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四つの基本的な力の魔法使い ー 物理学者から魔法使いへ、状態変化を経て  作者: Adriano_P


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別の自分の幻視

週の二日目の上級魔法理論の授業は、いつもマナと元素顕現の関係についてだった。


オールドウィン教授が、黒板に書いていた。図解。概念を結ぶ矢印。体の経絡を通るマナの流れを表す記号。


「ご覧のとおり」教授は、ある記号を指差して言った。「マナは、顕現する前に、元素核を通過しなければなりません。この核が決めるのは――」


僕は椅子にもたれ、黒板の記号を見つめていた。


馴染みがあった。もう何百回も勉強してきた。


それなのに、見つめていると、何かが……揺らいだ。


ろうそくの炎が、ちらつくように。


そして――


* * *


違う部屋。


白い壁。冷たく、明るい光――アカデミーの魔法のろうそくとは、違う。決して揺らがない光。


巨大な黒板。黒い。緑のスレートではない。理解できない記号で、埋め尽くされている。


奇妙な文字。数字。物事を結ぶ線。


座っている人々。大勢。椅子の列。みんなが、前を向いている。


誰を……僕を?


いや。誰か、別の人を。


でも、僕はそこにいた。立っていた。黒板の前に。


みんなを見ていた。


話していた。


言葉は理解できないのに、意味はわかった。違う言語。流暢で、速い。


そして――


老人が、最前列から立ち上がった。


すっかり白くなった髪。丸い眼鏡。しわの刻まれた、けれど優しい目。


近づいてきた。


手を、差し出していた。


「おめでとうございます、教授!」


握手をしていた。


温かさ。力強さ。敬意。


拍手。


たくさんの、拍手。


部屋じゅうに響いていた。砕ける波のように。


これは……僕への?


僕は――いや、誰か別の人が――微笑んでいた。


誇り。達成感。深い満足。


「あなたの研究は、革命的です。あなたは――」


* * *


「ヘリオ!」


まばたきした。


白い部屋が、消えた。


また、教室にいた。


オールドウィン教授が、僕の机の前に立っていた。眉をひそめて。


「大丈夫か? 真っ青だぞ」


周りを見た。同級生が、僕を見つめていた。好奇心の顔も。退屈な顔も。


「僕は……はい。すみません、教授」


「虚空を見つめていたぞ。一分近くも」


「不気味だった」誰かが後ろで囁いた。


「憑かれてるんじゃないか」別の誰かが、冗談を言った。


「いや、ただ寝てるだけだろ」カエルが言った。「こいつじゃ、見分けがつかん」


押し殺した笑い。


オールドウィンが、クラスに鋭い視線を投げた。「静かに」


一分?


ずっと……長く感じた。それでいて、ずっと短く。同時に。


「僕は……気が散っていました」


オールドウィンが、しばらく僕を見つめ、それから黒板へ戻った。「もっと休みなさい、ヘリオ。ストレスは、マナに……奇妙な影響を及ぼすことがある」


うなずいたが、本当には聞いていなかった。


心臓が、激しく打っていた。


教授?


誰の、教授だ?


僕は学生だ。ランク∅の学生。


教授じゃない。


それに、あの部屋……あの光……あの言語……


何だったんだ?


いったい、何だった?


手を見た。わずかに、震えていた。


ストレスだ、と自分に言い聞かせた。ただの、ストレス。教授の言うとおりだ。


勉強しすぎている。睡眠が足りていない。


それだけだ。


でも、あの感覚……


あの誇り……


あの拍手……


あまりにも……リアルに感じた。



午後の実技の授業は、いつもどおり、予定された責め苦だった。


ソーン教授が、僕たちをグループに分けた。それぞれが、教授の監督のもとで基礎呪文を練習する。


僕はミラと、ほかに二人のランクDの学生と一緒に、隅にいた。カエルが、僕たちに聞こえないと思って呼んでいる『ほぼ役立たず組』だ。


ほかの三人が、練習していた。小さな炎。水の噴射。大したものじゃないが、少なくとも、ちゃんと機能していた。


僕の番。


集中した。深く、息を吸った。


火だ、と思った。火を思い描け。


手を上げた。


「フレ――」


そのとき……何かが、変わった。


なぜかは、わからない。


どうやってかも、わからない。


「火」を元素として考える代わりに……


……熱を、考えた。


動き。


ますます速く震える、小さな球。


変換される、エネルギー。


なぜそんなことを考えたのか、わからなかった。


その「球」が何なのかも、わからなかった。


でも、考えた。


「フレイム」と囁いた。


マナが、手から流れ出た。


そして、一秒のあいだ――


たった一秒、完璧な一秒のあいだ――


本物の炎が、形をなした。


小さい。揺らめいている。コインより大きくない。


でも、本物だ。


火花じゃない。


あの情けないポンじゃない。


火だ!


「やった!」


あまりに大きく叫んだので、声が練習場に響いた。


グループのほかの面々を振り返ったが、誰も見ていなかった。


ミラは、水の噴射を練習していた。あとの二人は、何かを言い合っていた。


練習場の反対側では、ソーン教授が、マーカスと別の学生の組手を監督していた。


誰も、見ていなかった。


誰一人。


手を見た。


空っぽ。いつもどおり。


炎は、消えていた。


だいたい、一秒ほど続いた。


「やった」もっと静かに、繰り返した。「見た。炎があった。僕は――」


もう一度やれ、と自分に言った。さあ、もう一度。見せてやれ。


集中。呼吸。もう一度、思い描く。


熱。動き。エネルギー。


「フレイム!」


ポン。


火花。


また、いつもどおり。


情けない、無。


「いや……待て……」


もう一度、試した。


ポン。


火花。


「でも……でも、見たんだ。あった。僕は――」


「ヴァロリン!」ソーン教授が、練習場の反対側から吠えた。「独り言はやめて、集中しろ!」


「教授、僕は――」


「集中しろ!」


拳を握りしめた。


もう一度、試した。また。また。


ポン。ポン。ポン。


火花だけ。


でも、確信していた。


確信していた。


一秒のあいだ、本物の炎が、あった。


……だよな?



授業が、終わった。


荷物をまとめていると、声が聞こえた。


「で、ヴァロリン。練習はどうだった?」


ルシアン。


いつもの、あの憎たらしく、鼻持ちならない、尊大なルシアンだ。


壁にもたれ、腕を組み、退屈そうな笑みを浮かべていた。


「順調だ」目を合わせずに言った。


「順調?」彼が笑った。「『やった!』って叫ぶのが聞こえたぞ。まるで、空の飛び方でも発見したみたいにな。で、いったい何をやったんだ?」


「僕は……炎を、作った」


「炎を」


「ああ」


「どこに?」


「手の中に」


「で、誰かが見たのか?」


ためらった。


「……いや。でも――」


「ああ」ルシアンが笑った。「なるほどな。目に見えない炎、か。便利なものだ」


「見えなかったんじゃない! ただ――」


「ただの想像だった?」カエルが、ルシアンの横に現れて、微笑んだ。「ヴァロリンは、今度は想像上の成功まで発明するのか?」


「想像なんかしてない!」


「もちろん、してないさ」ルシアンが、わざとらしい理解の口調で言った。「賭けてもいい。お前の夢の中じゃ、とっくにランクSSSの大魔導士〈偉大なるヘリオ〉さま、ってところなんだろう?」


さらなる、笑い。


ルシアンが、しばらく僕を見つめ、それから肩をすくめた。


「信じてやるふりをしよう」突然、理性的な口調になって言った。「いいだろう。もう一度やってみろ」


まばたきした。


「何?」


「もう一度やれ。お前の、奇跡の炎を」中庭の、空いた場所を指差した。「ここで。今すぐ」


「僕は……今?」


「ああ、ヴァロリン。今だ」彼が微笑んだ。「何か、問題でも?」


空いた場所を見た。


ほかの学生が、足を止めていた。聞いていた。見ていた。


小さな人だかりが、できはじめていた。


心臓が、激しく打った。


できる。前にやった。本物だった。ただ……やったことを、もう一度やればいい。


「わかった」と言った。


空いた場所へ、歩いていった。


ルシアン、カエル、そして少なくとも十数人の学生が、僕を取り囲んだ。


みんなが、見ていた。


みんなが、待っていた。


集中しろ、と自分に言った。さっきのように。思い描け。


手を上げた。目を閉じた。


熱。動き。震える、小さな球。


深く、息を吸った。


「フレイム!」


ポン。


火花。


沈黙。


それから――


笑い声。


ルシアンだけじゃない。


全員。


「信じられん」ルシアンが、ゆっくりと拍手しながら言った。「感動したよ。あの火花は、ほとんど……存在していたな」


さらなる、笑い。


カエルは、体をふたつに折り、あまりに激しく笑って、壁にもたれかからなければならなかった。


誰かが叫んだ。「もう一度やれ、ヴァロリン! 次の火花は、もっと大きいかもしれないぞ!」


さらなる、笑い。


手を下ろした。


顔が、燃えていた。


魔法のせいじゃない。


恥のせいだ。


「わかったか、ヴァロリン?」ルシアンが、まだ微笑みながら言った。「これが問題なんだ。何かをやった、と言うだけじゃ足りない。証明しなきゃならない」


ほかの学生たちに、向き直った。


「そして、こいつは何も証明できない。証明することが、何もないからだ。落ちこぼれ。ヌル。みんな、知ってるだろう? 知らないのは、こいつだけだ」


そして、もう一度、僕を見た。


「哀れだな」首を振って言った。「本当に、哀れだ。失敗するだけじゃ足りなくて、今度は自分自身にまで、嘘をつかなきゃならないとはな」


「嘘なんか、ついてない」囁いたが、声は弱かった。


自分でも、もう信じていなかった。


ヴィヴィアンが、人だかりの中から前に出た。


「放っておきなさい」


「おや、ヴィヴィアン嬢」ルシアンが言った。「いつだって、負け犬を守る準備ができてるな」


「ヘリオは――」


「気をつけることだ、ヴィヴィアン」ルシアンが、近づいた彼女に向き直って言った。「負け犬をかばうと、こちらまで弱く見える。お前ほどの評判を、こんなことで台無しにするのは、惜しいだろう」


「私は、あなたを信じるわ」彼女はルシアンを無視して、優しく僕に言った。


「ふん! 好きにしろ。損をするのはお前だ」ルシアンが、取り巻きを連れて立ち去った。


遠ざかりながらも、まだ笑い声が聞こえた。「哀れ」「馬鹿」という言葉も……


ヴィヴィアンを見た。


その目には、優しさがあった。


でも……ためらいも?


「本当に?」と訊いた。


彼女が口を開き、閉じ、それから、ため息をついた。


「ヘリオ……信じたい。でも――」言葉を、切った。


「でも、何も見ていない」


「何も、見ていない」より優しい声で、認めた。「でも、それは、起こらなかったってことじゃない。もしかしたら……本当に何かをやったのに、私が見ていなかっただけ、かもしれない」


「かもね」繰り返した。


それとも、狂ってるか。


「挑戦し続けて」彼女は言った。「一度できたなら……」


「……もう一度、できる」彼女の文を引き取ったが、信じてはいなかった。


彼女は、僕の肩を短く握り、それから立ち去った。


そして僕は、そこに残された。一人で。


見た。


確信している。


……だよな?



その夜、部屋に戻った。


セバスチャンがベッドにいて、ろうそくの明かりで何かを読んでいた。


僕が入ってくるのを見た。「よう。今日は……興味深い一日だったらしいな」


「『興味深い』とは、よく言ったもんだ」ベッドに倒れ込んで言った。


「ルシアンはクソ野郎だ」


「知ってる」


「いや、本当にだ」彼が僕のほうを向いた。「正真正銘のクソ野郎。俺がお前なら――」


「お前は、僕じゃない」思ったより、鋭く言ってしまった。


沈黙。


「ごめん」付け加えた。「ただ……長い一日だったんだ」


セバスチャンが、うなずいた。「わかるよ」彼は本に戻った。それから、こちらを見もせずに、付け加えた。「役に立つかわからないけど……いちばん大事なことは、たいてい、誰も見ていないときに起こるもんだ」


彼を見た。「何?」


「なんでもない。安物の哲学さ」かすかに、微笑んだ。「もう寝ろ、ヘリオ」


寝返りを打って、ろうそくを消した。


そして僕は、暗闇の中に取り残された。手を、見つめながら。


見た。炎が、あった。本物だった。


でも、誰も信じない。


それに……もし、想像だったら?


今朝の、あの……幻視……のように。


白い部屋。光。老人。


「おめでとうございます、教授」


何ひとつ、リアルじゃなかった。


だったら……もしかしたら、炎も……


首を振った。


いや。いや。ストレスだ。教授も言っていた。ストレスと、睡眠不足。


それだけだ。


明日は、よくなる。


明日は、違う。


横になり、目を閉じた。


眠ろうとした。


でも、眠りは、なかなか訪れなかった。


そして、訪れたとき……


* * *


同じ、白い部屋。同じ、明るい光。


でも今度は、もっと見えた。


機械。果てしないトンネルへと延びる、巨大な金属の構造物。


管。配線。数字とグラフを映し出す画面。


声。


たくさんの、声。


あの奇妙な言語を、話していた。速く、流暢に。


「……衝突、成功……」


「……データ、確認……」


「……セクターでニュートリノ検出……」


ニュートリノ?


ニュートリノって、何だ?


歩いていた――いや、誰か別の人が、歩いていた――廊下を抜けて。


白衣の人々。みんなが、挨拶してくる。


「おはようございます、ドクター――」


名前は、聞き取れなかった。


ドア。開けた。


オフィス。小さい。紙で覆われた、机。


壁には、卒業証書。


理解できない文字。でも、その下に……


記号。


E = mc²


それだ。


その記号。


僕のノートにある。


僕が書いたのに、何を意味するのか知らない、あの記号。


そして今、それが、ここにある。


この……この幻視……この夢の中に。


もっと近くで、見た。


ほかの記号。方程式。図解。


そして――


壁に、鏡。


そちらへ、振り返った。


そして、見た……


顔。


僕のじゃない。


年上の。違う顔立ち。違う眼鏡。


でも、目は……


目は……


* * *


突然、目が覚めた。


汗だくだった。


胸の中で、心臓がハンマーのように打っていた。


部屋は、暗かった。静かだった。


ほかの面々は、眠っていた。


顔に、手を当てた。


震えていた。


何だったんだ?


いったい、何だった?


ストレスじゃない。


疲れでもない。


あまりにも……詳細だった。


あまりにも、リアルだった。


あの部屋。あの奇妙な器具。あの顔。


見たこともない顔を、どうやって夢に見る?


存在しない場所を、どうしてあれほど細部まで見られる?


それに、あの言語……


知りもしない言葉を、どうして理解できる?


立ち上がり、窓辺へ歩いた。


月が、満ちていた。アカデミーの中庭を、照らしている。


すべてが、普通に見えた。


穏やかで。


リアルで。


なのに、僕は……


僕は、リアルだと感じられなかった。


まるで……二人の人間でいるような、そんな感覚。


一人は、ここに。


もう一人は……どこか、別の場所に。


狂ってる、と思った。


そうに違いない。


なぜなら、そうでなければ……


そうでなければ、ありえないことになるからだ。


ベッドに、戻った。


でも、その夜はもう、眠らなかった。


ただ、起きていた。天井を、見つめながら。


自分が、誰なのかを問いながら。


そして、自分でそれを、本当にわかっているのかどうかを。


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