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四つの基本的な力の魔法使い ー 物理学者から魔法使いへ、状態変化を経て  作者: Adriano_P


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88/99

「カル・スールへ」

評議会の部屋で、ヴィヴィアンとエリーゼがテーブルの同じ側に並んでいるのを、ヘリオは見たことがなかった。

ヘリオは二人を見た――腕を組み、同じ表情、彼がもう見慣れてしまった、あの独特の頑固さの色を浮かべて――そして、これは運命の兆しなのか、それとも単なる凶兆なのか、と思った。

「武装した三十人」ヴィヴィアンが言った。「最低でも、です」

「一度だけ、彼女に同意するわ」エリーゼが付け加えた。

ヘリオは瞬きした。「二人が……意見を合わせる、だって?」

「慣れないでね」エリーゼは、彼を見もせずに答えた。「あなたが信じがたいほど愚かなことをしようとしている、その事実による一時的な例外よ」

「病気の少女を、救いに行くだけだ」

「悪魔の領土へ行こうとしているのよ」ヴィヴィアンが訂正した。その声には、最も厳しい商談で使う調子があった。「未踏の領土。当てになる地図もない。条約もない。国境を越えたあと、ズカン王子にあなたを守る権限がある保証もない」一拍置いて、「そもそも、カル・スールがどこにあるのかすら、わかっていないんです。悪魔が北から、丘の向こうから来る――それだけ。戻ってきた探検家は、一人もいません」

「父は、言葉を与えた」部屋の奥から、ズカンが言った。議論のあいだじゅう黙っていた。巨大な胸の前で腕を組み、赤い目は壁の一点を、あてどなく見つめていた。「マルハル王の言葉は、どんな条約よりも重い」

「失礼ながら、王子」エリーゼが割って入った。「あなたの父上の言葉は、あなたの民にとっては重いのでしょう。ですが私の民にとっては、紙に書かれもしなかった約束ほどの値打ちしかありません」

ズカンは答えなかった。ここ数時間、ろくに答えていなかった。ヘリオが血液分析の結果を見せ、あの二つの言葉――ホモ・ピュロス――を口にしてから、悪魔の王子は、誰の手も届かないどこかへ引きこもってしまったように見えた。

「三十人は、多すぎる」ヘリオが言った。「侵略軍に見えてしまう」

「では十五人」ヴィヴィアンが提案した。「七人の分隊を二つに、指揮官を一人。外交護衛の標準的な編成です」

「二十人」エリーゼが譲らなかった。「六人の分隊を三つに、指揮官を二人。警備のローテーション、三百六十度の防御、いざというときには――」

「だめだ」

二人とも、彼の方を向いた。

「俺は、エリーゼと二人だけで出発したかった」ヘリオはそう言い、抗議される前に手を上げた。「言いたいことはわかる。危険なのもわかっている。だが、連れて行く人数が多いほど、こちらは脅威に見える。脅威に見えるほど、誰かが過剰に反応する可能性が高くなる」

――彼女たちの言うことが正しいんだぞ――リキが頭の中で呟いた。――まったくの未知の領域に踏み込もうとしているんだ。せめて最低限の護衛くらいは――

「十四人」ヘリオは断ち切った。「七人の分隊を二つ。これが、最終的な妥協案だ」

「でも――」ヴィヴィアンが言いかけた。

「十四人。それでも多すぎるくらいだ。議論は終わりだ」

続いた沈黙は、切れそうなほど張りつめていた。ヴィヴィアンは唇を細い線に引き結んだが、頷いた。

エリーゼは、長いあいだ彼を見つめた――「あとで話すからね」と言っているあの視線で――それから、ドアの方を向いた。

「人員は私が選ぶ。最高の者をね」

「エリーゼ――」

「最高の者よ、ヘリオ。私の仕事を、やらせて」

彼が答える前に、彼女は出て行った。

ヴィヴィアンは書類を、在庫台帳を、すでに用意してあった物資のリストをまとめ上げた。常に一歩先回りし、常にあらゆる事態に備えている。「補給の手配をしてきます。出発は夜明けに?」

「夜明けに」

彼女は敷居で、ためらった。一瞬、ほんの一瞬、ヘリオは、その完璧な効率の仮面の奥で、何かが揺らぐのを見た。それからヴィヴィアンは肩を正し、ヒールを石の床に響かせながら去っていった。

部屋には、彼とズカンだけが残った。

「十四人」悪魔の王子が言った。その声には、奇妙な何かがこもっていた。「火の地を横断するのに、たった十四人。父は笑うだろうな」

「だろうな。だが、こちらの立場からも見てくれ」

ズカンは答えなかった。赤い目がようやく壁を離れ、ヘリオの目と出会った。その視線には、何か壊れたものがあった。前日、グレンマールに膝をついて到着したときには、なかった何かが。

「わかっていたのか」王子が言った。「調べたいと申し出たとき。何を見つけることになるか、もう、わかっていたのか」

「いや。疑ってはいたが、確信はなかった」

「もし、わかっていたら? 自分が……私の民が信じるすべてを、打ち砕くことになると知っていたら? それでも、来たか?」

ヘリオは考えた。本気で考えた。ズカンには、正直な答えを受け取る資格があったからだ。

「ああ」ついに、そう言った。「真実は、守る価値のないものしか壊さないからだ。そして――お前の妹が、死にかけているからだ」

ズカンは、自分の手を見下ろした。赤い手、鋭い爪、革のような肌。昨日までは、悪魔としての本質の証だった手。

今はただ……手だった。気の遠くなるほどの歳月をかけた適応によって、姿を変えた人間の手。遠い、いとこの手。

「失礼する」王子が言った。その声は、囁きだった。「……準備をしなければ。旅の」

答えを待たずに、彼は出て行った。そしてヘリオは、評議会の部屋に一人残された。目的地を示さない地図と、何が待つのか読めない計画に、囲まれて。

――正しいことをしている――リキが言った。

わかっている。

――うまくいくとは限らないがな――

それも、わかっている。

東の畑を見下ろすバルコニーで、ヘリオは彼女を見つけた。そこでは、大きな囲いの陰になって見えないが、ウロが穏やかに、朝の空気の中で草を食んでいた。アドリアーナは彼の足音を聞いても振り返らなかったが、その肩がわずかに強張った。

「来ると思っていたわ」彼女は言った。「あなたは優しすぎるもの。来ないわけがない」

ヘリオは、石の手すりに手を置いて、彼女の横に立った。そこからは、グレンマールのほぼ全体が見渡せた――葺き直された屋根、よみがえった畑、かつて瓦礫だった見張り塔。数ヶ月で築き上げた、そのすべてが。

「すまない」と言った。「最悪のタイミングで、来てしまった」

アドリアーナは微笑んだが、その笑みに陽気さはなかった。「悪いタイミングで現れる才能があるのね、あなたは。マンティコアのこと、覚えてる?」

「あれは、いいタイミングだった。少なくとも、俺にとっては」

「私にとっても」彼女は、ようやく彼を見ようと振り返った。そしてヘリオは、その目の下の影に気づいた――弟が昏睡に落ちたと知ってから積み重なった、眠れぬ夜の影に。「怒ってないわ、ヘリオ。あなたに怒れるわけがない。あなたのせいでもない。あなたは、あなたなんだもの――他人を救うために、危険へ走っていく人。違う人になってくれなんて、頼めない」

「でも、待っていてほしい。忘れた……なんて、思わないでほしいの」

彼女は視線を逸らし、淡い空に北の山々が浮かぶ地平線の方へ目をやった。「悪魔の王の娘を救いに行くのね。会ったこともない少女、見たこともない土地、誰にも理解できない病に、立ち向かいに」一拍。「そして私はここにいる。あなたの城壁の内側で、安全に、ただ心配しながら。どっちがどっちに謝るべきか、教えてちょうだい」

「アドリアーナ――」

「あなたのことが、心配なの」彼女は、彼を見ずに言った。ほとんど聞き取れないほどの震えはあったが、声は揺るがなかった。「怒ってない。失望もしてない。心配なの。戻ってこられないかもしれない場所へ、行ってしまうから。それなのに私は……何ひとつ、力になれない」

ヘリオは、ためらった。言うべき言葉が、あった。彼女が聞きたがっている言葉が。わかっていた。最初の日から――王家の馬車の中で告げた「ノー」が、彼女から息を奪ったあの日から――ずっと、わかっていた。

だが、嘘はつけなかった。彼女にだけは。

「約束する」代わりに、そう言った。「戻ったら――"もし"じゃない、戻ったら、だ――埋め合わせをする。見せたかったとおりに、グレンマールを見せる。トンネル、鍛冶場、ウロ。夜には深淵樹を見に連れて行く――残っているぶんだけだが、葉緑素が光るときのやつをな。新しいチーズも味わってもらう。ヴィヴィアンがこっそり熟成させているやつだ」

アドリアーナは笑った。小さく、脆い笑いだった。「チーズで買収しようっていうの?」

「効いてるか?」

「……たぶん、少しだけ」

彼女は彼の方を向いた。そして一瞬、ヘリオは、彼女の目の中に、自分が決して与えられないすべてが書かれているのを見た。愛。希望。本当に手にしたことのないものを失う、恐怖。

「帰ってきて」彼女は言った。その一言に、すべてが込められていた。「帰ってきてくれれば、それでいい。残りは……あとで、考えるから」

ヘリオは頷いた。愛の約束ではなかった。幸せの約束ですら、なかった。だが、真実だった。そして今は、それで充分だった。

「行かないと」と言った。「夜明けに、発つ」

「わかってる」

彼女の手に触れた。短い、ふれあい。そして、離れた。廊下を歩くあいだずっと、背中に彼女の視線を感じていたが、振り返らなかった。

――彼女を愛してはいない――リキが言った。

ああ。

――だが、大切に思っている――

ああ。

――それで、充分か?――

わからない。だが、それが俺の持っているすべてだ。

夜明けが空をピンクに染めるころ、一行はグレンマールの門に集まった。

軽装鎧の兵士が十四人――エリーゼが約束したとおり、最高の者たちだ――研ぎ澄ました武器と、十日分の物資を携えていた。医療物資、道具、ヘリオがアシャラの検査のために要求したものすべてを積んだ、三頭の荷馬。そして先頭には、ヴォルナクにまたがるズカン。

先史時代の獣は、確かな足取りで進んだ。兵士たちの怯えた視線など、意に介さない。普通の馬たちは、敬意のこもった距離を保っていた――同じ村で何日も過ごしたあとでさえ、その本能が「危険だ」と叫んでいた。

「お前たちの馬は、最後まで保たんかもしれん」その朝、ズカンはそう言っていた。「火の地には適応していないからな。できるだけ多くの荷を預けて、身軽にして進んだほうがいい」

ソーンは敷居に立っていた。腕を組み、傷跡のある顔を、夜明けの光に照らされて。ヘリオが横を通り過ぎても、何も言わなかった――ただ、短く、厳かに頷いただけだった。言葉にする必要のないすべてが、そこに込められていた。

ヴィヴィアンは、最後にもう一度、補給リストを確かめていた。羊皮紙の上をペンが走る――細部のすべてを暗記しているのに、それでも確かめずにいられない者の、あの速さで。

「ルシアンの容態についてのキラの報告は」彼女は、目も上げずに言った。「三日ごとに、早馬で国境の駐屯地まで届けさせます。変化があれば――」

「ありがとう、ヴィヴィアン」

彼女の手が止まった。ペンが、宙に浮いたまま。一瞬、その目がヘリオの目と出会い、彼は、彼女が決して口にしないすべてを見た。恐れ。残らねばならないことへの苛立ち。エリーゼではなく、自分が彼の隣にいたいという、願い。

それからヴィヴィアンは、リストに目を戻した。「死なないでくださいよ。経費台帳を、ちょうど合わせたばかりなんですから」

ヘリオは微笑んだ。「善処する」

馬に乗る前、母が彼のもとへやって来た。マントを整えるセレステの手は温かく、その指は、まるでその単純な仕草ひとつで彼を守れるとでもいうように、布の上にとどまっていた。

「ちゃんと食べるのよ」と言った。「ちゃんと眠ること。あの少女のことを調べて、休む間も惜しんで夜更かしなんて、しないで」

「母さん――」

「寒いときは、暖かくして。向こうが暑くても――夜は冷えるんでしょう、わかってるわね――」

「セレステ」アルドリックが、その肩に手を置いた。優しく、だが確かに。「行かせてやりなさい」

母は瞬きし、それから頷いて、一歩下がった。父が、その場所に立った――背が高く、もの静かで、生涯を本に費やしてきたその目が、今は、まるで初めて見るように息子を見つめていた。

「誇りに思っているよ」アルドリックは言った。その手が、思いがけない力で、ヘリオの肩を握った。「何が起ころうとな。覚えておきなさい」

ヘリオは頷いた。喉が、詰まっていた。それから馬に乗り、エリーゼの隣についた。

そのとき、彼は二人を見た。離れた場所に、一行から少し距離を取って。

アドリアーナは、像のように動かなかった。明るい色のドレスを、朝の風になびかせて。その隣ではリレン――キラの娘――が、悲しげな表情で彼女を見ていた。まるで、その痛みに覚えがあるとでもいうように。

待つ二人の少女。一人は、愛のために。もう一人は、まだ名前のない何かのために。

ヘリオは手を上げた。短い、別れの挨拶。アドリアーナも返した。小さな、ほとんど見えないほどの仕草で。

それからズカンがヴォルナクを促し、一行は動き出した。

グレンマールは背後に遠ざかり、どんどん小さくなって、ついには畑の緑に落ちた一つの暗い点になった。そして彼らの前には、北が。山々が。未知が、広がっていた。

ズカンは、最初の六時間、口をきかなかった。

一行の先頭で馬を進め、背筋を伸ばし、視線を道に据えていた。ヘリオが近づこうとしても、悪魔の王子は、会話が始まる前に終わらせてしまう、丁寧な単音節で答えるだけだった。

「どのくらい、かかる?」

「三日だ」

「話したいことが――」

「ない」

エリーゼが、雄弁な視線を投げてきた。「放っておきなさい」と言う視線だ。ヘリオは諦めた。永遠に、ではない。だが、今は。

時が過ぎ、風景が移り変わるなか――グレンマールの緑の丘が、より乾いた平原に、やがて灰色の岩へと変わっていく――ヘリオは、悪魔の王子の心の中で何が起きているのかを想像していた。

幾世代にもわたる確信。幾世代もの、「我々は悪魔、彼らは人間、我々は違う、我々は優れている」。幾世代もの戦争、不信、純粋な無知の上に築かれた、目に見えない壁。

そして、たった一つの言葉。「我々は、いとこだ」。

おそらく彼にとっては、ヒキガエルやサンショウウオに例えられたほうが、まだ衝撃は少なかっただろう。

ヘリオは想像した。ズカンが自分の手を見つめている姿を――鋭い爪のある、赤い手を――そして、これは本当に自分のものなのか、それとも何かの進化の手違いの名残なのかと、自問している姿を。その真実を父のもとへ持ち帰らねばならない重さを、想像した。信じてきたすべて、戦い、殺してきたすべてが、嘘の上に成り立っていたと、告げねばならないことを。

いや、嘘ではない。もっと悪い――誤解だ。誰も嘘などついていなかった。誰も騙してなどいなかった。ただ、誰も知らなかった。それだけのことだ。

――投影しているぞ――リキが頭の中で言った。――あいつが本当は何を考えているか、わかるわけがない――

ああ。だが、自分が同じ立場だったら何を考えるかは、想像がつく。

――何を考える?――

知らないほうがよかった、と。無知のほうが、楽だった、と。すべての真実には代価があって、いくつかは、支払うには高すぎる。

――それでも、お前は払うだろう――

ああ。知らずにいたところで、現実は変わらない。ただ、いざ浮かび上がってきたときに、向き合うのが難しくなるだけだ。

ズカンが、不意に止まった。手を上げて。一行も背後で止まり、馬が小さくいなないた。

「あの尾根の向こうに、泉がある」王子は、振り返らずに言った。「夜は、ここで過ごす」

誰も、異を唱えなかった。陽はすでに地平線へ傾き、兵士たちは明らかに疲れきっていた。十二時間の騎乗は、鍛え抜かれた者にとっても、生やさしいものではない。

野営の設営が進むなか、ヘリオは、ズカンが木立の縁へと離れていくのに気づいた。

「周囲を確認してくる」王子はそう言ったが、その目は、別のことを語っていた。

誰も、止めなかった。

焚き火が静かにパチパチと爆ぜ、炎が夜の冷たい空気の中で踊っていた。

兵士たちはテントに引き上げ、見張りだけが目を光らせていた。ズカンは、まだ「周囲確認」から戻っていない。そしてヘリオは、探しに行くつもりはなかった。傷の中には、言葉ではなく、時間と孤独を必要とするものがある。

エリーゼが、彼の隣に腰を下ろした。マントが触れ合うほど、近くに。炎を見つめたまま、長いあいだ、何も言わなかった。

「怖いか?」ついに、ヘリオが訊いた。

彼女は笑った。短く、陽気さのない笑いだった。「ええ。怖くなかったら、馬鹿よ」

「君は、決して馬鹿じゃない」

「十四人で、悪魔の地に乗り込んだ。馬鹿かどうかなんて、解釈しだいね」

沈黙が戻ってきた。だが、違う沈黙だった。もっと柔らかい。寒い夜に分け合う、一枚の毛布のような。

「戦うのは、怖くない」エリーゼが言った。その声は、今やもっと低く、ほとんど囁きだった。「自分が、間に合わないのが怖い。振り返って、あなたが……倒れているのを見つけるのが。間に合わなくて――」

膝の上で手を握りしめ、彼女は言葉を止めた。

「そうはならない」彼は言った。

「わからないでしょう」

「ああ。だが、そうならないために、できることはすべてやると約束できる」

エリーゼは、彼を見た。その目には、ヘリオには完全には読み解けない何かがあった。古くて、新しい何か。何年も、問われるのを待ち続けてきた問いのような、何かが。

だが、彼女は問わなかった。その夜は。

代わりに、彼の肩に、自分の肩を預けた――小さな仕草。これほど誇り高い戦士にしては、ほとんど臆病なほどの。そして、そこにいた。近くに。ただ、いてくれた。夜の寒さに抗う、体の温もりとして。

ヘリオは、動かなかった。何も言わなかった。足りない言葉で、その瞬間を台無しにしたりしなかった。

そのまま、ゆっくりと消えていく火の前に座っていた。炎が熾火になり、熾火が灰になるまで。そしてついに、それぞれのテントへ引き上げようと立ち上がったとき、どちらも、おやすみとは言わなかった。

言う必要が、なかった。

旅の三日目、ズカンは一行を本道から外れさせた。

「どこへ行くの?」エリーゼが訊いた。本能で、手が柄に滑る。

「家へ」王子は、振り返らずに答えた。「我々のやり方で、たどり着く」

空き地が、前触れもなく目の前に開けた――捻じれた木々に囲まれた、焦げた草の、完璧な円。その中央に、黒い石が、咎める指のように空へ向かって立っていた。高さ三メートル、不自然なほど滑らかで、午後の光の中で蠢いているように見える記号に、びっしりと覆われていた。

兵士たちは、緊張して足を止めた。馬がいなないて、手綱を引いた。ヴォルナクだけは、まるでこれを予期していたかのように、無表情で巨石を見つめていた。

「あれは、何だ?」ヘリオが訊いた。

ズカンはヴォルナクから降り、石に近づいた。「人間の軍勢が、ただの一度もカル・スールに到達できなかった理由だ」

内側のポケットから、何かを取り出す――親指ほどの大きさしかない、赤い結晶の欠片だ――そして、記号の一つに押し当てた。石が、脈打った。一度。二度。それから記号が、次々と光を灯し、黒い表面に、火の線を描き出した。

空気が、パチパチと音を立てた。

ヘリオは、腕の毛が逆立つのを感じた。大気の圧が変わり、現実の何か根本的なものが、ねじ曲がり――

そして、石が開いた。

ほかに、言いようがなかった。固い岩が、カーテンのように左右へ分かれ、その奥に――本来あるべき空き地ではなく――脈打つ白い光の長方形が、ありえないものを露わにした。

――ポータルだ――リキが言った。その心の声は、クリスマスの贈り物を前にした子供のようだった。――ポータルだ! 必要な時空の曲率は――エネルギーの収支は――トンネルの安定化は――研究しなければ――

時間がない。

――だが――

リキ。だめだ。

頭の中の沈黙は、ほとんど怒っているようだった。

エリーゼは、目を見開いてポータルを見つめていた。柄を握る手は、関節が白くなるほど強かった。その背後で、兵士たちが身を寄せ合っている――武器を抜く者もいれば、魔除けの印を切る者もいた。

馬は、さらにひどかった。目を剥き、いななき、手綱を引いて後ずさろうとする。落馬しかけた兵士もいれば、怯えた獣を全体重で押さえつけている者もいた。

ただヴォルナクだけが、完全に静かなまま、その窪んだ目で、異常な光景を無関心に見つめていた。

「あ……あれは、一体何なんだ?」一人が呟いた。

「火の道だ」ズカンが言った。その声には、誇りの影があった。「祖先が山へ逃れたとき、築いたものだ。我々の居住地を、すべて繋いでいる」彼は一行の方を向いた。赤い目が、ポータルの光に輝いていた。「通れ。向こう側が、カル・スールだ」

誰も、動かなかった。

「安全なの?」エリーゼが訊いた。声は、顔つきよりも確かだった。

「お前たちにとってか? わからん」ズカンは肩をすくめた。「人間が通ったことは、ないからな。だが、六週間の旅のほうがいいというなら――外の地を通り、熱で生きながら焼かれ、空気に肺を毒される旅のほうが――」

言葉を、宙に残した。

ヘリオは、ポータルを見た。光は、ほとんど心臓の鼓動のようなリズムで脈打っていた――遅く、安定して、そして、太古の。

――この物体の背後にある物理学は、空間の構造について我々が知っているすべてを書き換えかねないんだぞ――リキは、まだすねていた。――それを、研究もせずにただ通り抜けたいとはな――

そのとおりだ。まさに、それだ。

ヘリオは、兵士たちの方を向いた。青ざめた顔、強張った目、震える手。巨人や竜に立ち向かった十四人の兵士が、理解できない何かを前に、怯えた子供になっていた。

「通りたくない者は、グレンマールに戻っていい」ヘリオは言った。「誰も、責めはしない」

沈黙。

それから、エリーゼが一歩前に出た。「私は、行く」

兵士の一人――ブレナン、古参の一人だ――が地面に唾を吐き、彼女に続いた。「ファルコンが光ごときに怯えたなどと、言わせるものか」

一人、また一人と、ほかの者たちが続いた。全員が勇気からではなかった――諦めの者もいれば、ただの意地の者もいた――だが、誰一人、引き返さなかった。

馬のほうが、ずっと厄介だった。目隠しをするしかなかった――兵士たちがマントを獣の頭に巻きつけ、囁きかけながら手綱を引き、未知へと導いていく。灰色の雌馬は一頭、三人がかりでようやく動かせた。最初の一歩ごとに、蹄が地面を掻いた。

ズカンは頷いた。ほとんど、感心したように。「離れるな。どんな理由があろうと、止まるな。そして、通路で何を見ようと……」ためらい。「……無視しろ」

それが何を意味するのか誰かが問う前に、悪魔の王子はポータルへ入り、消えた。ヴォルナクも、ためらわず主に続いた。

ヘリオは、息を吸った。エリーゼを見た。彼女も、彼を見た。

それから、光の中へ入った。

通路は、二十秒ほど続いた――あるいは、圧縮された永遠ほど。

ヘリオは、流動的で、ゼリーのようで、生温かい何かの中に浮かんでいた。どこもかしこも灰色で、光の脈動が、巨大な生き物の血管のように脈打っていた。視界の端では、渦が開いては閉じ、そしてその渦の中に……

形が。気配が。ありえない距離から自分を見ているように思える、姿が。

見るな、と自分に言い聞かせた。ズカンは、見るなと言った。

だが、難しかった。あまりにも、難しかった。その姿は、自分を呼んでいるようで、自分を知っているようで、何かを見せようとしているようで――

背後で、誰かが叫ぶのが聞こえた――馬か、兵士か。何かがその灰色の空間に響いたが、すぐに、奇妙な沈黙に呑み込まれた。渦の中の姿は、今や彼の方を向いているようだった。手のような、何か。顔のような、何か――

それから、すべてが終わった。

ポータルは今、彼らの背後にあった。そして前方には、何か違うものが広がっていた。

国境は、壁でも、見張り塔でも示されてはいなかった。

臭いで、示されていた。

見るよりも先に、感じた――平手打ちのようにヘリオを襲った、硫黄の見えない壁。刺すようで、染み込んでくる、無視のしようがない臭い。何人かの兵士が咳き込みはじめ、袖を鼻に押し当てた。

馬たちは、新たな恐怖に怯えていた――先ほどほど激しくはないが、頭を振り、浅く息をし、神経質に蹄を踏み鳴らしている。

「火の地へ、ようこそ」ズカンが言った。その声には、奇妙な何かがこもっていた。誇りか。悲しみか。おそらくは、その両方が。

変化は、容赦がなかった。

一歩、踏み出すまでは、まだ見知った世界にいた――灰色の岩、枯れた低木、淡い空。だが、もう一歩で、すべてが違っていた。

足元の岩は、黒かった。暗い灰色でも、無煙炭でもない――黒、固まったインクのような、夜が石に凝り固まったような黒。ヘリオは、ブーツ越しにも温もりを感じた。深いところから昇ってくる熱が、埋もれた心臓のように脈打っていた。

木は、なかった。低木も、なかった。緑のものは何ひとつなく、見知ったような生き物も、何ひとついない。煙を上げる亀裂に断ち切られた、黒い岩の広がりがあるだけ――その亀裂から、逃げ惑う亡霊のように、白い蒸気が空へ立ち昇っていた。

そして、空が――空が、間違っていた。

青くなかった。灰色でもなかった。病んだようなピンク、すべてを熱っぽい光で染める、淡い赤みがかった色。まるで、太陽そのものが病んでいるかのように。空気そのものが、汚染されているかのように。

エリーゼが、ヘリオに近づいた。手が、本能的に剣の柄へ滑る。「この場所……」

最後まで、言わなかった。言う必要が、なかった。

進み続けるうちに、風景はさらに悪化した。

地面の亀裂は、より広く、より深くなった。いくつかからは、蒸気だけでなく、オレンジ色の輝きが漏れていた――まるで、地面そのものが、表面のすぐ下で燃えているかのように。熱は、一歩ごとに増した――まだ、息が詰まるほどではない――だが、確かにあった。肌に、肺に、心に、絶えずのしかかってくる圧力として。

そして、ヘリオは、それを見た。

地衣類だ。

至るところに生えていた――岩に、亀裂に、黒い石にまだら模様を散らす、不規則な斑点となって。日中は、ほとんど見えなかった。とりたてて目を引かない、灰色がかった染みにすぎなかった。だが、陽が沈みはじめ、影が伸びると――それは、光りだした。

ゆっくりと、息のように脈打つ、淡い緑がかった光。風景中に散らばった何千もの光点が、その荒涼とした広がりを、何か異質な、別の何かへと変えていた。

――地衣類だ!――リキの声は、ほとんど叫びだった。――ヘリオ、見ろ! あれだ! 共生体! ズカンの組織で見つけた藻――あそこから来ているんだ! 共生の、源だ!――

ヘリオは、新しい目で、その灰色がかった斑点を見た。あの取るに足らない斑点が、悪魔の適応の秘密を、内に秘めていた。幾世代もかけて、その地衣類を食べ、藻を組織に取り込み……

――種の起源を見ているようなものだ――リキが囁いた。――ホモ・ピュロスの、揺りかごだ――

そして、その声の調子が、変わった。

――待て……この適応の深さを見ろ。俺は、楽観的すぎた。皮下の貯水、藻との共生、骨の密度、あの角――これだけのものが、ほんの数千年で築けるわけがない。これには数十万年――いや、もっとかかったはずだ。グレンマールで口にした見積もりは、甘すぎた。証拠が、そう告げている――

ヘリオは、何も言い返さなかった。リキの言うとおりだった。グレンマールの研究室で「何千年」と口にしたとき、彼はまだ、この土地を見ていなかったのだ。

誰も、口をきかなかった。何を言えばいいのか、わからなかった。

兵士たちは、目を見開いて周囲を見回していた。武器を手に、いもしない敵を探して。ここでの敵は、この場所そのものだった――肺を焼く空気、目を刺す光、どこにでも忍び込んでくる臭い。

ヘリオは、喉の渇きと、目に滲む涙を感じた。ひと呼吸ごとに努力がいり、一歩ごとに、引き返せ、人間のいるべきでないこの場所から逃げろと叫ぶ本能と、戦わねばならなかった。

そして、彼らはこのような地で暮らしているのだ、と思った。数十万年も。

想像できなかった。誰かが――何かが――こんな場所を故郷と呼べるということが、理解できなかった。

ズカンが速度を落とし、ヘリオが追いつくのを許した。悪魔の王子はまっすぐ前を見ていたが、その目は、今は違っていた。もっと、柔らかかった。

「アシャラは、この場所を愛している」と言った。その声は、ほとんど囁きにまで落ちていた。「岩は物語を語る、と言うんだ――聞き方を知ってさえいれば。夜、すべてが静まりかえるとき、蒸気が歌うのだ、と」

間があった。王子は、深く息を吸った――まるで、その毒された空気が、世界で最も甘いものであるかのように。

「どの賢者にも答えられない問いを投げかける、ただ一人の者だ」

ヘリオは、何も言わなかった。言うことは、何もなかった。

地平線で、赤みがかった空が黒い大地と出会う場所に、何かが、残り陽を背に立っていた。

カル・スール。

山そのものに彫り込まれた要塞――まるで巨人が、生きた岩に指を沈め、思うがままに形作ったかのように。何百もの開口部――窓、銃眼、入口――で、松明が燃えていた。黒い石の目のように輝く、オレンジ色の光の点。

その距離からでも、ヘリオには、その重みが感じられた。その古さが。その存在感が。

ズカンが、止まった。

「ここから先は」と言い、一行の方を向いた。「私の庇護下にある。何を見ようと、何を言われようと……」赤い目が、ヘリオの目と出会った。「反応するな。まだ、だ。父は……難しいお方だ」

風が吹き、また一陣の硫黄を運んできた。

ヘリオは、地平線の要塞を見た。それから、悪魔の王子を。それから、自分の部下たちを――疲れ果て、怯えながらも、それでも立っている彼らを。

「行こう」と、彼は言った。

そして、一行は進んだ。

「すべての旅は旅人を変える。だが、いくつかの旅は、目的地そのものを変えてしまう。本当の問いは、どこへ行くかではない――たどり着いたとき、自分が何になっているか、だ」

――リキ、かつての個人的な覚え書きより

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