同じ血肉
即席の研究室は、屋敷でいちばん大きな部屋のひとつに設えられていた。かつては地図室として使われていた部屋だ。今は、頑丈なテーブルと数脚の椅子、それにヘリオが以前から少しずつ作り、一部はこの夜通しで組み上げた道具一式――それ以外は、すべて片づけられていた。
ズカンは慎重に入ってきた。赤い目を、部屋の隅々へと走らせながら。日の光の中で見ると、その姿はいっそう印象的だった。深紅の肌はほとんど輝いているように見え、角は石の床に長い影を落としていた。
「座ってくれ」ヘリオは、その朝ガレスが特別にこしらえた補強済みの椅子を示した。「時間がかかる」
悪魔は腰を下ろした。椅子はその重みできしんだが、持ちこたえた。
「正確には、何をするんだ?」ズカンが尋ねた。
「観察する。測定する。質問する」
メモ帳を手に、ヘリオは近づいた。
「そしてお前は、正直に答える。奇妙に思える質問にも、不快に感じる質問にもだ」
「不快?」
「俺のいくつかの……仮説は、気に入らないかもしれない」
ズカンは顎を引き締めたが、頷いた。「妹のためだ。何でも答えよう」
ヘリオは始めた。
最初に気づいたのは、肌だった。
近づき、許可を求める仕草をしてから、ズカンの前腕に手を置く。悪魔は硬直したが、動かなかった。
質感は奇妙だった。人間のように滑らかでもなく、かといって粗くもない。ほとんど……層になっているように感じられた。そしてヘリオが優しく押すと、肌は予想以上に大きく沈み込み、わずかに遅れて元の形に戻った。
――興味深い――リキが言った。――あの弾力は普通じゃない。表皮の下に、何かがある――
ヘリオはもう一度、今度はもっと深く押した。指の下で、何かが動くのを感じる。筋肉でも脂肪でもない、もっと……流動的な何かが。
「水だ」と呟いた。
「何?」
「皮膚の下に、水がある」ヘリオは顔を上げた。目が輝いている。「砂漠のヒキガエルと同じだ! いくつかの種は、皮下の袋に大量の液体を蓄える――予備を持ち歩いているから、何ヶ月も飲まずに生き延びられるんだ!」
ズカンは彼を見つめた。その表情は、困惑から信じられないという顔へ、そして、危険なほど不快そうな何かへと変わっていった。
「私をヒキガエルに例えているのか?」
「むしろ褒め言葉だ。砂漠のヒキガエルというのは――」
「私は火の山の王子だ」
ズカンは椅子の上で背筋を伸ばした。角が天井をかすめんばかりになる。「マルハル王の息子だぞ。それを、ヒキガエルに例えるのか?」
「生物学的に言えば――」
「生物学になど興味はない。私が気にかけるのは名誉だ」
緊張した沈黙。
――別の比喩を選ぶべきだったな――リキが指摘した。
ありがたい、遅すぎる助言だ。
ヘリオは宥めるように手を上げた。
「聞いてくれ。お前がヒキガエルだと言っているんじゃない。お前の体が、ヒキガエルとよく似た適応を発達させた、と言っているんだ――しかも、天才的な適応だ。普通の人間なら数日で渇きで死ぬような環境でも、生き延びることを可能にしている」
ズカンは硬いままだった。だが、その眼差しが、ほんのわずかに和らいだ。
「天才的な……適応?」
「信じがたいほどに、だ。皮下に水を蓄えられるということは、休まず砂漠を横断でき、他の誰もが汗を蒸発させてしまうような気温に耐え、人間の集団なら全滅するほどの水不足にも持ちこたえられる、ということだ」
ヘリオはもう一度、今度はずっと優しく肌を押した。「内蔵の水筒を持ち歩いているようなものだ。どれくらい入る? 二十リットルか? 三十か?」
「正確には……わからん」
「だが、めったに飲まないだろう? そして飲むときは、一気に大量に飲む」
赤い目に、驚きの色が閃いた。「なぜ、わかる?」
「論理だ。蓄えがあるなら、満たせるときに満たす」ヘリオは微笑んだ。「知能のある生き物なら、誰だってそうする」
ズカンはしばらく黙っていた。それから、ゆっくりと、椅子の背に体を預けた。
「ヒキガエルとの比較は、まだ気に入らん」と言った。「だが……言いたいことは、わかったとしておこう」
赤い肌が、次の発見だった。
ヘリオは自作の拡大鏡を使って、ズカンの前腕をさらに詳しく調べた。表面の下に、血管の複雑な網が見える。人間よりもずっと密で、ずっと表面に近い。
「毛細血管が、ほとんど表面に来ている」と呟く。「だから肌が赤いんだ。色素のせいじゃない――表皮を通して、血液そのものが透けて見えているんだ」
――体温調節だ――リキが興奮気味に言った。――象の耳や、恐竜のクレストと同じだ。血管が密に通った表面は、必要なときに素早く熱を逃がせる――
「体温調節だ!」ヘリオは叫んだ。「生物学的なラジエーターなんだよ! 表面の毛細血管網のおかげで、暑い環境では余分な熱を放散できる――血液が表面に上がって冷え、また循環に戻る。逆に寒いときは、毛細血管が収縮して血液を深部に留め、熱を保つ」
ズカンは、ぽかんとした顔で彼を見た。
「鍛冶場と同じだ!」
ヘリオは、悪魔に通じ、あわよくば気に入ってもらえそうな比喩を探した。
「鍛冶屋は、金属を火に近づけたり遠ざけたりして温度を操る。お前の体は、それを血液でやっているんだ――冷やしたいときは皮膚に近づけ、温めたいときは遠ざける」
「ああ」ズカンはゆっくり頷いた。「それは……筋が通っている」
「そして、お前たちが寒さに弱い理由も、これで説明がつく。この仕組みは熱を逃がすために出来ていて、ためこむためじゃない。ある温度を下回ると、おそらく普通の人間よりずっと苦しむはずだ」
「寒さは……確かに、不快だ」
ヘリオは、すでにメモを走り書きしていた。
「実に面白い。表面の血管が、色も、体温調節も、寒さへの弱さも説明する。そしておそらく、火への耐性の一部も。血液がこれほど速く表面を巡れるなら、深部の組織を傷める前に、熱を逃がしてしまえるからだ」
そこで口をつぐんだ。ズカンにというより、自分自身に語りかけていることに気づいたのだ。
悪魔は、奇妙な表情で彼を観察していた。もはや警戒でも、不快でもない。何か……面白がっているような?
「妹を思い出す」ズカンが、不意に言った。
ヘリオは手を止めた。「何?」
「アシャラだ。興味を引くものを見つけると、そういう話し方をする。速く、興奮して、相手がついて来ているかも確かめずに」
その顔を、痛みの影がよぎった。
「誰にも答えられない質問をする。何もかも、その理由を知りたがる。賢者たちは、あれを……やかましいと思っている」
ヘリオは一瞬、心の中でアカデミーへ引き戻された。ランク∅の落ちこぼれだった頃。そして、教師たちを困らせた、あのしつこい質問の数々へ。
「賢者というのは、しばしば好奇心の強い心をやかましいと感じるものだ」ヘリオは静かに言った。「なぜなら、好奇心の強い心は、賢者たちが本当はどれほど少ししか知らないかを暴いてしまう質問をするからだ」
ズカンは長いあいだ、彼を見つめていた。それから――グレンマールに来て以来、初めて――微笑んだ。
小さな、かすかな笑みだったが、確かに、そこにあった。
「妹にも、まだ希望があるのかもしれんな」と言った。「お前のような人間が、この世にいるのなら」
三つ目の発見には、結晶が必要だった。
検査の途中、ヘリオはあることに気づいていた。ズカンの肌に走る、微かな模様。肉眼ではほとんど見えない。血管のような線が幾何学的な図形を描いているが、正確には血管ではない。
コレクションから、ひとつの結晶を取り出す。正しく刺激してやると、特殊な光を放つものだ。
「何をしている?」ヘリオが結晶を働かせるあいだ、ズカンが訊いた。
「見ているんだ」
結晶から放たれた光は、青みを帯びた、ほとんど紫に近い色だった。そしてその光が、ズカンの肌に触れると――
ヘリオは息を呑んだ。
悪魔の肌が、光っていた。かすかに、ほとんど感じ取れないほどに。だが、紛れもなく――先ほど気づいた模様に、寸分たがわず沿って、緑がかった青の蛍光が走っていた。
「藻だ!」と叫んだ。
ズカンは椅子から飛び上がった。「何だと?!」
「組織の中に、共生する藻類がいるんだ! マダラサンショウウオと同じだ――細胞の中に藻を宿す両生類で、藻は酸素と栄養を作り、見返りに保護と安定した環境をもらう!」
ヘリオは、興奮のあまり、ほとんど飛び跳ねていた。「見えている蛍光は、葉緑素だ――藻が光合成に使う色素だよ!」
ズカンは、ヒキガエルからサンショウウオへ格下げされたことに顔をしかめた。だが、ヘリオに悪気がないのは、見ていれば明らかだった。
――これですべて説明がつく――リキが言った。――表面の毛細血管は、体温調節のためだけじゃない――藻を光に近づけているんだ! そして皮下の水の蓄えは、光合成に必要な水を供給している! すべてがひとつに統合されたシステムだ!――
「地衣類を食べるだろう?」ヘリオが訊いた。
ズカンは、まだ呆然としたまま、ゆっくりと頷いた。「毎日だ。食事の基本だからな」
「地衣類は、共生体だ――一緒に生きる、菌類と藻類のな。それを食べるとき、いくつかの藻類の細胞は消化を生き延びて、組織へ移っていく。長い時間をかけ、世代を重ねるうちに、体の一部として組み込まれたんだ」
ヘリオは結晶を置いた。興奮で、手がわずかに震えている。「お前たちは、火山の環境にただ適応しているだけじゃない。その環境と、共生しているんだ。生態系の一部を、自分の中に持ち歩いているんだよ」
ズカンは、自分の手を見た。正しい光の下で、異質な輝きを放つ、その手を。
「知らなかった」と囁いた。「誰も、知らない」
「誰も、ここまで近くで見たことがなかったからだ」
角は、ほかの発見のあとでは、いささか拍子抜けだった。
「ケラチンだ」レンズでズカンの角のひとつを調べながら、ヘリオは言った。「爪や、髪や、馬の蹄と同じ物質だ。骨じゃない――どちらかと言えば……まあ、額から生えた巨大な爪、といったところだな」
「やすりで削っている」ズカンは認めた。「そうしないと、伸び続けるからな」
「まさに、爪と同じだ。この症状は、実は人間にもあるんだぞ――ごく稀に、頭部にケラチンの突起が生えることがある。たいていは小さいが……」ヘリオは身を引いた。「お前たちの場合は、その突然変異が、集団全体で当たり前になった。何千年もの遺伝的な隔離が、他では異常とされるものを、正常にしてしまったんだ」
「では、我々の角は……爪なのか?」
「本質的には、そうだ。とてつもなく、とてつもなく大きな爪だがな」
ズカンは、それをどう受け止めればいいのか、わからない様子だった。
悪魔は、その角を常に誇りにしてきた。それが実は……爪だと、今、知ったのだ。
そのころ、屋敷の反対側では、また別の種類のドラマが展開していた。
アドリアーナは、両腕で自分を抱きしめ、窓際に立って外の中庭を見つめていた。そこでは衛兵たちが、悪魔の王子が閉じ込められた部屋の方へ、緊張した目を向けている。
その背後に、トリンが静かに立っていた。確かな存在感はあるが、押しつけがましさはない。
「初めてグレンマールに来たとき」窓から目を離さぬまま、アドリアーナは言った。「狼男の群れが、壁めがけて突進してきたわ。あなたのような人たちが」
「はい、王女様」
「そしてヘリオが、あなたたちを治した。怪物から、人間に戻した」
「はい」
アドリアーナは振り返り、トリンの顔を見た。普通の、人間の顔。何の痕跡も残っていない。
「怖くなかった?」と訊いた。「あの日」
トリンは考えた。「怖かったです、王女様。ですが、あなた方が想像なさる恐怖とは違いました。私たちは……あの獣を、受け入れていたのです。あれが自分の一部なのだと、そう思っていました。本当に怖かったのは、その後でした」
「その後?」
「治ったときです。元に戻ったとき」トリンは間を置いた。「すべてを思い出しました。自分のしたこと、その一切を。そして、自分が何者だったかを知っている人々と、共に生きていかねばならないと悟ったのです」
アドリアーナは、静かに彼を見た。
「そして今、悪魔がここにいる」ほとんど独り言のように言う。「私たちの壁の内側に。交渉のために来た。でも……」
その肩が震えた。
「怖いの」と認めた。声が、かすれていく。「見たことはある――本の中だけ、絵の中だけだけど――でも、あれは……あれは、人じゃない。あれは……」
「怪物、でしょうか」トリンが、静かに後を継いだ。「かつての、私のように」
アドリアーナは、その言葉に凍りついた。
「王女様」トリンは一歩、近づいた。「悪魔が本当は何者なのか、私にはわかりません。ですが、ひとつだけわかっていることがあります。怪物かどうかを決めるのは、見た目ではありません。行いです」
「ヘリオも、そう言っていた」アドリアーナは囁いた。「いつか、一度」
「男爵は、賢いお方です」トリンは、わずかに微笑んだ。「そして今、あなたのおそばには、この私がいます。かつて怪物だった者が、あなたをお守りしている。これが何かを意味するのだとすれば……」
その先は、言わなかった。言う必要が、なかった。
アドリアーナは、深く息を吸った。
「それでも、まだ怖い」と認めた。
「恐れること自体は、何も悪くありません、王女様。恐れが、あなたという人間を決めてしまう――それを許したときだけ、問題になるのです」
窓の外では、衛兵たちが警戒を続けていた。そして屋敷のどこかでは、ヘリオが発見を続けていた――歴史を、永遠に変えてしまうかもしれない発見を。
血液が、ヘリオの最後に調べたものだった。
ズカンに、採取の許可を求めていた――指先の小さな切り傷、ガラスの小瓶に集めた、ほんの数滴。悪魔は、ためらいもなく同意した。
今、ヘリオはそのサンプルを前に座っていた。その朝、自分の血液から採ったサンプルと、見比べながら。
見て、比べて、もう一度確かめる。
沈黙が、長く伸びていった。
「どうした?」ズカンが訊いた。「何が見える?」
ヘリオは、すぐには答えなかった。
まだ見ていた。目の前にあるものを、まだ呑み込もうとしていた。
「同じだ」と、ついに言った。
「何が?」
「お前の血液だ」
ヘリオは顔を上げ、悪魔の赤い目と視線を合わせた。「俺のものと、同じなんだ。赤血球、白血球、血小板――比率はわずかに違うし、いくつかのタンパク質には手が加わっている。だが、基本構造は……同じだ。まったく、同じなんだ」
ズカンは瞬きした。「理解できん」
「お前たちは、悪魔じゃない」
その言葉は、沈黙の中に、岩のように落ちた。
「何だと?」ズカンの声は、かろうじて囁きになっていた。
「お前たちは、悪魔じゃない」ヘリオは繰り返した。「お前たちは、人間だ。何千年ものあいだ、極限の火山環境に適応しながら、隔離されて進化してきた人間だ。水の蓄え、体温調節、藻との共生、角、骨の密度――すべて、適応だ。だが、そのすべての下で、お前たちは人間なんだ」
もう一度の、沈黙。
「お前たちは……ホモ・ピュロスだ。火の人間。あまりに長く切り離されていたために独自の特徴を備えるに至った亜種――それでも、残りの人類と、遺伝的にちゃんと適合する」
「いや」ズカンは首を振った。「いや、そんなことは……ありえん。我々は悪魔だ。神官たちが、そう言っている――」
「お前たちの神官は、血液を顕微鏡で見たことがない」
「古代の文献には――」
「理解するための道具を持たなかった者たちの手で、書かれたものだ」
ズカンは、勢いよく立ち上がった。椅子が後ろに倒れ、音を立てる。
「我々が信じてきたすべてが……教え込まれてきたすべてが……我々は優れていて、人間とは違い、劣った人間を支配する運命にある、という……」その声は、震えていた。「あれは、嘘だったのか?」
「必ずしも、意図された嘘ではない」ヘリオも立ち上がり、宥めるように手を上げた。「無知だったんだ。双方ともに。人間はお前たちを悪魔と呼んだ――見た目が違い、敵意に満ちた土地から来て、強く、恐ろしかったからだ。そしてお前たちは、その名を受け入れ、自分のものとし、『我こそは異なる者』という考えの上に、文化のすべてを築き上げた」
「だが、我々は違わない、と?」
「違わない」ヘリオは一歩、前に出た。「お前たちは、俺たちのいとこだ。遠い、ああ、遠いいとこだ。見た目も違う、ああ、違う。だが、いとこなんだ」
ズカンは、動かなかった。呼吸は重く、不規則だった。その手――人間の頭蓋骨を、たやすく握り潰せる巨大な手――が、震えていた。
しばらくして、ズカンの視線は、ゆっくりと窓の方へ動いた。ヴォルナクが収容されている、古い倉庫の方角へ。
「我らのヴォルナク」と静かに言った。「お前たちの馬は、あれを見ると恐怖で正気を失う。だが、お前の言うことが本当なら……」
「あれらも、いとこだ」ヘリオが後を引き取った。「ヴォルナクはおそらく、お前たちの山で進化した先史時代の馬の末裔だ。お前たちが、俺たちとは別々に進化したのと、同じようにな」
ズカンは、ある音を漏らした――笑いと、すすり泣きの、中間のような音を。
「互いを恐れるいとこ。互いを憎むいとこ。家族だと、知らずにいたいとこ、か」
「その感覚なら、俺も知っている」ヘリオは静かに言った。「信じてきたすべてが間違いだったと知ること。自分という存在の土台が、砂の上に築かれていたと知ること」
「なぜ、それを知っている?」
「自分が、経験したからだ」ヘリオはテーブルの端に腰かけた。「そして、お前が最初じゃない。俺の知っている歴史では――遠い、はるか遠い場所の歴史だが――自分たちは優れている、違う、支配する運命にあると信じた集団が、数え切れないほどいた。肌の色を理由にそう信じた者もいた。宗教を理由にした者も。国籍や、言語を理由にした者もいた」
「その集団は、どうなった?」
「学んだ者もいた。より近くで、より詳しく見て、研究して――表面的な違いが、根本的な平等を覆い隠していただけだと理解した。だが、他は……」ヘリオは、ためらった。「他は、真実を拒んだ。嘘にしがみつくほうを選んだんだ。真実は、受け入れるにはあまりに痛すぎたから」
「そして、その嘘のために、戦争をしたんだろう――察するに」
「数えきれないほどの戦争を。何百万もの死者を出した。ある者が、本質的に他の者より優れている――ただ、その考えを守るためだけに」
重い沈黙が、空気の中に響いた。
「文字どおりの、物理的な血液が――その考えを、毎度、否定し続けているというのにな」
ズカンは、起こし直した椅子に、重く身を沈めた。長いあいだ、何も言わなかった。
それから、口を開いた。「父は、決して受け入れまい」
「おそらく、そうだろう」
「神官たちは、冒涜と呼ぶだろう」
「おそらくな」
「戦争になる。お前たちに対してではない――我々に対する戦争だ。伝統を守ろうとする者と、真実を受け入れようとする者との」
ズカンは顔を上げた。「自分が、何を引き起こしたか、わかっているのか?」
「ひとつの可能性だ」ヘリオは言った。「何か新しいものを築く、可能性。存在しもしない理由で敵同士でいることを、やめる可能性」
「あるいは、すべてを破壊する可能性、だな」
「ああ」ヘリオは頷いた。「それも、ある。だが、真実は真実だ、ズカン。俺たちが気に入るかどうかで、変わりはしない」
七人との会議は……張りつめていた。
ヘリオは、発見を順序立てて提示した――水の蓄え、体温調節、藻との共生、角、そして最後に、血液。サンプルを見せ、分析を説明し、質問に答えた。
反応は、予想どおりだった。
「いや」アルダスは、首を振りながら言った。「いや、こんなことが本当であるはずがない。悪魔は……悪魔だ。子供の頃から、そう教わる。物語も、伝説も――」
「伝説は、科学ではない」ヘリオは言った。
「だが、見ろ! 角がある! 赤い肌だ!」
「そして俺は、その角と赤い肌の理由を、正確に示した。悪魔の魔法ではなく、生物学的な適応だとな」
「信じられん」アルダスは言った。「信じられんよ」
「それはまさに、悪魔自身が真実を知ったときに言った言葉だと思うが」ソーンが口を挟んだ。老教授は、説明のあいだずっと黙っていたが、今やその目は、深く考え込んでいた。「これは、すべてを変える、男爵。悪魔が人間なら……我々と同じ種なら……」
「だから、何か変わるの?」エリーゼが、腕を組んだまま、冷たい声で言った。「何世紀ものあいだ攻撃されてきた事実は、変わらない。兵士は殺され、村は焼かれ、資源を奪われた。『いとこ』だからといって、彼らがしたことが消えるわけじゃない」
「消えない」ヘリオは認めた。「だが、文脈を与える。戦争中の二つの国は、それでも二つの国だ。領土、資源、権力をめぐって戦う――片方が本質的に邪悪で、もう片方が本質的に善良だから戦うわけじゃない」
立ち上がり、評議会の一人ひとりを、順に見渡した。「許せと言っているんじゃない。歴史が重要でないふりをしろとも、忘れろとも言っていない。ただ、悪魔だからという理由で悪魔を差別することは、もうできない――そう言っているんだ。なぜなら、彼らは違うからだ。彼らは、人だ。恐ろしいことをした人々だ――ああ、確かに。だが、人なんだ」
「別の国と戦争をしている、国のようなものね」ヴィヴィアンが呟いた。初めての発言だった。「私たちは悪魔を憎む。悪魔は私たちを憎む。だけど、敵の王国の民だというだけで、その住民の一人残らずを憎む人なんて、いない」
「そのとおりだ」
沈黙。
最も重要な問いを口にしたのは、キラだった。
「では、あの少女の病は?」と訊いた。「悪魔が人間なら――彼女の病も、私たちの知っているものかもしれない、ということ?」
ヘリオは、彼女を見た。「まさに、そう思っている」
「何だと思う?」
「まだ、わからない。だが今は、解き明かすための土台がある」窓の方を向き、北の山々へ目をやった。「カル・スールへ行かなければ。アシャラを直接見て、診て、何が狂っているのかを理解するために」
「悪魔の要塞へ、行きたいというのか?」アルダスは、今にも心臓発作を起こしそうだった。
「彼女を救いたいなら、そうだ」
「自殺行為だぞ!」
「医療行為だ」
「まさか、一人で行くつもりじゃないでしょうね」エリーゼが言った。問いかけ、ではなかった。
「そのつもりはない」
「いいわ」彼女は立ち上がった。「私も行く」
ほかの者たちが去ったあとも、エリーゼは残った。顔は仮面のようだったが、その目は……
「人間」と、ついに、ほとんど独り言のように言った。「悪魔と戦う準備に、人生を費やしてきた。それなのに今、戦っていた相手が……人だと、知らされる」
「何か、変わるか?」ヘリオが訊いた。
長い沈黙。
「まだ、わからない」と認めた。「でも、行くわ。あなたが世界を救おうと決めているあいだ――誰かが、あなたを守らないと」
のちに、会議が解散し、決定が下されたあと、ヘリオは中庭でズカンを見つけた。
悪魔の王子――人間の王子だ、と心の中で訂正する――は、空を見上げていた。角が、夕暮れの光の中に、長い影を落としている。
「明日、出発する」近づきながら、ヘリオは言った。「カル・スールへ」
ズカンは、振り返らずに頷いた。「父が……どう反応するか、わからん。アシャラの知らせにも……あの、もうひとつの知らせにも」
「一緒に、見届けよう」
ようやく、ズカンは振り返った。赤い目は、疲れていた――肉体を超えた、疲れだった。
「なぜ、助けることにした? 我が民が、お前の民にしてきたすべてのあとで」
ヘリオは、考えた。良い問いだった。おそらくは、すべての中で最も重要な問い。
「たぶん、できるからだ」と、ついに言った。「そして、頼まれたからだ。それに――俺がやらなければ、誰がやる?」
二人の人間は、互いの目を見た。付け加えることは、何もなかった。
「真実とは」その夜、ヘリオは日記にそう書いた。「陽の光のようなものだ。カーテンを閉め、窓に板を打ちつけ、壁さえ築くことはできる――だが、最後にはいつも、入り込む隙間を見つけ出す。そして入り込んだとき、それはすべてを照らす。美しいものも、醜いものも。心地よいものも、恐ろしいものも」
「今日、悪魔が悪魔でないことを発見した。彼らは人間だ――異なり、適応し、何千年もの進化に姿を変えられてはいるが、それでも人間だ。そしてこの真実は、すべてを変えるだろう」
「受け入れる者もいるだろう。死ぬまで抗う者も、いるだろう」
「だが、真実は、俺たちが気に入るかどうかで変わりはしない」
「そしてもしかしたら――ほんの、もしかしたら――この真実が、何か新しいものの始まりになれるかもしれない。今すぐの平和ではない。だが、平和の可能性。敵もまた、同じ血を、同じ心を、同じく愛し、同じく苦しむ力を持っているのだという、認識を」
「明日、カル・スールへ発つ。あの少女を救うために。少なくとも、試みるために。王に会うために。そして――戦争を引き起こすか、あるいは千の戦争を終わらせるかもしれない真実を、携えていくために」
「どんな結末になるかは、わからない」
「だが、試みなければならないことだけは、わかっている」
【お知らせ】昨日お伝えした通り、第一章から翻訳の改稿を進めています。読みづらさで離れてしまった方も、よろしければもう一度どうぞ。




