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四つの基本的な力の魔法使い ー 物理学者から魔法使いへ、状態変化を経て  作者: Adriano_P


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無用な知識の重さ

月曜の朝は、いつも上級魔法理論から始まった。

週のなかで、唯一憎んでいない授業だった。

「今日は」オールドウィン教授が、鼻の上の眼鏡を直しながら言った。「マナ保存の法則について話します」

クラスは、はっきりと二つに分かれていた。半分の学生――ランクC以上――は、退屈そうにしていた。もう半分――僕のような連中――は、必死にノートを取っていた。

「マナは」教授は続け、黒板に書いた。「創造も、破壊もされません。ただ、変換されるだけです。火の魔法使いが火球を生み出すとき、無からエネルギーを創り出しているのではありません。内なるマナを、元素の顕現へと変換しているのです」

僕は書き取っていたが、頭の中では、疑問が渦を巻いていた。

マナが火に変換されるのなら……そのエネルギーは、そのあとどこへ行く? 散逸する? 魔法使いに戻る? それとも、周囲に溶け込む?

「ヘリオ」

顔を上げた。オールドウィン教授が、僕を見ていた。

「はい、教授?」

「困惑した顔をしているな。何か、腑に落ちないことでも?」

同級生たちの視線を感じた。退屈そうな者もいれば、ほかの者――ルシアンの取り巻きの一人、あのカエルみたいな男――は、嘲りを期待する顔をしていた。

「僕は……顕現のあと、エネルギーがどこへ行くのか、気になっていました」

「周囲に散逸します」オールドウィンが言った。「炎の熱が、空気の中へ広がっていくようにね」

「でも、散逸するのなら」僕は続けた。考えを、なんとか形にしようとして。「マナは……何になるんですか? 周りの熱? 光? 空気の動き? そしてもしそれらになるのなら、マナは……ほかの形のエネルギーに変換される、エネルギーの一種、ということになりませんか?」

オールドウィン教授が、手を止めた。

クラスが、静まりかえった。

「それは……興味深い見方だ」教授は、ゆっくりと言った。「マナは、マナだ。宇宙の生命力。物理的な意味での『エネルギー』ではない――」

「でも、エネルギーのように振る舞います」考えは、もう走り出していた。「保存の法則に従う。変換される。創られも、消されもしない。まるで……エネルギーそのものだ。ただ、僕たちが『マナ』と呼んでいるだけで」

オールドウィンが、読み取れない表情で僕を見た。

「ヘリオの言うとおりなんですか?」声がした。ミラ、ランクDの女の子だ。「マナは、エネルギーなんですか?」

「それは……そう単純な話じゃない」教授は言った。「マナには、普通のエネルギーにはない、独特の性質がある。意志に応える。元素への親和性を持つ。ただの生のエネルギーではない」

でも、エネルギーのように変換されるなら……保存の法則に従うなら……だったら、ほかに何だっていうんだ?

今度は、声に出して何も言わなかった。

「素晴らしい問いだ、ヘリオ」オールドウィンが言った。「そうやって、考え続けなさい。深い理論的理解というのは、稀なものだ」

カエルが、鼻を鳴らした。「魔法も使えないやつが理解して、何の意味があるんだ?」

何人かが、小さく笑った。

オールドウィン教授が、動きを止めた。チョークを置く。そして、ゆっくりとカエルのほうへ向き直った。

「ヴァンス君」危険なほど穏やかな声で言った。「私が魔法理論の研究に、何年を捧げてきたか、知っているか?」

カエルが、まばたきした。「僕は……存じません、教授」

「四十二年だ。では、私がいくつの呪文を唱えられるか、知っているか?」

沈黙。

「ゼロだ。私はランク∅でね、ヴァンス君。ヘリオと、まったく同じだ」クラスが、息を呑んだ。「だが、君が使っている教科書は? 私が書いた。君が学ぶ図解は? 私が描いた。君が、あの情けない火球を唱えられるようにしている理論は? 私が打ち立てたものだ」

カエルが、青ざめた。

「では、教えてくれ」オールドウィンは続けた。「理解することに、何の意味があるのか。――おそらく、君のような傲慢な者に、魔法とは力ずくだけのものではないと、教えてやれることだろうな」

完全な、沈黙。

オールドウィンが、黒板へ戻った。「続けよう」

僕は、カエルのほうを見なかった。だが、彼の屈辱が、伝わってきた。

ありがとうございます、教授、と思った。

明日、カエルが僕をいっそう憎むことは、わかっていたけれど。

授業と授業のあいだの休憩は、いつも最悪の時間だった。

アカデミーの中庭の、木の下に一人で座り、家から持ってきたパンとチーズを食べた。ほかの学生はグループになって、笑い合い、互いに見せつけるように、小さな呪文を練習していた。

「ヘリオ」

振り返った。ミラ――授業で質問した女の子――が、僕の横に立っていた。

「座ってもいい?」

「もちろん」

彼女が座った。一瞬の、沈黙。

「授業でのあなたの質問、面白かった」彼女は言った。「考えたこともなかった。マナが、まるで……エネルギーみたいだなんて」

「ただの思いつきだよ」僕は言った。

「あなたは、いつもそう。誰も訊かないことを訊く」彼女が僕を見た。「どうして?」

「何かが、おかしいからだ」

「何が?」

どう説明すればいいか、わからなかった。「体系。元素。魔法。みんな、ある決まったやり方で動くって言う。でも、本気で考えてみると……筋が通らないんだ」

「どう、筋が通らないの?」

「たとえば、火だ。みんな、元素だと言う。でも火は……物じゃない。反応だ。何かが燃えている。木が要る、空気が要る、熱が要る。それがなければ、火は存在しない。なのに、どうして『基本元素』でいられる?」

ミラが、困惑した顔で僕を見た。「でも……ずっと、そうだったわ。四賢者が――」

「知ってる」僕は言った。「本に何が書いてあるかは、知ってる。でも、本当によく観察すると……本当によく考えると……何かが、合わないんだ」

彼女は、黙っていた。

「ごめん」僕は言った。「たぶん、ただ失敗の言い訳を探してるだけなんだろうな」

「そうは思わない」ミラは言った。それから、ためらった。「でも……白状すると、あなたといると、自分が馬鹿みたいに思えてくる」

彼女を見た。「え?」

「あなたは、私の頭には浮かびもしない問いを訊く。まるで、魔法をまるっきり違う角度から見ているみたい」彼女が、かすかに微笑んだ。「魅力的で、同時に、いらいらする」

「まあ、慰めになるなら……違う角度から見えてても、使えないんだけどな」

「だから、賢くて、不運」

「ありがとう。すごく気が楽になったよ」

彼女が笑った。「ごめん。あんまり、助けになってないわね」

「なってない。でも、少なくとも正直だ」

しばらく、二人とも黙っていた。それから、ミラが立ち上がった。

「役に立つかどうか、わからないけど」彼女は言った。「訊き続けて。いつか、探している答えが見つかるかもしれない」

そうかもな、と思った。

それとも、史上もっとも学のあるヌルとして卒業するか、だ。

午後の実技の授業は、基礎魔法戦闘だった。

ソーン教授――元軍人の魔法使いでランクA、顔に傷跡、号令を吠えるような声――は、いつも僕たちをペアに分けて、組手をやらせた。

「ヴァロリンと……ブラックウッド」

僕は、内心ため息をついた。

マーカス・ブラックウッド。ランクC。火の専門。そして、ルシアンの友人。

二人とも、練習用の円の中に入った。

「ルールだ」ソーンが言った。「最初の有効打を取ったほうが勝ち。レベル2以上の攻撃魔法は禁止。補助魔法も禁止。構えろ」

マーカスが、微笑んだ。炎が、その指先で踊りはじめる。

僕は手を上げ、マナを集中させようとした。

「始め」

「ファイアダート!」

三つの炎の弾が、僕めがけて飛んできた。

横へ飛び込んだ。一つが肩をかすめ、袖を焦がした。

反撃しないと。しないと――

「ファイアボール!」

集中した。火を思い描く。赤く、熱く、球状の火を。

「ファイアボ――」

ポン。

火花。

クラスが、笑った。

マーカスは、動かなかった。ただ、待っていた。

もう一度、試した。

「ファイアボ――」

ポン。

また、火花。

笑い声が、大きくなる。

「ファイアダート!」マーカスが、ほとんど退屈そうに叫んだ。

胸に、当たった。

強くはない――加減されていた――が、倒れるには十分だった。

「そこまで」ソーンが言った。「ブラックウッドの勝ち」

マーカスが、僕を見下ろした。「剣術の授業でも受けてみたらどうだ、ヴァロリン。少なくとも、あっちはマナが要らないぞ」

僕は立ち上がり、制服から灰を払い落とした。

「もう一度」と言った。

ソーンが、僕を見た。「ヴァロリン――」

「もう一度、お願いします、教授」

一瞬の、沈黙。

それから、ソーンがうなずいた。「いいだろう。位置につけ」

円に、戻った。

「始め」

マーカスは、動かなかった。

腕を組み、炎も消したまま、その場に立っている。

待っていた。

「さあ」と、微笑んで言った。「お前から動け」

僕は、ためらった。

「来いよ、ヴァロリン。攻撃しろ。先手をくれてやる」

クラスが、ざわついた。緊張した、笑い声。

拳を握りしめた。マナを、集中させる。

「ファイアダー――」

ポン。

火花。

笑い声。

マーカスは、身じろぎひとつしなかった。

「何を待ってる?」と言った。「攻撃しろ。こっちは無防備だぞ」

もう一度、試した。それから、もう一度。さらに、もう一度。

ポン。火花。笑い声。

六回目には、手が震えていた。

七回目――それは、努力のせいではなかった。

恥のせいだった。

ついに、僕は手を下ろした。

「降参、します」と囁いた。

「何だ?」ソーンが言った。「もっと大きな声で」

「降参します」

「そこまで」教授が、平坦な声で言った。「ブラックウッドの勝ち。またしても」

円を出る僕の横を、マーカスが通り過ぎた。

「いい試みだったな、ヌル」と囁いた。

授業は、続いた。

僕はベンチに座り、ほかの者が戦うのを眺めていた。

ヴィヴィアンはランクBの女の子との試合に負けたが、少なくとも戦っていた。呪文を唱え、防御していた。

僕は?

僕は、何もしなかった。

ただ……そこに、いた。

そして、失敗した。

授業が終わるころには、小さな火傷と、あざと、傷ついた自尊心に、すっかり覆われていた。

ヴィヴィアンが、戦闘教室の外で待っていた。

「まだ、ひとつは無事?」彼女が訊いた。

「『ひとつ』の定義を、お願いします」

「火傷は五つ以下。あざは十個以下。自尊心が、何らかの形で、まだ存在している」

「三つとも、不合格だ」

ヴィヴィアンが、ため息をついた。それから、何の予告もなく、僕の肩を強く叩いた。よりによって、あざのあるところを。

「痛っ!」

「それは、二回戦をお願いした罰よ」

「でも、僕は――」

「自分を痛めつけずにいられない人。それが、あなた。理論じゃ誰より輝くくせに、実戦となると自殺行為に走る、救いようのない、痛がりたがりよ」

僕は彼女を見た。「助けようとしてる? それとも、侮辱?」

「両方よ。両立するの」彼女が、じっと僕を見つめた。「ヘリオ、聞いて。あの人たちと同じやり方で戦っても、勝てない。無理なの。別のやり方を、見つけなきゃ」

「その『別のやり方』って、何だよ?」言葉が、思ったより苦々しく出た。

ヴィヴィアンが、ためらった。「わからない。でも、見つけたときには……」彼女は、言葉を切った。「……とんでもないことになる。確信してる」

「どうして?」

「あなたみたいな人――違う考え方をする人――は、完全に失敗するか、何もかもを変えてしまうか、そのどちらかなの」彼女が、まっすぐ僕の目を見た。「そして、あなたは、永遠に失敗し続けるタイプには、見えない」

君の自信が、僕にもあればいいのにな、と思った。

でも、言わなかった。

その夜、部屋に戻り、鏡を見た。

顔に、あざ。腕に、火傷。少しだけ、歪んだ眼鏡。

ドアが開いた。セバスチャンが入ってきて、僕の顔を見るなり、口笛を吹いた。

「うわ! 何に轢かれたんだ? 竜か?」

「マーカス・ブラックウッド」

「ああ。まあ、だいたい同じだな」

僕は、鞄を置いた。「少なくとも、生きてる」

「だいたいはな」

「勝ちとして数えとくよ」

彼を見た。「どこの宇宙の話だ?」

セバスチャンが、肩をすくめた。「死んでない宇宙の話さ。俺の基準ではな」

それでも、僕はほとんど微笑みそうになった。

セバスチャンが出ていったあと、僕は一人になった。

ヘリオ・ヴァロリン。

ランク∅。

理論では、輝いている。

実践では、無用。

でも、少なくとも、生きている。

今のところは。

ノートを開いた。

何ページにもわたる理論、図解、問い。

なぜ、火はこう振る舞う?

なぜ、水は状態を変える?

魔法を、本当に支配しているものは何だ?

もっと深い体系が、あるのか?

何週間も前に書いた問いを、見つめた。

そして、その下――ページの隅に、何かがあった。

走り書き。

奇妙な記号。

近づいて、見た。

僕は……何を書いたんだ?

∇×E = -∂B/∂t

いつ、書いた?

覚えていなかった。

意味が、わからなかった。記号。矢印のようなもの。文字。等号。そして、ほかの記号。小さな文字。

何を、意味している?

本当に、意味があるのか?

それなのに、なぜ……重要なものに見えるんだ?

いつ描いたのか、思い出そうとした。どの授業のあと? どの勉強の最中?

何も、出てこない。

ただ……感覚だけが、あった。

馴染み深く、それでいて、不条理な感覚。

僕は、勢いよくノートを閉じた。

どうかしてる。

ベッドに横たわり、天井を見つめた。

明日も、また別の授業。

別の、失敗。

「ヌルのヘリオ」でいる、また別の一日。

でも、何かが……僕の中の何かが、囁き続けていた。

∇×E = -∂B/∂t

いったい、何を意味している?

なぜ、知らないのに、知っている?

どうして僕は、こんなにも、おかしいんだ?

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