


「見て見て、なんかクラゲみたい!」


「たしかに」


「かわいくない?」


「かわいい」


ほんと、この子は楽しみ方がうまい。

失敗してもたぶん「わあ、変な形になったー!」で済む。

強い。

メンタルが強い。


シャーロットちゃんの手元では、あの白い光が相変わらず頼りなさそうに揺れていた。


赤や青みたいな派手さはない。

でも、妙に目が引かれる。

暗い魔導館の中だと、あのやわらかい白は逆に浮いて見えた。


本人はそんなこと気づいてなさそうに、必死な顔で両手のあいだを見つめている。

……うん、やっぱりかわいい。

魔力まで本人に似るの、どういう仕組みなんだろう。


エルヴィンはというと、茶色っぽい光を細くまっすぐ伸ばしていた。

うわ、上手。


変な派手さはない。

でも安定してる。

無駄がない。

あいつ絶対、家でも練習してきてるタイプだ。


(堅実タイプつよい……)


そして私はというと。


ミーナの魔力を「すごいね〜」とほのぼの眺めていた。


いや、現実逃避である。

完全に。


だってまだ何もしてないし。

というかできないし。

でも他人の魔力見るのは普通に面白いし。

現実から目を逸らすにはちょうどいいし。


……と思っていたところに、横からズバッと声が入った。


「クロノはやらねぇのか?」


アルガスだった。


うわ、来た。


「この前の試験での実力、ぜひ見せてもらいてぇんだけど」


言い方。

言い方がもう完全に煽りである。


さらに前から、ミーナまで振り返ってきた。


「クロノちゃんのも見たい! きっとすごいんでしょ!」


(ミーナ……声でっか!)


本人に悪気がないのがいちばんタチ悪い。

その全力笑顔で言うのやめて。

断りづらいから。


案の定、周囲の視線が一斉にこっちへ集まった。


うわあ。

来た。

来ちゃった。


リリスまで、背景に埋もれながらこっちを見ている。

やめてその“当然やるんですわよね?”みたいな目。

私のポケットの中には希望と絶望が両方入ってるんだけど。


(観念しろ、私)

(ここで逃げたら余計目立つ)

(やるしかない……!)


私はそっと制服の内ポケットに手を入れた。


マークと仕込んだ秘密兵器――

レーザーポインター。


今日の目標は、これ一本で静かに乗り切ること。

派手にやる必要はない。

とにかく“それっぽい”で終わってくれればいい。


手のひらに隠せるサイズ。

スイッチの位置も確認済み。

家でマーク相手に何度も練習した。


“はい、姉ちゃんもう一回!”

“もっと魔法っぽい手つき!”

“今のただの懐中電灯持つ人!”


……みたいな、地味に傷つく特訓の成果である。


私はなるべく平然とした顔で手を前に出した。


魔法っぽい所作。

それっぽい呼吸。

それっぽい集中顔。


そして、手の中でスイッチを入れる。


――ポツン。


遠くの壁に、小さな緑の点がくっきり浮かんだ。


……緑?


(あっ)


やばい。

赤じゃない。緑だ。


レーザーポインターの緑を、間違えて持ってきちゃった!


みんなのとはやっぱり質が違う。

小さいのに存在感がある。

しかも暗いせいで、思ったより目立つ。

むしろ小さいからこそ“圧縮されてる感”がある。


周囲が「おお……」とどよめいた。


うそでしょ。

このサイズでもやっぱり目立つの?


ディディエ司祭が、感心したように口を開く。


「ほう、翠嵐属性ですか」


(ちがいます)


「魔力をまったく感じさせず、遠くまでぶれずに圧縮し、魔障石の壁に当てても消えない。圧縮、分離、維持、すべて揃っています。これは素晴らしい技術ですね!」


(ちょ、やべぇ……!)


いや、そんな分析される!?

もっとこう、「へえ、変わってるね」くらいで済まないの!?


私の内心は完全に土砂崩れだった。


マークと赤と緑で実験してて、間違えて緑持ってきちゃっただけなのに!

地味で終わると思ったら、まさかの大評価である。


(また目立っちゃうじゃん!)

(なんで私のハッタリ、毎回評価だけ本物になるの!?)


リリスが悔しそうに唇を噛んだ。


「あなた、紅蓮魔法だけではなかったのですね……まさか双属性持ちだったなんて……」


その表情は、ほんの少し自信を削がれたようにも見えた。


いや、違う。

違うんだって。

私は双属性どころか無属性っていうか無魔力っていうか、とにかくそっち側なんだって。


でも説明できない。

この状況で「それレーザーポインターです」って言ったら、今度こそ全部終わる。


すると、それを見ていたアルガスが手を挙げた。


嫌な予感。


「ディディエ司祭、魔力水晶を使ってもいいか?」


「ええ、構いませんよ。魔力水晶は扱いが難しいですが、鍛錬には最適です。使いたい方には貸し出します」


アルガスはギラリと私を見据えた。


「クロノ。双属性持ちですげぇのはわかった。でも、小さい光ひとつ出して勝ち誇るってのは、なんか違くねぇか」


勝ち誇ってない。

むしろ内心ずっと土下座してる。


「――俺と水晶で勝負しろ。魔力量には自信があるんだ」


(ええー……)


リリスだけじゃなくて、こっちも勝負挑んでくんの!?


やだーー!


なんで学園ってこういうのあるの。

もっとこう、最初の実習はみんなで楽しく光らせて終わり、じゃないの?

なんで初回からイベントバトル発生してるの?


心の中で悲鳴をあげていると――


「クロノ! 聞いてんのか?」


ビクッ。


「はい! きいておりましゅ!」


噛んだ。

最悪だ。


ディディエ司祭はニコニコしながら言った。


「怪我はないようにお願いしますよー。実体化は禁止ですからね」


(マジかよこの司祭、意外とノリノリじゃねーか……)

(止めろや!)


アルガスは「じゃ、家から持ってきたから更衣室から取ってくるわ!」と颯爽と退場した。


え、持参!?

やる気満々じゃん。

なんなのあいつ。

戦闘民族なの?


私はそのすきに、こっそりミーナへ聞いた。


「てか魔力水晶ってなに?」


「ほら、試験の時の小さいやつ。台座の上にある占い師っぽい水晶だよ。貴族の家ならだいたい置いてあると思うよー」


(あー……)


そういえば見たことあった。

マークが勝手に触って、うっすら光らせて遊んでたやつだ。

あいつほんとなんでもおもちゃにするな。


やがてアルガスが戻ってきた。


手には、台座つきの水晶。


それを机の上にドン、と置く。

そして迷いなく手をかざした。


ぼわぁあああっ!


水晶が、真っ赤に輝いた。


うわ。

派手。

めちゃくちゃ派手。


周囲の生徒たちが「おお〜!」とどよめく。

たしかにこれは見栄えがする。

火属性っぽさ満点だ。


ディディエ司祭も穏やかにうなずいた。


「はい、結構です。お上手ですね」


アルガスは満足げに笑って、私を見た。


「さあ次はクロノだな。俺様みてぇにド派手に輝かせることはできるかな?」


(無理に決まってんだろ)


でも言えない。

言えないのがつらい。


もう、これは第二の秘密兵器を出すしかないか……。


私は引きつった笑顔で、小さく答えた。


「……持ってきまふ」


噛んだ。

また噛んだ。


もうだめだ。

緊張で舌が仕事してない。


(神さま……)

(女神さまでもプラネタリウムでもなんでもいいから……)

(どうか次も、うまくごまかせますように……!)

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